がん治療中の腸活|下痢・便秘・食欲不振の食事と注意点を薬剤師が解説

がん治療中の腸活|下痢・便秘・食欲不振があるときの考え方
「抗がん剤治療が始まってから、下痢が続いている」
「便秘でおなかが張り、食欲まで落ちてきた」
「腸内環境を整えたいけれど、乳酸菌や食物繊維をとっても大丈夫?」
がん治療中には、下痢・便秘・食欲不振など、胃腸に関するさまざまな不調が起こることがあります。
しかし、治療中の腸活で大切なのは、ヨーグルトや食物繊維などを一律に増やすことではありません。
下痢と便秘では、適した食事が反対になることもあります。この記事では、症状に合わせた食事・水分・腸活の考え方を、漢方薬局ほどよい堂の薬剤師が分かりやすく解説します。
治療中の薬・食事・健康食品を一緒に整理します
お薬手帳、治療スケジュール、使っている健康食品が分かると、主治医へ確認したいポイントを整理しやすくなります。
がん治療中の腸活は「善玉菌を増やすこと」だけではありません
健康なときの腸活では、食物繊維や発酵食品を取り入れ、腸内細菌の多様性を育てることが重視されます。
一方、がん治療中は、抗がん剤、放射線治療、免疫療法、手術などによって腸の粘膜や腸の動きが影響を受けることがあります。痛み止め、吐き気止め、抗菌薬など、治療を支える薬が便通に影響する場合もあります。
下痢や便秘の原因は一つとは限りません。治療薬、感染症、食事量の低下、運動不足、腸管の狭窄、重い便秘などが重なっている可能性もあります。
- 危険な副作用や感染症ではないか確認する
- 脱水と電解質不足を防ぐ
- 食べられる量を少しでも確保する
- 症状に合った食事へ一時的に調整する
- 落ち着いてから腸内環境を少しずつ立て直す

最初に確認したい「病院へ連絡するサイン」
次のような症状がある場合は、食事や健康食品だけで様子を見ず、治療を受けている病院へ連絡してください。
- 病院から指示された基準を超える発熱
- 白血球が減少する治療中の発熱・悪寒・腹痛・下痢
- 血便または黒い便
- 水分を飲めない、何度も吐く
- 尿量が極端に少ない、強い口渇やふらつき
- 強い腹痛や腹部の張り
- おならが出ず、吐き気や嘔吐を伴う
- 3日以上排便がない
- 下剤を使っても1~2日便が出ない
- 下痢が続く、急激に回数が増えた
- 治療前にはなかった症状が急に現れた

早めに相談しましょう。
特に免疫チェックポイント阻害薬を使用している場合、下痢が免疫反応による大腸炎の初期症状である可能性があります。
軽い下痢に見えても、普段より回数が増えた場合は早めに治療チームへ伝えましょう。
下痢・便秘・食欲不振があるときの腸活
下痢があるとき|「育てる」より「休ませる」
まずは水分と電解質をつなぐ
下痢が続くと、水分だけでなく、ナトリウムやカリウムなどの電解質も失われます。善玉菌や食物繊維を増やすことより、脱水を防ぎ、腸への刺激を減らすことを優先します。
- 水、湯冷まし
- 医師から制限されていなければ経口補水液
- 脂肪の少ないスープ
- 具を少なくした薄めの味噌汁
- カフェインを含まない飲み物
一度に多く飲まず、少量ずつこまめにとります。心臓病や腎臓病などで水分・塩分制限がある場合は、自己判断で増やさず、治療チームへ確認してください。
消化のよいものを少量ずつ
- おかゆ、やわらかいご飯
- 煮込みうどん、食パン、クラッカー
- 皮を除いてやわらかく煮たじゃがいも
- バナナ、りんごのすりおろし
- 豆腐、卵豆腐、茶わん蒸し
下痢が強い間は一時的に控えるもの
- 揚げ物、脂肪の多い料理、香辛料
- アルコール、コーヒー、濃いお茶
- 牛乳や乳製品
- 生野菜、豆、海藻、きのこの大量摂取
- 果汁の多いジュース
- 糖アルコールを多く含むガム・飴・飲料
豆・海藻・きのこは普段の腸活では役立つ食品ですが、下痢が強い時期はいったん休み、便が落ち着いてから少量ずつ戻します。

下痢が強い時期に腸への刺激を減らすための
目安です。
下痢止めを自己判断で追加しない
治療薬による下痢、感染症、免疫関連の大腸炎、便が詰まった周囲から液状便が漏れる状態など、原因によって対応は異なります。
市販の下痢止めを自己判断で追加せず、病院からロペラミドなどの服用方法を指示されている場合は、その指示に従ってください。
肛門周辺の皮膚も守る
排便後はこすらず、ぬるま湯でやさしく洗い、柔らかい紙やタオルで押さえるように水分を取ります。
痛み、出血、ただれがある場合は医師や看護師へ相談してください。
便秘があるとき|食物繊維不足とは限りません
治療中の便秘は、食事量・水分量・運動量の低下だけでなく、抗がん剤、分子標的薬、医療用麻薬、吐き気止め、手術後の変化、腸管の圧迫や狭窄など、複数の原因で起こることがあります。
水分制限がなければ、少量ずつこまめに
水やお茶、スープ、味噌汁などを少量ずつとります。
朝の温かい飲み物が排便のきっかけになる人もいます。
体調に合わせた軽い運動
体調が許せば、短時間の散歩やストレッチを行います。
歩くことが難しい日は、ベッド上で足を動かす、椅子に座る、深呼吸をしながら体を軽くひねる方法もあります。
食物繊維は「やわらかく、少しずつ」
腸閉塞や腸管狭窄がなく、医師から食物繊維を制限されていない場合に限り、次の食品を少量から試します。
- やわらかく煮た野菜
- かぼちゃ、さつまいも、果物
- オートミール
- 細かく刻んだきのこ
- やわらかく煮た豆
- 海藻を少量入れた味噌汁
一度に増やさず、まず一品を少量から。食べられる体調であれば、一口ごとによく噛むことも、中医学でいう「脾=消化吸収の土台」の負担を減らす助けになります。
坐薬や浣腸は必ず確認してから
白血球や血小板が減っているとき、腸や肛門の粘膜が傷ついているときは、肛門への刺激が出血や感染につながる可能性があります。
医師から指示されていない坐薬や浣腸は使用せず、下剤の種類や量も医師・薬剤師へ相談してください。
食欲不振があるとき|一日三食にこだわらない
食欲不振は、吐き気、口内炎、味覚・嗅覚の変化、痛み、便秘、下痢、不安、治療による疲労など、さまざまな原因で起こります。
一日三食にこだわらず、5~6回に分けても構いません。
少量でエネルギーとタンパク質を補う
- 茶わん蒸し、卵豆腐、豆腐、卵料理
- 白身魚や鶏肉をやわらかく煮たもの
- ポタージュ、おじや、麺類
- ゼリー、病院から案内された栄養補助飲料
下痢が同時にある場合は、脂肪分や乳製品を控えるなど、その日の症状に合わせて調整します。
食事量が不足している場合は、病院の管理栄養士へ相談しましょう。
においがつらいとき
温かい料理は香りが立ちやすいため、少し冷ましてから食べると楽になることがあります。
市販品や冷凍食品を活用し、調理そのものの負担を減らすことも大切です。
ご家族の声かけ
- 今なら何が食べられそう?
- 温かいものと冷たいもの、どちらがよい?
- 一口だけ試してみる?
「食べて」と強く勧めるより、本人が選べる聞き方のほうが心理的な負担を減らしやすくなります。
プロバイオティクス・プレバイオティクス・バイオジェニックス
腸内環境を支える方法は、善玉菌そのもの、善玉菌のエサ、菌がつくる成分の3方向から考えられます。
ただし、治療中は三つを一度に増やすのではなく、今の腸が受け取れるものを選ぶことが大切です。

その日の腸が受け取れるものを選びます。
プロバイオティクス
善玉菌そのもの。乳酸菌やビフィズス菌など、生きた微生物を含む食品や製品です。
下痢のときは乳製品が負担になる場合があります。
白血球が減っている人、免疫機能が低下している人、中心静脈カテーテルやポートが入っている人は、サプリメントを始める前に医療者へ確認してください。
プレバイオティクス
善玉菌のエサ。食物繊維やオリゴ糖など、腸内細菌に利用される成分です。
活動性の下痢、強い腹部膨満、腸管狭窄があるときは負担になることがあります。
症状が落ち着いてから、一品ずつ少量で再開します。
バイオジェニックス
菌がつくる成分。乳酸菌などがつくる有機酸や、発酵によって生じる成分を活用する考え方です。
特定成分だけに頼らず、水分、エネルギー、タンパク質、睡眠、休養などの土台と組み合わせて考えます。
治療中の基本
追加する前に症状を確認。下痢・便秘・腹部膨満・発熱があるときは、腸活食品を増やす前に治療チームへ相談しましょう。
クロレラや健康食品を利用するときの注意点
クロレラは、タンパク質、ビタミン、ミネラル、食物繊維、クロロフィルなどを含む「緑のまるごと食品」です。
食事量が安定している時期の栄養補助として検討されることはありますが、がんを治療する医薬品ではありません。
始める前に主治医・薬剤師へ確認したいケース
- 下痢が続いている
- 強い便秘や腹部膨満がある
- 腸管狭窄や腸閉塞の可能性がある
- 手術直後で食事内容を調整している
- 抗がん剤、分子標的薬、免疫療法を受けている
- ワルファリンなど相互作用に注意が必要な薬を使用している
- 白血球が減少している
- 複数の健康食品やサプリメントを併用している
健康食品や漢方薬を使用するときは、商品名、原材料、一日の摂取量を治療チームへ伝えましょう。
「食品だから必ず安全」「天然だから薬と影響しない」とは限りません。
健康食品を追加する前に、組み合わせを確認しませんか?
ほどよい堂では、治療の代わりになる提案は行いません。
治療内容とお薬を確認し、主治医へ相談すべき点を一緒に整理します。
中医学から見る下痢・便秘・食欲不振
中医学では、胃腸の消化吸収機能を「脾胃」と表現します。
脾は、食べ物から気・血・津液をつくり、全身へ送り出す土台です。
土が整うことで、全身の気血水が巡りやすくなると考えます。
下痢が続き、疲れやすい|脾気虚・脾陽虚タイプ
脾気虚・脾陽虚=胃腸のエネルギーや温める力が不足したタイプ。
食欲低下、疲労感、冷え、軟便などを伴いやすい状態です。
治則は、脾胃を守りながら気を補い、余分な湿をさばくこと。
ただし治療中は自己判断で温める食品や漢方薬を増やさず、症状と治療内容を確認します。
便が硬く、口や皮膚も乾燥する|津液不足・陰虚タイプ
津液不足・陰虚=体を潤す水分が不足したタイプ。
腸を潤す力が不足し、便が硬くなりやすいと考えます。治則は、胃腸へ負担をかけずに津液を補い、腸を潤すことです。
便意はあるが出す力が弱い|気虚タイプ
気虚=便を押し出すエネルギーが不足したタイプ。
食事量の低下、体力低下、長期療養などでみられることがあります。
食物繊維を増やすだけでなく、エネルギーとタンパク質を補い、休養を確保することも大切です。
食欲がなく、おなかが張る|脾気虚タイプ
脾気虚=消化吸収の働きが低下したタイプ。
一度にたくさん食べるより、温かくやわらかい料理を少量ずつ取り入れます。
ただし下痢や吐き気がある場合は、温度や脂肪分も調整します。
緊張で吐き気・食欲不振が強くなる|肝胃不和タイプ
肝胃不和=ストレスによって胃腸の働きが乱れたタイプ。
深呼吸、短時間の軽い運動、静かな環境、好きな音楽、人やペットとの穏やかな時間など、複数の休養方法を組み合わせます。
「栄養・循環・吸収」の3本柱で考える
1.栄養
体をつくる材料をつなぐ。
食べられない日は完璧な食事を目指しません。
水分、エネルギー、タンパク質のうち、今とれるものから少しずつつなぎます。
2.循環
栄養と酸素を必要な場所へ届ける。
体調が許す範囲で、深呼吸、手足の曲げ伸ばし、短時間の散歩などを取り入れます。動けない日は、休むことも大切な養生です。
3.吸収=腸活
受け取れる胃腸を育てる。
下痢や便秘が強い時期は、腸活食品を増やすより、腸が受け取れる形に調理することを優先します。
味噌汁・スープの調整例
- 下痢:汁を中心に、具材は少なくやわらかく
- 便秘:状態を見ながら野菜・海藻・きのこを少量ずつ
- 食欲不振:卵、豆腐、魚などを加えて少量でも栄養を
3日・3週間・3カ月の時間軸で焦らず整える
| 時間軸 | 確認すること | 具体的な行動 |
|---|---|---|
| 最初の3日 | 症状と水分の変化 | 便の回数・状態、食事量、水分量、尿量、体温を記録し、悪化時は治療チームへ伝えます。 |
| 3週間 | 自分の治療サイクル | 投与後の何日目に下痢や食欲不振が出るかを確認し、食事の準備や予定調整に生かします。 |
| 3カ月 | 食材の幅と体質の土台 | 症状が安定し、医師から制限を受けていなければ、野菜、豆、海藻、きのこ、発酵食品などを少量ずつ戻します。 |
この時間軸は目安です。
治療の種類や体調によって回復の速さは異なるため、その日の体が受け取れるものを選びましょう。
がん治療中の腸活についてよくある質問
下痢があるときもヨーグルトを食べたほうがよいですか?
必ずしも適しているとは限りません。
治療中の下痢では乳糖を一時的に消化しにくくなることがあり、乳製品で症状が強くなる人もいます。
下痢が続く場合は一度控え、再開時期を治療チームへ確認してください。
便秘なら食物繊維をたくさん食べてもよいですか?
腹部膨満、おならが出ない、強い腹痛、嘔吐がある場合は、食物繊維を増やしてはいけないことがあります。
腸閉塞や腸管狭窄の可能性を確認してから、やわらかい食品を少量ずつ取り入れます。
乳酸菌やプロバイオティクスのサプリメントは使えますか?
治療内容、白血球数、免疫状態、中心静脈カテーテルの有無などによって判断が異なります。治療チームに商品名と菌株、摂取量を伝え、確認してから始めてください。
クロレラはがんに効きますか?
クロレラはがんを治療する医薬品ではありません。食事量が安定した時期の栄養補助として検討されることはありますが、治療薬との組み合わせや腸の状態を確認する必要があります。
食べられない日は栄養バランスが崩れても大丈夫ですか?
一日だけで完璧な栄養バランスを整える必要はありません。まずは水分と食べられるものをつなぎ、食事量が落ちた状態が続く場合は、主治医や管理栄養士へ早めに相談してください。
症状が落ち着いた後の食生活・腸活の参考ページ
まとめ|治療中の腸活は「無理に増やさない」ことから
がん治療中の腸活では、善玉菌や食物繊維を増やすことだけが正解ではありません。
- 下痢:腸への刺激を減らし、水分と電解質を補う
- 便秘:原因と腸閉塞のサインを確認してから、水分・運動・食物繊維を調整する
- 食欲不振:一日三食にこだわらず、食べられるものを少量ずつつなぐ
健康食品、乳酸菌サプリメント、漢方薬などを利用するときは、治療薬との組み合わせや血液検査の状態を確認する必要があります。お薬手帳、治療スケジュール、健康食品の商品名、便通の記録を準備すると相談がスムーズです。
ひとりで抱えず、今の体調を整理しませんか?
漢方薬局ほどよい堂では、がん治療そのものに代わる提案ではなく、治療中の食事・腸活・健康食品について、主治医へ確認したいポイントを一緒に整理します。
参考情報
症状や連絡の目安は、治療施設から個別に案内されている内容を優先してください。
監修者・免責事項
本記事の信頼性を高めるため、監修者情報と免責事項をまとめています。 体質の整理(中医学)と、現代の栄養学・生活習慣の視点を両輪で扱い、誠実な表現を心がけています。
Supervisor / Reviewer
監修者情報

監修:河邊 甲介(薬剤師/中医薬膳師/薬膳素材専門士/ペットフーディスト)
漢方薬局「ほどよい堂」代表
宮崎県川南町にて、漢方 × 薬膳 × 腸活のトリプルアプローチによる健康相談を行っています。 体質の言語化と、日常で“続く整え方”をセットでご提案しています。
- 栄養:細胞は“食べたものでしか作られない”
- 循環:巡りが整うと、酸素・栄養が届きやすくなる
- 吸収(腸活):食べるだけでなく“吸収できる腸”を育てる
ほどよい堂の情報を見る クリックで開閉
迷ったままにしない。まずは「無料漢方相談」で、体質を整理しませんか?
薬剤師/中医薬膳師が、あなたの状態を“体質の言葉”で分かりやすく整理。 目的やライフスタイルに合わせて、薬膳素材・漢方茶(ブレンド)を丁寧に組み立て、整える一歩をお届けします。
人気健康誌 Tarzan(ターザン) にも紹介(2025年2月発売)|特集「漢方で不調を整える」
「自分の場合はどう整える?」が気になる方へ。
ほどよい堂では、体質(気・血・津液/陰陽・寒熱など)の整理と、食事・生活の整え方をセットでご提案しています。
免責事項 クリックで開閉
本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断・治療・処方の代替ではありません。 症状が強い/長引く/不安が大きい場合は、医療機関・専門家へご相談ください。
- 体質・状態・既往歴により、最適な対処は異なります。
- 妊娠中・授乳中・服薬中・通院中の方は、自己判断での実施を避け、必ず確認してください。
- 記事内容は、予告なく更新・変更する場合があります。

がん術後の疲れが抜けない方へ|漢方で考える体力回復と人参養栄湯・八味地黄丸の使い分け
Category

がん治療中の体力低下・食欲不振に|漢方でできる体調サポートと相談の目安
Category

がん治療中のつらさに寄り添う漢方相談|食欲不振・倦怠感・不眠を薬剤師がサポート
Category

サルベストロールとは?CYP1B1との関係・安全な選び方を薬剤師が解説|購入相談はこちら
Category

がん予防にビタミンDは必要?腸内細菌・免疫との関係を漢方薬局がわかりやすく解説
Category

漢方医学でみる「がん」の治療ポイント|体質改善と免疫力向上で根本からサポート
Category

がん予防に最適な生活習慣とサルベストロールの効果とは?
Category








