水分摂取不足が引き起こす腸内環境の変化と病原細菌への影響

水分は身体の基本的な生理機能を支える重要な要素であり、その摂取量が不足すると多くの健康問題を引き起こす可能性があります。

特に腸内環境への影響は見逃せません。

水分摂取が不足すると、腸内の通過時間が遅れ、便秘症状が現れることがあります。

また、腸内の細菌叢のバランスが崩れ、腸内細菌の構成や数に変化が生じます。

このような環境の変化は、病原細菌の排除能を低下させ、免疫系の機能にも悪影響を及ぼします。

腸内の免疫応答が弱まり、病原細菌に対する防御が不十分になることで、感染症リスクが高まる可能性があります。

本記事では、水分摂取不足がどのように腸内環境を変化させ、病原細菌に対する防御能力に影響を与えるかについて詳しく探ります。

飲水不足が腸内環境と病原細菌排除能に及ぼす影響

研究背景と発見

北里大学と慶應義塾大学の研究グループは、飲水不足が腸内環境を悪化させ、病原細菌の排除能を低下させることを発見しました。

この研究は、2024年5月16日に国際学術誌『iScience』にオンライン掲載されました。

主要な研究結果

  1. 腸内環境の変化
    飲水制限により、マウスの腸内通過時間が遅延し、排便量が減少することで便秘症を発症しました。また、腸内細菌叢の構成が変化し、腸内細菌の総数が増加しました。
  2. 免疫応答の低下
    飲水制限により、病原細菌に対する防御応答に関わる免疫細胞であるTh17細胞が減少し、腸管病原性細菌の排除が遅れることが明らかになりました。
  3. Aquaporin 3の重要性
    細胞内に水を取り込むためのタンパク質であるAquaporin 3(AQP3)を欠損したマウスの大腸では、Th17細胞の著減が観察されました。

水分摂取の重要性

水は成人体重の50%以上を占める重要な生体構成要素で、消化吸収、栄養素・老廃物の運搬、体温調節など多様な機能を担っています。

水分摂取源は主に飲水、食事、代謝の3つであり、その70〜80%は飲水によるものとされています。

しかし、米国では成人の半数以上が適切な水分摂取基準を満たしておらず、慢性的な水分摂取不足が肥満、インスリン抵抗性、糖尿病などの代謝性疾患や便秘症などの腸管機能低下と関連していることが報告されています。

飲水量が異なる人々では、一部の腸内細菌の存在量に違いが見られるほか、便秘症患者では免疫細胞の構成変化が確認されています。

しかし、これまでの研究はアルコール摂取や運動量、食事習慣など多くの因子を含んでおり、水分摂取が腸内環境に与える具体的な影響については十分に解明されていませんでした。

水分摂取の不足は代謝性疾患の発症や早期死亡との関連性が指摘されていましたが、今回の研究で、腸内細菌叢や免疫系に及ぼす具体的な影響が初めて詳細に解析されました。

水分摂取の重要性と今後の展開:健やかな生活を支える新常識

成人が1日に必要とする水分量は約2.5Lと推定されていますが、米国や日本において多くの成人がこの基準を満たしていない状況が続いています。

今後は、水分摂取量の低下が人間において腸管感染症や腸管関連疾患の病態にどのような影響を与えるかを検証することが求められます。

日常的な水分摂取量と消化器系疾患との関連性を明らかにすることが、水分摂取の潜在的な重要性を腸内環境の恒常性維持という観点から理解する上で重要です。

参考文献:北里大学×慶應義塾大学プレスリリース

項目詳細
掲載誌iScience (Cell Press)
論文名Sufficient water intake maintains the gut microbiota and immune homeostasis and promotes pathogen elimination
著者Kensuke Sato, Mariko Hara-Chikuma, Masato Yasui, Joe Inoue, Yun-Gi Kim(*責任著者)
DOI10.1016/j.isci.2024.109903

用語解説

用語解説
腸内細菌叢ヒトの大腸には数百種類、約30兆個の細菌が存在し、互いに作用し合いながら複雑な生態系を形成しています。この細菌の生態系を腸内細菌叢と呼び、さまざまな生理機能や疾患との関連性が報告されています。
Th17細胞腸管粘膜や上皮組織において炎症性サイトカインを産生し、病原体の排除や上皮バリア機能の維持に重要な役割を果たす免疫細胞です。
アクアポリン3(AQP3)細胞膜を通じて水や一部の分子を選択的に輸送するチャネル。特に皮膚や腎臓、消化管などに高発現しており、体内の水分バランスを維持するために重要な役割を果たしています。
CD4+ T細胞さまざまなサイトカインを産生し、B細胞を活性化・抗体産生を誘導するなど、免疫応答において重要な役割を担っています。産生するサイトカインによってTh1、Th2、Th17、制御性T細胞に分類されます。
Citrobacter rodentiumヒトに感染する腸管病原性大腸菌や腸管出血性大腸菌と同一の病原遺伝子を持つ病原性細菌であり、大腸炎を誘導します。排除には宿主のTh17細胞が重要な役割を果たすことが報告されています。
RORγtTh17の分化と機能の制御に主要な役割を担っている転写因子です。

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薬剤師
河邊甲介

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著者プロフィール

河邊甲介 (薬剤師)

KOSUKE KAWABE

▷有資格

  • 薬剤師
  • 中医薬膳師:本草薬膳学院(学長:辰巳洋)にて資格取得
  • 薬膳素材専門士:本草薬膳学院(学長:辰巳洋)にて資格取得
  • ペットフーディスト

▷経歴

  • 福岡大学薬学部卒
  • 総合病院薬剤部・調剤薬局にて勤務
  • 2024年1月より宮崎県川南町(峠の里)にて漢方×薬膳×腸活のお店「ほどよい堂」を開局

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