漢方医学でみる高尿酸血症・痛風の治療ポイント

高尿酸血症および痛風は、現代社会において増加している健康問題であり、西洋医学の治療法と並行して、漢方医学もその治療に有効なアプローチを提供しています。

漢方医学では、高尿酸血症と痛風の原因を体内の「湿熱」や「痰飲(たんいん)/痰湿(たんしつ)」と捉え、個々の体質や症状に応じたオーダーメイドの治療を行います。

本記事では、漢方医学における高尿酸血症・痛風の治療ポイントを解説し、具体的な漢方薬の処方や生活習慣の改善策についても紹介します。

伝統と現代医学の融合による総合的なアプローチが、患者の生活の質を向上させる手助けとなるでしょう。

高尿酸血症・痛風とは?症状と原因を徹底解説

高尿酸血症は、血液中の尿酸濃度が高まった状態を指し、痛風はその結果として関節に尿酸結晶が沈着し、炎症や激痛を引き起こす疾患です。

特に暴飲暴食の翌朝に足の親指のつけ根が赤く腫れて痛みを感じることがあります。

この症状は風が吹いても痛むため「痛風」と呼ばれます。

足の親指のつけ根以外にも、足関節、足の甲、アキレス腱のつけ根、膝関節、手関節などにも激痛発作が起こることがあります。

また、耳介に痛風結節や尿路結石ができることもあります。

高尿酸血症や痛風は、肥満や高血圧などの生活習慣病を合併することも多く、痛風発作を繰り返す人は、発作の前兆(違和感)を感じることがあります。

尿酸はプリン体の新陳代謝によって生成される老廃物であり、血清尿酸値が7.0mg/dLを超えると高尿酸血症と診断されます。

男性に多く見られ、成人男性の約2割が高尿酸血症を持つと言われています。

原因となるプリン体は、肉類、内臓、魚卵、魚介類などの食品に多く含まれており、これらの過剰摂取が尿酸値の上昇に繋がります。

しかし、体内の尿酸のうち、飲食物からの摂取によるものは約2割に過ぎません。

残りの大部分は体内で合成される尿酸です。

尿酸の産生増加や腎臓での排泄機能低下が高尿酸血症の主な原因です。

西洋医学では、尿酸降下薬を長期的に使用し、発作時にはNSAIDsやステロイド、コルヒチンを用いて症状を管理します。

高尿酸血症・痛風の原因と病態

血液中の尿酸値が上昇し(高尿酸血症)、その値が飽和溶解度を超えると、関節内に尿酸塩結晶が生じます。

これを白血球が処理する過程で、痛風発作(急性関節炎)が発症します。

高尿酸血症の状態が続くと、尿酸結石が腎臓に生じ、腎機能が悪化して腎不全になることもあります。

高尿酸血症の原因は多岐にわたります。

腎臓から尿酸を排出する機能の低下、暴飲暴食、肥満、激しい運動、降圧利尿剤などの薬物が原因として考えられています。

適切な治療と予防策を講じることが重要です。

高尿酸血症・痛風の症状と経過

痛みの時間帯

痛風発作は夜間に発生することが多く、眠れないほどの激痛に見舞われる場合があります。

これは、夜寝るときに横になると、日中に関節内にたまった体液が尿酸よりも早く関節から出ていくため、尿酸の濃度が高まり結晶ができやすくなるためです。

痛みの経過

痛風発作時の激痛は歩行困難になるほどで、関節の痛みや腫れは始まってから2-3時間程度で急激に悪化し、その後24時間以内にピークに達します。

発作の症状は1-2週間程度で改善しますが、尿酸値が高い状態を放置すると、発作の間隔が短くなり、次第に関節炎が慢性化するリスクがあります。

高尿酸血症・痛風の治療法

高尿酸血症は血液中の尿酸値が高くなる状態で、放置すると関節に尿酸結晶が蓄積し、激しい痛みを伴う痛風発作を引き起こします。

痛風は生活の質を大きく損なうため、早期の予防と治療が重要です。

治療法には、尿酸値を下げる薬物療法や食事・生活習慣の改善が含まれます。

また、痛風発作時の痛みや炎症を抑える薬も使用されます。

適切な治療と予防を行うことで、痛風のリスクを軽減し、健康な生活を維持する方法を探ります。

高尿酸血症と痛風発作の関係:予防と対策

項目説明
高尿酸血症とは?高尿酸血症は、血液中の尿酸値が高い状態を指します。尿酸は体内の老廃物の一種で、通常は尿として排出されます。しかし、尿酸値が高くなると、関節に尿酸結晶が蓄積し始めます。この蓄積が進むと、痛風発作の原因となります。
痛風発作のメカニズム1. 尿酸結晶の剥がれ落ち:衝撃や急激な尿酸値の低下など、何らかの刺激によって関節に蓄積した尿酸結晶が剥がれ落ちることがあります。
2. 好中球の反応:剥がれ落ちた尿酸結晶を白血球の一種である好中球が取り込みます。この際、炎症を引き起こす物質が放出され、激痛を伴う痛風発作が発生します。
痛風発作の予防痛風発作が起こっている部位には、体中から多数の好中球が集まり、これらが一斉に炎症物質を放出することで強烈な痛みが引き起こされます。このプロセスを抑制することができれば、痛風発作の悪化を防ぐことができます。
コルヒチンによる予防痛風発作を予防するために使用される薬として『コルヒチン』があります。コルヒチンは白血球の作用を抑えることで、痛風の発作を防止します。
高尿酸血症と痛風発作の関係まとめ- 高尿酸血症:血液中の尿酸値が高い状態。必ずしも痛風を引き起こすわけではないが、続くと関節に尿酸結晶が蓄積し、痛風発作のリスクが高まる。
- 痛風発作:尿酸結晶が剥がれ落ち、好中球が集まって炎症物質を放出することで発生。激しい痛みが特徴。
- 予防策:コルヒチンなどの薬剤で好中球の作用を抑えることが有効。
高尿酸血症と痛風発作のメカニズムを理解し、適切な予防策を講じることで、痛風発作のリスクを減少させることができます。

痛風発作の治療

痛風発作は、特に足の親指の付け根に激痛をもたらし、尿酸値が8.0mg/dLを超える人は薬による治療が必要です。

治療の目標は尿酸値を6.0mg/dL以下にすることです。

薬を使用することで尿酸値はすぐに下がりますが、薬をやめるとすぐに上昇します。

尿酸値を下げる薬の種類

薬の種類薬名作用
尿酸生成抑制薬アロプリノール
フェブキソスタッド
体内で尿酸が作られにくくなる
尿酸排せつ促進薬ベンズブロマロン
プロベネシド
尿酸を体外に出しやすくする
尿酸再吸収阻害薬ドチヌラド2020年から新たに使用されるようになった薬
尿pH改善薬
(クエン酸製剤)
ウラリット尿が酸性の状態になっていると溶解度が非常に低くなり結石ができやすい状態になります。尿をアルカリ化し結石を溶解する

痛風発作に対する治療薬

これらの薬は、痛風発作時の炎症や痛みを速やかに抑えるために使用されます。

医師の指示に従い、適切に使用することが重要です。

薬の種類代表的な薬名作用
NSAIDsインドメタシン
ジクロフェナク
ロキソプロフェン
炎症を抑え、痛みを軽減する
ステロイド内服薬プレドニゾロン抗炎症作用で腫れを抑える
コルヒチンコルヒチン白血球の関節内への移動を抑制し、痛風発作の症状を和らげる
コルヒチンの特徴
出典:高田製薬

コルヒチンは痛風発作を予防する薬として知られています。

発作が起こった後の早期服用により、コルヒチンの効果は高まります。

痛風発作を予感した時に服用することで、発作の症状を大幅に軽減できます。

しかし、コルヒチン自体には消炎・鎮痛作用は認められていません。

炎症や痛みを抑えるためには、消炎鎮痛剤(ボルタレン、ロキソニン、ポンタール)の併用が必要です。

コルヒチンの作用と制限

コルヒチンは尿酸の代謝や排泄にほとんど影響を与えません。

そのため、高尿酸血症の改善には「尿酸産生抑制薬」や「尿酸排泄促進薬」の使用が必要です。

コルヒチンはあくまで痛風発作の予防薬であり、長期間の使用は推奨されていません。

長期間の予防投与においては、血液障害、生殖器障害、肝・腎障害、脱毛などの副作用が報告されています。

痛風発作時のコルヒチンの役割

痛風発作が起こると、好中球が炎症部位に集まり、激しい痛みを引き起こします。

コルヒチンはこの好中球の働きを抑えることで、結果的に消炎鎮痛作用を得ることができます。

この特性により、実際に痛風発作が起こった際のつらい症状を軽減する薬としてコルヒチンが用いられます。

コルヒチンまとめ
  • コルヒチンの役割:痛風発作の予防および早期軽減。
  • 消炎鎮痛剤の併用:ボルタレン、ロキソニン、ポンタールなど。
  • 高尿酸血症の治療:「尿酸産生抑制薬」や「尿酸排泄促進薬」の使用。
  • 長期使用の注意点:副作用のリスクがあるため、長期使用は避ける。

コルヒチンの適切な使用と他の治療薬との併用により、痛風発作の予防と症状軽減が可能になります。

長期間の治療と生活改善

高尿酸血症や痛風の治療は一時的な対処ではなく、長期間にわたる管理と生活改善が求められます。

高尿酸血症は生活習慣病の一種であり、治療には継続的な薬物療法と食事・運動などの日常生活の見直しが不可欠です。

痛風発作の予防には、尿酸値のコントロールが最も重要であり、そのためには規則正しい生活と適切な栄養管理が求められます。

高尿酸血症改善のための漢方アプローチ:痛風の考え方と処方

高尿酸血症は、体内で尿酸が過剰に生成されるか、排泄が不十分なために血中に尿酸が蓄積する状態です。

これが進行すると、関節に尿酸結晶が溜まり、激しい痛みを伴う痛風発作を引き起こします。

西洋医学では薬物療法が主流ですが、漢方医学では全身のバランスを整えることを重視し、自然な治癒力を引き出すアプローチが取られます。

漢方医学では、痛風は「痰湿(たんしつ)/痰飲(たんいん)」と深い関係があると捉えられています。

痰飲とは、津液(しんえき)が水分代謝の失調によって異常な水液と化した病理産物です。

津液とは、人体の正常な生理活動に必要な水液で、血液が運ぶ栄養物質なども含まれます。

この津液の流れが失調すると痰飲が生じ、様々な疾患の根本原因となります。

漢方では、痰飲を除去し、その原因を治療することで、痛風や高尿酸血症を改善していきます。

適切な漢方薬の使用により、体内のバランスを整え、自然治癒力を高めるアプローチを行います。

「痰湿/痰飲」証

痛風や高尿酸血症の発症には、飲食の不摂生や尿酸の過剰合成が関係している場合があります。

漢方医学では、このような状態を「痰湿/痰飲」証と捉えます。

痰湿とは、津液(しんえき)が水分代謝の失調により異常な水液と化した病理産物です。

暴飲暴食や体内の尿酸合成機能の失調によって痰湿が蓄積されると、高尿酸血症が引き起こされます。

漢方では、痰湿を取り除くための漢方薬を用いて、痛風や高尿酸血症の治療を行います。

このアプローチにより、体内のバランスを整え、自然治癒力を高めることを目指します。

代表処方には『越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)』があります。

「肝火(かんか)」証

肥満やストレスが関係している場合、痛風や高尿酸血症は「肝火(かんか)」証と考えられます。

肝は体の諸機能を調節し、情緒を安定させる働き(疏泄:そせつ)を持つ五臓の一つです。

しかし、精神的なストレスや緊張の持続、感情の起伏などの影響により、肝の機能(肝気)がスムーズに働かなくなると、鬱滞し、熱邪を生み出し、肝火証になります。

肝気の失調により尿酸の合成が過剰となり、痰飲が溜まり、高尿酸血症が発症します。

また、肝気の失調は食欲を必要以上に増進させ、脂肪の蓄積を促進し、肥満を引き起こします。

漢方薬で肝気の鬱結を和らげ、肝気の流れをスムーズにし、肝火を鎮めることで、痛風や高尿酸血症の治療を行います。

このアプローチにより、体内のバランスを整え、自然治癒力を高めることを目指します。

代表処方には『大柴胡湯(だいさいことう)』があります。

「風湿痺(ふうしっぴ)」証

関節に痛みやしびれ、違和感が生じている場合、漢方医学では「風湿痺(ふうしっぴ)」証と診断されることがあります。

これは、風湿邪によって引き起こされる痺証(ひしょう)の一種で、経絡が風邪、寒邪、湿邪などの病邪によって塞がれ、気血の流れが妨げられることで筋肉や関節に疼痛、しびれ、運動障害が現れる状態です。

漢方薬を用いて風湿邪を除去し、気血の流れを改善することで、痛風や高尿酸血症の治療を進めていきます。

代表処方には『疎経活血湯 (そけいかっけつとう)』があります。

「湿熱(しつねつ)」証

関節の腫れや熱感、発赤が顕著な場合、漢方医学では「湿熱(しつねつ)」証と診断されることがあります。

湿熱とは、体内で過剰な湿邪と熱邪が結合した状態を指します。

湿熱が関節に停滞すると、腫れや熱感、発赤など、痛風の症状が現れます。

脂っこいものや刺激物、味の濃いもの、アルコール類の日常的な摂取や大量摂取が湿熱証の原因となります。

漢方薬を用いて湿熱を除去し、痛風や高尿酸血症の治療を進めます。

このアプローチにより、体内のバランスを整え、自然治癒力を高めることが目指されます。

代表処方には『茵蔯五苓散 (いんちんごれいさん)』があります。

「腎陽虚(じんようきょ)」証

安定期に症状がほとんど現れないか、時折こわばりを感じる程度で、腎機能の低下が疑われる場合、それは「腎陽虚(じんようきょ)」として捉えます。

腎の陽気(腎陽)が不足している状態で、腎は生命を維持するために重要なエネルギーや栄養の基本物質である精(せい)を貯蔵し、成長、発育、生殖を管理し、体液の代謝を調整します。

陽気は気の一種であり、陰液と対比され、気のうち陽気と呼ばれます。

陽気不足により、下半身や手足の冷え、寒がり、夜間の頻尿などの寒さの症状が現れることがあります。

腎陽を補う漢方薬を使用して、高尿酸血症の治療を進めていきます。

代表処方には『八味地黄丸 (はちみじおうがん)』『牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)』があります。

「腎陰虚(じんいんきょ)」証

安定期に症状がまれに熱感や発赤が生じる程度で、腎機能の低下が疑われる場合、それは「腎陰虚(じんいんきょ)」の証として捉えます。

陰は血液、津液、精などの体内の要素を指し、腎の陰液(腎陰)が不足している体質が腎陰虚です。

陰液不足により陽気が相対的に亢進し、手のひらや足の裏のほてり、微熱、のぼせ、口渇、寝汗、尿の濃さ、便秘などの熱の症状が現れることがあります(虚熱)。

腎陰を補う漢方薬を使用して、高尿酸血症を治療していきます。

代表処方には『六味丸(ろくみがん)』があります。

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薬剤師
河邊甲介

宮崎県の川南町にある峠の里からの絶景を眺めながら、漢方と薬膳を組み合わせた腸活相談が受けられる「薬局×セレクトショップ」です。

「中医薬膳師×薬膳素材専門士×ペットフーディスト」の資格を有する薬剤師が、体調不良、ダイエットやアトピーなどの悩みにも親身に対応します。

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著者プロフィール

河邊甲介 (薬剤師)

KOSUKE KAWABE

▷有資格

  • 薬剤師
  • 中医薬膳師:本草薬膳学院(学長:辰巳洋)にて資格取得
  • 薬膳素材専門士:本草薬膳学院(学長:辰巳洋)にて資格取得
  • ペットフーディスト

▷経歴

  • 福岡大学薬学部卒
  • 総合病院薬剤部・調剤薬局にて勤務
  • 2024年1月より宮崎県川南町(峠の里)にて漢方×薬膳×腸活のお店「ほどよい堂」を開局

身体とこころの安心をお届けします

薬剤師であり、漢方×薬膳×腸活の専門家として、「ほどよい堂」を運営しています。
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