がん治療中の食欲低下と栄養|食べられないときの食事の工夫

薬剤師が解説|ほどよい堂の健康コラム

がん治療中の食欲低下と栄養|食べられないときの食事の工夫

「治療が始まってから、食欲が落ちてしまった」

「何を食べてもおいしく感じない」

「体力をつけてほしいけれど、家族がほとんど食べてくれない」

がん治療中には、食欲や食事に関するお悩みが少なくありません。 食べられない状態が続くと、ご本人だけでなく、支えるご家族も不安になります。

しかし、食欲が低下しているときに大切なのは、無理に 「栄養バランスのよい一人前の食事」を食べることではありません。

がん治療中の食欲低下と栄養について食べやすい食事を紹介する薬剤師
食べられるときに、食べられるものを、少量ずつ。

まずは水分とエネルギーを途切れさせないことを優先し、体調に合わせて、 少しずつタンパク質やビタミン、ミネラルなどを補っていきましょう。

まず押さえたい3つのポイント

  • 一度に食べようとせず、少量を数回に分けます。
  • 水分、エネルギー、タンパク質の順で無理なくつなぎます。
  • 飲めない、何度も吐く、急に体重が減る場合は早めに医療機関へ相談します。

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がん治療中に食欲が低下する理由

がん治療中の食欲低下は、単なる好き嫌いや気持ちの問題ではありません。 治療や症状、心理的な負担など、複数の原因が重なって起こることがあります。 [1]

治療による影響 抗がん剤、放射線治療、手術などの影響
消化器症状 吐き気、嘔吐、便秘、下痢、おなかの張り
口や喉の症状 口内炎、口の乾燥、喉の痛み、飲み込みにくさ
味覚・嗅覚の変化 味を感じにくい、金属のような味がする、においがつらい
全身症状 痛み、息苦しさ、発熱、強い倦怠感
心の負担 不安、落ち込み、緊張、食事へのプレッシャー
がん悪液質 がんや炎症などの影響で、筋肉量や体重が減りやすくなる状態
薬や持病の影響 痛み止めなどの薬、糖尿病、腎臓病、消化器疾患など

食欲低下の原因は一つとは限りません。
「食べ方を変えれば解決する」と決めつけず、吐き気、便通、口内炎、痛み、 薬の影響などを医療スタッフと一緒に確認することが大切です。

食べられないときは「完璧な食事」を目指さない

体調がよいときは、主食・主菜・副菜を組み合わせ、 さまざまな食品から栄養を取ることが基本です。

しかし、食欲が低下している時期まで、 毎食の栄養バランスや一人前の量にこだわる必要はありません。

がん治療中に食べられないときの水分、エネルギー、タンパク質の優先順位
一食で整えようとせず、
まずは水分とエネルギーをつなぎます。

食べられないときの優先順位

  1. 水分を取る
  2. エネルギー源を確保する
  3. 取れそうならタンパク質を少し加える
  4. 体調が戻ってから食品の種類を増やす

短期間であれば、野菜を十分に食べられない日があっても、 それだけで食事全体が失敗になるわけではありません。

国立がん研究センターでも、食欲がないときは栄養量や規則正しさにこだわりすぎず、 食べられるときに、食べられるものを取る工夫が紹介されています。 [2]

一食ではなく、一日全体で考えましょう 朝に食べられなくても、午後や夜に少し取れることがあります。 一日全体、あるいは数日間の流れで補う視点が大切です。

食欲がないときの7つの食事の工夫

食欲低下の程度や症状には個人差があります。
以下の項目を開き、その日に試せそうなものを一つ選んでみてください。

おかゆ、茶わん蒸し、豆腐のスープ、小さなおにぎりなど少量で栄養を補う食事例
一食で頑張らず、
一口を何回かに分ける食べ方も選択肢です。
1 一日3食にこだわらない

朝・昼・夕の決まった時間に食べられなくても構いません。 体調のよい時間に、少量ずつ試してみましょう。

  • 小さなおにぎり
  • 一口サイズのサンドイッチ
  • バナナ
  • ヨーグルト
  • プリン
  • チーズ
  • 茶わん蒸し
  • 栄養補助ゼリー

大きな器に多く盛ると、見るだけで負担になることがあります。 小さな器に少量を盛り、「食べられた」という感覚を積み重ねます。

2 少量でエネルギーを取れるようにする

食事量が減っているときは、 少ない量でもエネルギーを補えるようにします。

  • おかゆに卵やしらすを加える
  • スープに豆乳、牛乳、チーズを加える
  • 豆腐にごま油や練りごまを少量加える
  • パンにバターやチーズを添える
  • じゃがいもをポタージュにする
  • 果物にヨーグルトを組み合わせる
持病や食事制限がある方へ 糖尿病、腎臓病、脂質制限、膵臓や胆のうの病気などがある場合は、 担当医や管理栄養士へ確認してください。
3 タンパク質は「食べやすい形」で補う

タンパク質は、筋肉、血液、酵素などをつくる材料です。 大きな肉や焼き魚を無理に食べる必要はありません。

  • 卵豆腐
  • 茶わん蒸し
  • 湯豆腐
  • 白身魚の煮つけ
  • 鶏ひき肉のスープ
  • ヨーグルト
  • 牛乳や豆乳
  • 栄養補助飲料

「主食だけなら食べられる」という場合は、 おかゆに卵、うどんに豆腐など、 一口分のタンパク質を足すところから始めます。

4 においが気になるときは冷まして食べる

温かい料理は、においが強く立ちやすくなります。 炊きたてのご飯、焼き魚、煮物などのにおいがつらいときは、 常温程度まで冷ましてみましょう。

  • 冷たい麺
  • すし飯
  • サンドイッチ
  • 冷製スープ
  • 冷やした果物
  • ゼリー

調理中のにおいが負担になる場合は、 冷凍食品、レトルト食品、市販のおかずも上手に利用してください。

5 吐き気があるときは無理に食べない

吐き気が強いときに、無理に食べる必要はありません。 症状が落ち着いたタイミングで、一口ずつ試します。 [3]

  • 冷ましたおかゆ
  • やわらかく煮たそうめんやうどん
  • クラッカー
  • ゼリー
  • 果物
  • 氷片
  • 必要に応じて経口補水液

吐き気止めが処方されている場合は、自己判断で我慢せず、 飲むタイミングや使い方を医師、看護師、薬剤師へ確認しましょう。

6 口内炎や喉の痛みがあるときは刺激を避ける

口内炎や喉の炎症があると、 酸味、塩味、香辛料、熱い料理が刺激になることがあります。

  • 人肌程度に冷ましたスープ
  • やわらかいおかゆ
  • 卵豆腐
  • 茶わん蒸し
  • あんやとろみをつけた料理
  • プリンやゼリー

口の中が痛い場合は、酸味や香辛料を控え、 やわらかく、口当たりのよい形に整えます。 [4]

むせや飲み込みにくさがある場合 自己流でとろみや食事形態を決めず、 医師、看護師、管理栄養士、言語聴覚士などへ相談してください。
7 水分は一度に飲まず、こまめに取る

食事量が減ると、水分摂取量も減りやすくなります。 コップ一杯を飲むのが難しい場合は、数口ずつ回数を増やします。

  • 水やお茶
  • スープや薄めの味噌汁
  • ゼリー飲料
  • 氷やシャーベット
  • 必要に応じて経口補水液
水分制限を受けている方へ 心臓病や腎臓病などで水分量を指示されている場合は、 自己判断で増やさず、担当医の指示を優先してください。

症状別・食べやすいものの例

同じ治療を受けていても、味やにおいの感じ方、 口の乾燥、胃の状態には個人差があります。
正解を一つに決めず、温度、硬さ、味付けを少しずつ変えてみましょう。

吐き気、口内炎、味覚変化、<br data-src=口の乾燥があるときの食事の工夫" loading="lazy" decoding="async">
吐き気、口内炎、味覚変化、口の乾燥に合わせて食事を調整します。
味が薄く感じる
  • 昆布、かつお節、干ししいたけなどのだしを利用する
  • 口内炎がなければ少量の酢や柑橘を試す
  • ごま、海苔、チーズなどで風味を加える
  • 温度を変えて試す
金属のような味がする
  • だしをきかせて塩味を控えめにする
  • 肉が難しいときは卵、豆腐、魚、乳製品へ置き換える
  • 食前や食後に口をゆすぐ
  • 食器の素材を変えて試す
口が乾く
  • 汁気の多い料理を選ぶ
  • あんやとろみを加える
  • 食事の途中で少量ずつ水分を取る
  • 口腔ケアを歯科や看護師へ相談する
すぐにおなかいっぱいになる
  • 食事を5~6回程度に分ける
  • 食事前に大量の水分を取らない
  • 少量でエネルギーを取りやすい食品を選ぶ
  • スープに卵、豆腐、豆乳などを加える

味覚やにおいが変化したときは、本人が食べやすいと感じる味や温度を探すことが大切です。 [5]

腸活や食物繊維は体調に合わせる

普段の食生活では、野菜、海藻、きのこ、豆類、発酵食品などは、 腸内細菌や腸の働きを支える食品になります。

一方、がん治療中は、下痢、腸閉塞のリスク、消化管手術後、 食道や腸の狭窄などにより、食物繊維を控えたほうがよい場合があります。

腸によい食品も、その日の胃腸に合わせます 症状が落ち着いているときに、やわらかく煮た野菜、豆腐、 味噌汁、ポタージュなどから少量ずつ取り入れます。

下痢があるとき、手術後、腸が狭くなっていると指摘されたときは、 「食物繊維は多いほどよい」と考えず、病院の食事指示を優先してください。

好中球の低下などで感染症への注意が必要な場合は、 食品の加熱、保存、衛生管理について、医療機関から受けた指示に従いましょう。

中医学では「脾胃の弱り」を中心に考える

中医学における「脾」は、解剖学的な脾臓だけを指す言葉ではありません。 食べ物を消化・吸収し、気・血・津液をつくる働きを含む機能的な概念です。

がん治療中の食欲低下は、症状や体質によって、 次のようなタイプに分けて考えることがあります。

脾気虚タイプ|消化吸収する力が弱ったタイプ
虚証・気虚傾向
  • 食欲がない
  • 少し食べると疲れる
  • 胃がもたれる
  • 軟便になりやすい
  • 手足に力が入りにくい

養生の方向: 温かく、やわらかく、消化しやすい料理を少量ずつ取ります。 おかゆ、卵、豆腐、やわらかく煮た根菜などが候補になります。

胃陰虚タイプ|胃腸の潤いが不足したタイプ
陰虚・乾燥傾向
  • 口や喉が乾く
  • 口内炎がある
  • 食べ物が飲み込みにくい
  • 空腹感はあるが多く食べられない
  • のど越しのよいものを好む

養生の方向: スープ、あんかけ、ゼリー、茶わん蒸しなど、 潤いがあり、口や喉を通りやすい形に整えます。

気滞タイプ|緊張やストレスで気が滞ったタイプ
気滞・ストレス傾向
  • 不安が強い
  • 食事を前にすると気持ちが重くなる
  • 胸やおなかが張る
  • げっぷが多い

養生の方向: 食事内容だけでなく、室温、におい、姿勢、音、 食卓での声かけなど、食事環境も整えます。

中医学的な養生や漢方薬は、がん治療の代わりではありません 漢方薬を使用する場合も、抗がん剤や支持療法薬との併用を含め、 必ず主治医、病院薬剤師、漢方に詳しい薬剤師へ確認してください。

「よく噛む」は体調に合わせて

よく噛むことは、唾液の分泌を促し、 胃腸へ食べ物が入る前の消化準備を助けます。
中医学的には、よく噛むことは「脾」を助ける食べ方と考えられます。

体調がよく、口内炎や飲み込みにくさがない場合は、 一口30回を一つの目安として、急がず食べてみましょう。

回数を達成することが目的ではありません 食事で疲れる、口や喉が痛い、むせる場合は、噛む回数にこだわらず、 やわらかく調理して食べる負担を減らすことを優先します。

栄養補助食品や健康食品を使うときの注意

栄養補助飲料や栄養ゼリーは、 通常の食事だけでは栄養が不足するときに役立つ場合があります。

一方、健康食品、サプリメント、ハーブなどには、 抗がん剤などの吸収、代謝、排泄へ影響する可能性があるものもあります。 [6]

クロレラバイオリンクは、がんを治療する医薬品ではありません 食事や標準治療の代わりになるものでもありません。
がんを小さくする、再発を防ぐ、寿命を延ばすと断定できるものではありません。
ただし、食欲がない場合では、身体に不可欠なビタミン・ミネラルを効率よく摂取する子tが出来ます。

使用を検討する場合は、商品名、原材料、摂取量が分かる資料や商品を、 主治医または病院薬剤師へ見せて確認してください。

特に、治療開始時、治療薬の変更時、手術前後、 肝臓や腎臓の機能が低下しているときは、 自己判断で新しい健康食品を始めたり、摂取量を増やしたりしないことが大切です。

健康食品を始める前に、治療薬との併用を整理しませんか?

ほどよい堂では、商品の販売を前提にせず、 現在のお薬、お薬手帳、治療内容、食事量を確認しながらご相談をお受けします。

健康食品の使用可否は、
治療内容や体調によって異なります。

ご家族ができること

ご家族は、「少しでも食べてほしい」と考えるものです。 その思いは自然ですが、食べることを強く求める言葉が、 ご本人の負担になることがあります。

がん治療中に食欲が低下した家族への負担を減らす声かけの比較
答えを急がず、食べられそうなものを一緒に探します。

負担になりやすい声かけ

  • 「体力が落ちるから食べて」
  • 「これだけは食べないと」
  • 「せっかく作ったのに」

選びやすくする声かけ

  • 「何なら一口食べられそう?」
  • 「冷たいものと温かいもの、どちらがよさそう?」
  • 「今は休んで、あとで試してみる?」

手作りだけにこだわらず、冷凍食品、レトルト食品、市販のおかず、 宅配食なども利用してください。

支えるご家族の休養も大切です 食べる人だけでなく、支える人が疲れ切らないことも、 治療生活を長く支えるために欠かせません。

早めに医療機関へ相談したいサイン

次のような場合は、食事の工夫だけで様子を見ず、 担当の医師、看護師、病院薬剤師へ連絡してください。

がん治療中の食欲低下で水分が取れない、何度も吐くなど早めに医療機関へ相談したいサイン
食べられない、飲めない状態が続く場合は、
早めに治療先へ連絡します。
  • 水分をほとんど取れない
  • 一日に何度も吐いている
  • 尿の量や回数が明らかに減った
  • 急に体重が減ってきた
  • 強いふらつきや倦怠感がある
  • 食べ物や飲み物で頻繁にむせる
  • 食べ物が喉や胸につかえる
  • 口内炎や喉の痛みで飲食できない
  • 下痢、便秘、腹痛が続いている
  • 不安や落ち込みが強く、食べる気力が出ない
「飲めない」「何度も吐く」は早めに連絡を 食事量、飲水量、嘔吐の回数、尿の回数、体重の変化を記録しておくと、 医療スタッフへ状態を伝えやすくなります。

まとめ|食べられる形で、栄養を途切れさせない

がん治療中の食欲低下には、治療の影響、消化器症状、味覚変化、 口内炎、ストレス、体重や筋肉量の減少など、さまざまな背景があります。

大切なのは、無理に一人前を食べることではありません。

  • 食べられる時間に食べる
  • 一回の量を減らして回数を増やす
  • 水分を少量ずつ取る
  • 主食とタンパク質を優先する
  • 温度、におい、硬さを調整する
  • 体重、食事量、症状を記録する
  • 飲めない、吐く、急に痩せる場合は早めに相談する

一度にすべてを変える必要はありません。
まず一つ変えるなら、 食べやすいものを小さな器に少量だけ準備する ことから始めてみましょう。

治療を最優先に、今できる栄養と胃腸の整え方を一緒に考えます

ほどよい堂では、がんそのものを治療するのではなく、 治療中の食事、栄養、胃腸の状態、服用中のお薬、 漢方薬や健康食品の併用について、薬剤師の立場から整理します。

LINEトークでの相談にも対応しています。 口頭では相談しにくい内容も、文字でお送りいただけます。

病院で行われている治療と、
担当医療機関の指示を最優先にします。

参考にした公的・専門機関の情報
  1. 国立がん研究センター がん情報サービス「食欲がない・食欲不振」
  2. 国立がん研究センター がん情報サービス「がんと食事」
  3. 国立がん研究センター がん情報サービス「吐き気・嘔吐」
  4. 国立がん研究センター がん情報サービス「口内炎・口内の乾燥」
  5. 国立がん研究センター がん情報サービス「味覚やにおいの変化」
  6. National Cancer Institute「Cancer Therapy Interactions With Foods and Dietary Supplements」
免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、 個別の診断、治療、処方を行うものではありません。 症状、治療内容、手術部位、持病によって適した食事は異なります。 食事制限、水分制限、感染対策、嚥下調整などについて指示を受けている場合は、 担当医療機関の指示を優先してください。

公開・最終確認日:2026年8月1日

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この記事の信頼性について

この記事の監修者

漢方・薬膳・腸活の視点から、 薬剤師が内容を確認しています。
現代の医学・栄養学と中医学の両面を大切にしながら、 日常生活に取り入れやすい情報提供を心がけています。

漢方薬局ほどよい堂代表・薬剤師 河邊甲介

SUPERVISOR

河邊 甲介

薬剤師/中医薬膳師/薬膳素材専門士/ペットフーディスト
漢方薬局「ほどよい堂」代表

宮崎県川南町の漢方薬局「ほどよい堂」で、 漢方 × 薬膳 × 腸活の視点から 健康相談を行っています。
体質だけでなく、食事・胃腸・生活習慣まで一緒に整理し、 無理なく続けられる養生を考えていきます。

薬剤師 中医薬膳師 薬膳素材専門士 漢方相談 薬膳 腸活

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