災害時の下痢・腹痛は「脱水」に注意|薬剤師が教える経口補水液・受診目安・備え

薬剤師が解説

災害時の下痢・腹痛では、まず「止める」ことより脱水を防ぐことが優先です。

地震・台風・大雨などの後は、飲み水や食事の変化、冷え、睡眠不足、 強い緊張、衛生環境の悪化が重なり、下痢・腹痛・吐き気が起こりやすくなります。

このページでは、避難所や自宅でできる初動、経口補水液の使い方、 受診を急ぐサイン、感染を広げない工夫を、現代医学と中医学の両面から整理します。

最初に覚えておきたい3つ

  1. 飲めるか確認し、経口補水液を少量ずつ
  2. 血便・意識の変化・尿が出ないなどの危険サインを確認
  3. 便や吐物を処理した後は、石けんと流水で手洗い
豪雨・洪水・台風・地震など災害の種類を示すイラスト
災害後は、食事・水・気温・衛生環境の変化が胃腸への負担になりやすくなります。

最初に確認したい危険サイン|受診を優先する状態

下痢の多くは一時的ですが、強い脱水や感染症、別の病気が隠れている場合があります。 次の症状があるときは、セルフケアだけで長く様子を見ず、 避難所の医療・保健担当者、医療機関、救急へ相談してください。

※意識障害、呼吸がおかしい、けいれん、重い脱水が疑われる場合は、 ためらわず119番へ連絡してください。

トイレの近くで腹部を押さえ下痢と腹痛に苦しむ男性のイラスト
下痢の回数だけでなく、飲めるか・尿が出ているか・意識がはっきりしているかを確認します。

下痢で一番注意したい「脱水」のサイン

下痢や嘔吐では、水分だけでなくナトリウムやカリウムなどの電解質も失われます。 特に乳幼児、高齢者、妊娠中の方、心臓・腎臓・糖尿病などの持病がある方は、 変化を早めに見つけることが大切です。

  • 口や唇が乾く
  • 尿の回数が減る、色が濃い
  • 立ちくらみ、ふらつき、頭がぼんやりする
  • だるくて力が入らない
  • 目が落ちくぼむ、皮膚が乾く
  • 子どもが泣いても涙が少ない、機嫌が悪い、眠りがち
口の渇きとだるさを感じ水分補給を必要とする女性のイラスト
口の渇き、尿量の低下、ふらつき、強いだるさは脱水を疑う手がかりです。

自宅・避難所でできる対策|初動の優先順位

STEP 1

経口補水液を「少量ずつ、回数を分けて」

飲める状態であれば、経口補水液をひと口ずつ、数分おきに摂ります。 一度に多量に飲むと吐き気を起こすことがあるため、少量を繰り返すのが基本です。

  • 市販品は、感染性胃腸炎による下痢・嘔吐に伴う脱水に使える表示を確認する
  • 経口補水液は日常の水分補給用ではなく、脱水時の食事療法に用いる病者用食品
  • 腎臓病・心臓病・糖尿病などで水分、塩分、糖質を制限されている方は医療者へ確認する
スポーツ飲料を薄めても経口補水液と同じ配合にはなりません。
経口補水液は、水・電解質・ブドウ糖などが脱水時の吸収を考えて調整されています。 備蓄には経口補水液や粉末タイプを優先しましょう。
経口補水液がないときの緊急的な作り方

厚生労働省の災害時栄養資料では、次の配合が示されています。

  • 飲用できる水:1リットル
  • 砂糖:40グラム
  • 食塩:3グラム

清潔な容器でよく混ぜ、正確に計量します。 「塩を少し」のような目分量は避けてください。 自作液は衛生管理が難しいため、市販の経口補水液が確保できるまでの 緊急的な代替と考え、作り置きせず早めに使い切ります。

※水の安全性が確認できない場合は作らず、避難所の担当者へ相談してください。

STEP 2

無理な絶食を避け、食べられる範囲で少量ずつ

吐き気が落ち着き、食べられそうであれば、消化しやすいものを少量ずつ再開します。 食欲がないときは無理に食べず、まず補水を優先します。

取り入れやすいもの

  • おかゆ、軟らかいご飯、煮込みうどん
  • 具を細かくした野菜スープ、薄めの味噌汁
  • 軟らかく煮た芋や野菜、バナナなど体調に合うもの

症状が強い間は控えめにしたいもの

  • 揚げ物、脂質の多い料理
  • アルコール、カフェインの多い飲料
  • 香辛料の強い料理、糖分の多い飲み物
  • 冷たいものを一度に大量に摂ること
STEP 3

冷えを避け、腹部と足元を守る

避難所や車中泊では床からの冷えや気温差が重なります。 腹巻、毛布、靴下などを使い、冷え過ぎない環境をつくりましょう。 ただし、高熱や熱中症が疑われる場合に無理に温めるのは避けます。

STEP 4

下痢止めを自己判断で使わない方がよい場合

下痢止めは、すべての下痢に適しているわけではありません。 発熱、血便、強い腹痛、感染性腸炎が疑われる場合、乳幼児、持病がある方は、 使用前に医師または薬剤師へ相談してください。

腸管出血性大腸菌などでは、腸の動きを抑える薬が適さない場合があります。 防災バッグに薬を入れるときは、商品名だけでなく 「どの症状なら使わないか」まで薬剤師に確認しておくと安心です。

災害前に「自分に合う常備薬」を確認しておきませんか

ほどよい堂では、服用中の薬、持病、体質を確認しながら相談を受け付けています。 緊急症状は医療機関を優先し、平時の備えとしてご利用ください。

避難所で感染を広げないための衛生対策

下痢や嘔吐が複数人に起きている場合は、ノロウイルスなどの感染性胃腸炎も考えます。 便や吐物を扱った後は、アルコール消毒だけに頼らず、 可能な限り石けんと流水で丁寧に手を洗います。

  • トイレ後、食事前、便・吐物の処理後は石けんと流水で手洗い
  • 処理時は使い捨て手袋、マスク、エプロンを着用
  • ペーパータオルなどで静かに拭き取り、飛び散らせない
  • 汚物はビニール袋に密閉して処分
  • 塩素系漂白剤は製品表示と使用上の注意を守る
  • タオル、食器、飲み物の回し飲みを避ける
  • 下痢や嘔吐がある人は、可能な限り食品の調理を担当しない
ノロウイルス対策でアルコールだけでは不十分な理由

厚生労働省は、消毒用エタノールによる手指消毒は、 石けんと流水による手洗いの代用にはならず、 すぐに手洗いできない場合の補助として使用するよう案内しています。

吐物や便で汚れた床や物品は、汚れを静かに取り除いたうえで、 次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤などを製品表示に従って使用します。 酸性洗剤と混ぜると危険なため、必ず使用上の注意を確認してください。

中医学で見る災害時の下痢|「証」を組み立てる

中医学では、下痢を一つの原因で決めつけず、寒熱・虚実、気・血・津液、 胃腸を担う「脾=土」の状態から整理します。 ただし、血便、高熱、強い脱水などの危険サインがある場合は、 体質判断より医療対応を優先します。

寒湿タイプ=冷えと余分な湿気が重なったタイプ

証の目安: 水っぽい便、腹部や手足の冷え、温めると少し楽、冷たい飲食で悪化しやすい。

背景: 冷えと湿が「脾」の運化、つまり消化吸収と水分代謝を妨げていると考えます。

治則・養生: 温中散寒・化湿(お腹を温め、余分な湿をさばく)。 高熱がなければ腹部と足元を冷やさず、温かい汁物を少量ずつ。

脾虚タイプ=胃腸の消化吸収力が弱ったタイプ

証の目安: もともと胃腸が弱い、食後に下痢しやすい、疲れやすい、食欲が落ちている。

背景: 「脾=土」が弱ると、食べたものを気・血・津液へ変える力が不足しやすくなります。

治則・養生: 健脾益気(胃腸を支え、気を補う)。 一度に多く食べず、温かく軟らかい食事をよく噛みます。

肝脾不和タイプ=ストレスが胃腸に影響したタイプ

証の目安: 緊張すると腹痛や便意が起こる、お腹が張る、ため息、不眠、不安感が強い。

背景: 強い心理・社会ストレスで「肝」の疏泄が乱れ、 「脾」の働きを抑えていると考えます。

治則・養生: 疏肝理気・健脾(緊張をゆるめ、胃腸を支える)。 深く息を吐く、音や情報から離れる、 短時間でも安心できる場所で休むことを組み合わせます。

今の体質を8タイプから確認

気虚・血虚・陰虚・陽虚・気滞・瘀血・痰湿・湿熱の傾向を確認し、 平時の胃腸ケアや防災備蓄を考える材料にできます。

症状が落ち着いた後の回復期|栄養・循環・吸収を立て直す

急性期の下痢や嘔吐に対して、クロレラや玄米酵素が 経口補水液や治療の代わりになるわけではありません。 まず脱水対策と必要な医療を優先し、便や吐き気が落ち着き、 食事を戻せる段階から栄養の土台を整えます。

ほどよい堂の3本柱

  1. 栄養: 細胞の材料となるたんぱく質、良質な脂質、ビタミン、ミネラルを少しずつ補う
  2. 循環: 冷え過ぎを避け、体調が戻ってから軽い歩行や呼吸で巡りを支える
  3. 吸収=腸活: 一口30回を目安によく噛み、食べるだけでなく吸収できる胃腸を育てる
回復期にクロレラを取り入れる考え方

クロレラは、たんぱく質、葉緑素、ビタミン、ミネラル、食物繊維などを含む 「緑のまるごと食品」として、食事の不足を補う選択肢です。 下痢や吐き気が続く間に無理に始めず、 食事が戻ってから体調を見ながら少量から検討します。

ワルファリンを服用中の方は、クロレラに含まれるビタミンKが 薬の働きに影響する可能性があるため、 自己判断で始めず医師・薬剤師へ必ず相談してください。

クロレラ・バイオリンク専門相談 体調、食事、服用中の薬を確認しながら取り入れ方を相談できます。
回復期に玄米×麹を取り入れる考え方

玄米と麹を使った食品は、食生活を整えるための補助として活用できます。 胃腸が不安定な急性期ではなく、便が落ち着き、 通常の食事へ戻す時期に、少量から様子を見ます。

味噌汁、野菜スープ、豆、海藻、きのこなどの毎日の食事を軸にし、 その不足分を補う位置づけが基本です。

健康食品/玄米×麹について詳しく見る 食事の土台を大切にした取り入れ方を紹介しています。
たんぱく質・腸活アイテムを選ぶときの注意

回復期は、カロリーだけでなく、たんぱく質、ビタミン・ミネラル、 食物繊維などが不足する「新型栄養失調」を避ける視点も大切です。 ただし、豆類や発酵性食物繊維は、下痢が残る時期に増やし過ぎると 腹部膨満につながることがあります。

便の状態を見ながら、豆腐、軟らかく煮た大豆食品、味噌汁などから少量ずつ。 プロバイオティクス、プレバイオティクス、バイオジェニックスも、 一度に増やさず段階的に試します。

北海道産大豆商品の違いを見る 食べ方と使い分けを確認できます。 ほどよい堂の腸活アイテムを見る 腸内環境を支える選択肢をまとめています。

3日・3週間・3か月の目安

  • まず3日: 補水、尿量、食欲、便の回数など急性期の変化を丁寧に確認
  • 次の3週間: 睡眠、よく噛む習慣、温かい汁物、食事時間を少しずつ立て直す
  • 約3か月: 栄養・循環・吸収の3本柱を続け、胃腸が崩れにくい生活の土台を育てる

※回復の速度には個人差があります。 症状が続く場合は期間で区切らず、医療機関へ相談してください。

防災バッグに備えたい下痢・胃腸対策用品

避難所で水や防災用品を備える家族のイラスト
家族構成、持病、年齢に合わせて、飲料水・経口補水液・常用薬を備えます。
  • 飲料水、市販の経口補水液、粉末タイプの経口補水液
  • 常用薬、お薬手帳の写し、薬の一覧
  • 使い捨て手袋、マスク、ペーパータオル
  • ビニール袋、簡易トイレ、トイレットペーパー
  • 塩素系漂白剤または用途に合った衛生用品
  • 体温計、計量カップ、計量スプーン
  • 腹巻、毛布、靴下などの防寒用品
  • 乳幼児、高齢者、持病がある方に必要な個別用品
備蓄は「買って終わり」にしないことが大切です。
3〜6か月ごとに使用期限、家族の薬、体重、アレルギー、連絡先を見直し、 ローリングストックで入れ替えましょう。

災害時の下痢・脱水でよくある質問

スポーツドリンクを薄めれば経口補水液になりますか?

同じものにはなりません。 薄めるとナトリウムなどの電解質濃度も下がります。 脱水が疑われる場合は、市販の経口補水液を表示に従って使用してください。

下痢のときは何も食べない方がよいですか?

一律に長時間絶食する必要はありません。 吐き気が落ち着き、食べられる状態なら、 おかゆやスープなどを少量ずつ再開します。 食べられない間は補水を優先します。

下痢止めは飲んでもよいですか?

発熱、血便、激しい腹痛、感染性腸炎が疑われる場合などは、 自己判断で使用しない方がよいことがあります。 薬剤師または医師へ相談してください。

手指消毒だけでノロウイルス対策になりますか?

消毒用エタノールは石けんと流水による手洗いの代用にはなりません。 手洗いを基本とし、すぐに洗えない場合の補助として使用します。

クロレラや玄米酵素は下痢の治療になりますか?

下痢や脱水の治療、経口補水液の代わりにはなりません。 症状が落ち着き、食事を戻す回復期に、 栄養を補う食品として体調に合わせて検討します。

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執筆・監修

河邊 甲介|漢方薬局 ほどよい堂 代表
薬剤師/中医薬膳師/薬膳素材専門士/ペットフーディスト

漢方×薬膳×腸活の視点から、栄養・循環・吸収を軸に健康相談を行っています。
〒889-1301 宮崎県児湯郡川南町/TEL 0983-32-7933

医療情報について
本記事は一般的な健康情報であり、診断・治療の代わりになるものではありません。 強い症状、持病、妊娠、乳幼児・高齢者の体調変化がある場合は、 医師・薬剤師・避難所の医療担当者へご相談ください。 経口補水液、医薬品、健康食品は、 製品表示と専門家の指示を確認して使用してください。
参考にした公的情報
薬剤師監修|漢方・薬膳・腸活

この記事の監修者と
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漢方薬局ほどよい堂代表・薬剤師 河邊甲介

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河邊 甲介

薬剤師/中医薬膳師/薬膳素材専門士/ペットフーディスト
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