八綱弁証でタイプ判定|「虚実」を決定する完全ガイド【宮崎県川南町/漢方薬局ほどよい堂】 

受け止めている不調や体質の悩みを中医学的に整理するとき、大切になるのが「八綱弁証」の視点です。

その中でも「虚実」の判定は、症状が本来の体力不足(虚)から来ているのか、あるいは滞りや過剰(実)から来ているのかを見極める重要なポイント。

例えば同じ「疲れやすい」という訴えでも、脾胃の弱りによる“虚”なのか、気滞や瘀血による“実”なのかで、選ぶ漢方薬も養生法もまったく異なります。

本記事では、専門的な弁証論治をわかりやすく解説し、セルフチェックにも役立てていただけるようにまとめました。

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目次

はじめに──八綱弁証の「虚実」を最短で見極める意味

八綱弁証(はっこうべんしょう)は、中医学の診断法の基本軸であり、「陰陽・表裏・寒熱・虚実」の四対八綱を切り口に体質や病態を整理します。

そのなかでも「虚実(きょじつ)」の見極めは最初の分岐点といわれます。

なぜなら、虚か実かを誤ると、その後の治療方針(補うか、瀉すか)が根本的にズレてしまうからです。

漢方薬の選択・薬膳の素材・腸活の方向性まで、すべてが変わってしまいます。

虚実とは何か:不足か停滞か

  • 虚(きょ):体のエネルギーや栄養が不足している状態。
    → 気血水の不足、陰陽の衰えが背景にあります。
  • 実(じつ):体の中に邪気・老廃物・停滞が溜まり、過剰になっている状態。
    → 気滞(ストレスで気が巡らない)、痰湿(水分代謝の停滞)、瘀血(血の滞り)など。

虚実の基本イメージ表

判定軸虚(不足)実(停滞・過剰)
エネルギー足りない・すぐ疲れる有り余るが詰まる・イライラ
症状の強さゆるやか・慢性急・激しい・強い
淡・歯痕・薄苔紅〜紫・厚苔・膩苔
弱・細・沈強・弦・滑・数
腸活視点消化吸収力が弱い(プレバイオ不足)停滞・発酵過多(プロバイオ過剰や便秘)

診断→治法→方剤選択へ直結する「最初の分岐」

  • 虚なら補う
    補気(エネルギー補給)、補血(血を養う)、滋陰(潤いを補う)、温陽(体を温める)といった「補法」が基本。
  • 実なら瀉す
    邪気を取り除く、停滞を解消する「瀉法」が主軸。理気(巡りを良くする)、化痰(痰を溶かす)、活血(血流を促す)、清熱(熱を冷ます)など。

たとえば「疲れているから滋養強壮薬を飲む」と思っても、実際は痰湿や瘀血が原因なら逆効果になる可能性もあります。だからこそ虚実の判定は治療の入り口で最重要なのです。

本稿の読み方(一般の方/専門家向け)

  • 一般の方:セルフチェックにより「私は虚タイプかな?実タイプかな?」を判断できるように。薬膳食材や腸活の工夫も紹介。
  • 専門家(薬剤師・鍼灸師など):四診(望・聞・問・切)での虚実の読み方を整理し、臨床での弁証精度を高めるために活用。

八綱の全体像と虚実の位置づけ

八綱弁証(はっこうべんしょう)は、中医学の診断フレームワークの基本です。

陰陽・表裏・寒熱・虚実という4組の対立概念から病態を整理し、適切な治療方針を導きます。

その中でも「虚実」は、治法の方向性(補か瀉か)を直ちに決めるため、最も実用的で重要な軸といえます。

陰陽・表裏・寒熱・虚実:4軸の関係

八綱をひとつの地図にたとえると、下記のようになります。

八綱の区分判定の基準主な特徴
陰陽全体的な性質陽=外向き・活動・熱/陰=内向き・静・冷陽虚、陰虚、陰盛、陽盛
表裏病位(病の位置)表=体表・初期症状/裏=内臓・深部症状感冒初期(表)、胃腸炎(裏)
寒熱性質の温度感寒=冷え・収縮/熱=炎症・発熱・充血冷え症、発熱・炎症
虚実体力と邪気のバランス虚=不足/実=停滞・過剰気虚(疲労)、痰湿や瘀血(停滞)

この表からわかるように、虚実は「体のエネルギーの有無と、病邪の強さ」を直接示す軸。

したがって、八綱全体のなかで最も治療に直結する基準なのです。

なぜ虚実から決めると迷いが減るのか

実際の臨床やセルフケアでは、「陰陽・表裏・寒熱」は複雑に入り組みます。

たとえば、

  • 陰虚で熱っぽい(虚+熱)
  • 本虚標実(体は虚弱だが、局所に実邪がある)

など、混合タイプがほとんどです。

しかし、「虚実」だけはまず大きく二分できます。

つまり、虚なら補う/実なら瀉すという大原則があるため、方針をすぐに立てやすいのです。

具体例で理解する「虚実の整理」

症例誤判定正しい虚実判定治法の方向性
疲労・食欲不振・舌淡実証と誤解して清熱剤を使用気虚による虚証補気(例:四君子湯)
胸の張り・便秘・苔厚膩虚証と誤解して補薬を多用気滞・痰湿による実証瀉法・理気化痰(例:二陳湯)

このように、虚実の誤判定は「逆方向の薬」を選ぶことになり、改善を妨げるどころか悪化させる恐れもあります。


臨床で「虚実」を決める目的

中医学における八綱弁証は、単なる分類作業ではなく、治療の道筋を決める羅針盤です。

そのなかで「虚実」を決定することは、臨床現場・セルフケアの両方において重要な意味を持ちます。

治則治法:「虚→補」「実→瀉」の骨組み

治療の大原則はシンプルです。

  • 虚証(不足)
    → 補う(補気・補血・滋陰・温陽)
  • 実証(停滞・過剰)
    → 瀉す(理気・化痰・活血・清熱・通便)

これを「治則治法」と呼び、診断から治療方針を決める最短ルートになります。

治則治法の整理表

虚実タイプ治則代表的な方剤例薬膳アプローチ
気虚補気四君子湯、補中益気湯山薬・蓮子・大棗
血虚補血四物湯、帰脾湯黒豆・竜眼肉・ほうれん草
陰虚滋陰六味丸、知柏地黄丸百合・梨・クコの実
陽虚温陽八味地黄丸、右帰丸羊肉・生姜・にら
気滞理気柴胡疏肝散、香蘇散、四逆散陳皮・春菊・みかん
痰湿化痰・利湿二陳湯、平胃散はとむぎ・大根・昆布
瘀血活血桂枝茯苓丸、桃核承気湯紅花・黒木耳・玉ねぎ
実熱清熱・通便白虎湯、大承気湯、黄連解毒湯ゴーヤ・緑豆・大根葉

この表のように、虚実判定はそのまま「治療メニュー選び」に直結します。

誤判定すれば全く逆方向の治法を取ってしまう危険性があります。

誤判定のコスト(遷延・副反応・離脱)

虚実を間違えると、次のようなリスクが生じます。

  1. 治療が遷延する
    • 本来「補うべき体」に清熱瀉火をかけると、余計に消耗して改善が遅れる。
  2. 副反応が出やすい
    • 虚証に下剤系を誤投与すると下痢や体力低下を招く。
    • 実証に滋養強壮剤を与えると、痰湿や便秘が悪化する。
  3. 患者が離脱する
    • 「漢方は効かない」という誤解を招き、継続できない。

誤判定の具体例

状況誤った弁証結果
慢性疲労・軟便・舌淡実証と判定清熱剤でさらに虚弱化
胸脇痛・便秘・苔厚膩虚証と判定補薬で痰湿悪化・頭痛持続

このように、虚実の誤りは「効かない」だけではなく「悪化」につながるため、臨床における最重要ポイントになります。


四診で虚実を読む①──問診

「四診(ししん)」とは、望診・聞診・問診・切診のこと。

中医学ではこれらを組み合わせて総合的に体質を判断します。

その中でも最も日常的で応用しやすいのが「問診」です。

問診では、症状の出方・生活習慣・消化や睡眠の状態を詳しく尋ねることで、虚証か実証かを見極めていきます。

主訴の性質と経過(急性か慢性か)

  • 虚証:症状が長く続き、じわじわと悪化する。疲労や倦怠感が中心。
  • 実証:症状が急に出現し、痛みや不快感が強い。短期間で激しい表れがある。

  • 「慢性的に疲れて食欲がない」=虚
  • 「急にお腹が張って痛く、便秘になった」=実

食・睡・便・尿・月経/性・ストレス・環境

問診で特に重要な生活のキーワードは以下の通りです。

項目虚証のサイン実証のサイン
食欲食べられない・すぐ満腹・食後にだるい食べすぎ・口臭・胃もたれが強い
睡眠入眠困難・夢が多い・途中覚醒いびき・眠ってもすっきりしない
便通軟便・下痢・便秘でも力が弱い硬便・便秘・残便感・排便困難
尿頻尿・夜間尿・尿が薄い尿が濃い・排尿痛・尿量少ない
月経(女性)量が少ない・遅れる・色が淡い塊が多い・痛み強い・色が紫暗
精神情緒不安・無気力・気持ちが落ちるイライラ・怒りっぽい・せっかち
環境反応季節の変化に弱い・冷えやすい気候の変化に過敏・熱や湿に反応

土王説の視点:食後のだるさ・膨満・軟便=虚サイン

中医学の「土王説」では、脾胃(消化器系)が全身のエネルギーを生み出す中心と考えます。

脾胃が弱ると、以下のような虚証サインが出やすくなります。

  • 食後に眠くなる
  • 少しの食事で胃もたれ
  • 軟便・未消化便が出る

一方で、脾胃に実邪がたまると「痰湿」や「食積」として重だるさ・便秘・腹満などの実証サインが現れます。


四診で虚実を読む②──望診(舌)

望診の中でも「舌診」は、中医学で最も重視される診断法のひとつです。

舌は「体の鏡」と呼ばれ、血液循環・消化吸収・水分代謝の状態がそのまま反映されるからです。

特に虚実の判定において、舌の色・形・苔(たい)を観察することは非常に有効です。

虚を示しやすい舌の特徴

虚証では、エネルギーや血の不足が舌に現れます。

  • 舌質(舌の色・形):淡い(血虚)、胖大で歯痕あり(脾気虚)、紅くて痩せている(陰虚)
  • 舌苔:薄い、または少ない。無苔に近づくと消化吸収力の低下を示す。

例:

  • 食後すぐ疲れる、軟便 → 舌が淡く歯痕あり(脾気虚)
  • のぼせ・寝汗 → 舌が赤く苔が少ない(陰虚)

実を示しやすい舌の特徴

実証では、余分な邪気(痰湿・瘀血・熱)が停滞するため舌に濃い変化が出ます。

  • 舌質:紅(実熱)、紫暗(瘀血)、硬く腫れた感じ(痰湿)
  • 舌苔:厚い・黄苔・膩苔(ねばねば)など。

例:

  • 便秘・口臭・吹き出物 → 舌が紅で黄苔厚(実熱)
  • 慢性頭痛・刺すような痛み → 舌が紫暗(瘀血)

舌苔と腸内環境(腸活との関連)

舌苔の状態は、腸内環境のバロメーターともいえます。

  • 白苔(薄い):健康または軽度の虚証
  • 白苔(厚い):痰湿が停滞、腸内発酵が過剰
  • 黄苔:熱がこもる、腸内の炎症や便秘傾向
  • 無苔:腸内細菌バランス低下、消化酵素不足、リーキーガット傾向

舌苔のタイプ表(虚実判定)

舌苔の状態虚証の目安実証の目安
薄白苔気血不足、軽い冷え
無苔陰虚、消化力低下
厚白苔脾胃虚弱+痰湿痰湿停滞・食積
黄苔実熱・炎症
膩苔(ねばねば)痰湿・食滞

四診で虚実を読む③──聞診

「聞診」とは、声・におい・呼吸・発汗・口渇など五感を通じて得られる情報から体質を読み取る方法です。

西洋医学でいう「バイタルサインの観察」にも近く、虚実を見分ける重要な手がかりになります。

声の張りと発汗の状態

  • 虚証:声が小さく、弱々しい。話すだけで疲れる。発汗は自汗(軽い労作で汗が出る)や盗汗(寝汗)が多い。
  • 実証:声が大きく強い。喧嘩腰のように張りがある。発汗は局所的で臭いを伴うことも。

例:

  • 会話の声が細く聞き取りにくい → 気虚傾向(虚)
  • 怒ると声が大きくなる、汗がベタベタ臭う → 肝鬱化火・痰湿(実)

におい・口渇の訴え

  • 虚証:においは弱い、もしくは無臭に近い。口渇はあるが水を多く飲めない(陰虚)。
  • 実証:体臭・口臭が強い。特に胃腸系に熱や停滞がある場合、発酵臭や酸臭が強まる。喉が渇いて冷たい水を欲しがる。

聞診チェック表

項目虚証実証
小さい・弱々しい・息切れ大きい・強い・荒い
自汗・盗汗臭い汗・局所的な多汗
体臭弱い・ほとんどない強い・酸臭・発酵臭
口渇口は乾くが多く飲めない冷水を欲しがる・口臭あり

発汗・腸内発酵の過多=実サイン

腸内環境は「聞診」にも反映されます。

  • 虚証:腸内フローラが乏しく、ガスは少なく無臭。
  • 実証:腸内で発酵が過剰になり、ガス臭が強い。便臭・口臭にもつながる。

つまり、腸活を行う際には「虚なら菌や発酵を足す」「実ならまず滞りを除去する」という方向性が導けます。

四診で虚実を読む④──切診(脈・腹)

切診とは、脈や腹部を触れて体の内部状態を読み取る方法です。

虚実の判定においては、脈の強弱・速さ・質感、そしてお腹の硬さ・抵抗・圧痛が重要な手がかりになります。

虚に多い脈・腹の特徴

  • 脈診
    • 脈が弱い(無力感がある)
    • 細い(血虚)
    • 沈んで触れにくい(陽虚)
  • 腹診
    • お腹全体が柔らかい
    • 押すと抵抗なく沈む
    • 水音(振水音)がある場合は脾胃虚弱+水湿停滞

実に多い脈・腹の特徴

  • 脈診
    • 強く張りがある(実脈)
    • 弦脈(張った弦のように硬い:肝気鬱結)
    • 滑脈(珠が転がるように滑らか:痰湿)
    • 数脈(速い脈:熱証)
  • 腹診
    • 硬く張っている(腹満)
    • 押すと痛みが強い(圧痛点)
    • 固定したしこり(瘀血)

脈腹合参でブレを最小に

虚実の判定は「脈診」「腹診」を合わせて見ることで、精度が高まります。

脈腹合参の例

状態脈診腹診判定
疲労・下痢細弱・沈軟・振水音虚証(脾気虚+水湿)
頭痛・便秘弦・数硬・圧痛実証(肝鬱+熱証)
不眠・のぼせ細速軽い張り虚中有実(陰虚+肝気鬱結)

腸活との関連

  • 虚証タイプ → 腹が柔らかく水音あり → 消化吸収力が低く、プロバイオティクスよりまずはプレバイオティクスで土台強化。
  • 実証タイプ → 腹部硬満・便秘 → 余剰を流す(デトックス食材、理気・化痰の茶類)を優先。

虚証の全体像──気・血・陰・陽の不足パターン

虚証(きょしょう)とは、体に必要なエネルギーや栄養が不足している状態です。

中医学では大きく分けて「気虚・血虚・陰虚・陽虚」の4タイプがあります。

それぞれの虚証を理解することで、正確なタイプ判定と適切なケアにつながります。

気虚(ききょ)

  • 主な特徴:疲れやすい、息切れ、食後にだるい、声が小さい
  • 舌脈:舌が淡く歯痕あり/脈は弱い
  • 生活背景:過労・偏食・消化力低下
  • 薬膳例:山薬、蓮子、大棗、長芋、鶏肉

血虚(けっきょ)

  • 主な特徴:めまい、顔色が青白い、動悸、不眠、爪が割れやすい
  • 舌脈:舌が淡く、血色が乏しい/脈は細い
  • 生活背景:月経過多・慢性出血・栄養不足
  • 薬膳例:黒豆、竜眼肉、ほうれん草、なつめ

陰虚(いんきょ)

  • 主な特徴:寝汗、ほてり、のどが渇く、皮膚や粘膜の乾燥
  • 舌脈:舌が赤く苔が少ない/脈は細速
  • 生活背景:長期の熱病、過度のストレス、不規則な生活
  • 薬膳例:百合、梨、クコの実、豆腐、白きくらげ

陽虚(ようきょ)

  • 主な特徴:冷え、下痢、むくみ、元気が出ない
  • 舌脈:舌が淡く腫れぼったい/脈は沈弱
  • 生活背景:冷飲食の摂りすぎ、慢性病、老化
  • 薬膳例:羊肉、生姜、にら、シナモン、くるみ

虚証4タイプの比較表

タイプ主な症状薬膳例
気虚疲れやすい、息切れ、食後だるい淡・歯痕あり弱い山薬・長芋・鶏肉
血虚めまい、不眠、顔色不良淡・血色乏しい細い黒豆・竜眼肉
陰虚ほてり、寝汗、乾燥赤く苔少細速百合・クコの実
陽虚冷え、下痢、むくみ淡・腫れ沈弱羊肉・生姜

実証の全体像──邪実・停滞パターン

実証(じっしょう)とは、体の中に余分なものが停滞している状態を指します。

体力が充実していても「巡りが悪い」「邪気がこもる」ことで、痛みや熱、張りなど強い症状が出やすくなります。

虚証が「不足」なら、実証は「過剰・停滞」です。

気滞(きたい)・肝鬱(かんうつ)

  • 特徴:胸や脇の張り、のどの詰まり、ため息、イライラ
  • 舌脈:舌は紅または正常、苔は薄い/脈は弦脈(張った弦のよう)
  • 薬膳例:陳皮、みかん、春菊、しそ

痰湿(たんしつ)

  • 特徴:体が重だるい、痰が多い、めまい、浮腫、肥満傾向
  • 舌脈:舌が胖大、厚膩苔(ねばねば)/脈は滑脈
  • 薬膳例:はとむぎ、大根、昆布、緑豆

瘀血(おけつ)

  • 特徴:刺すような痛み、固定痛、月経血に塊、シミやくすみ
  • 舌脈:舌が紫暗・瘀点あり/脈は渋脈(ぎざぎざ感)
  • 薬膳例:紅花、黒木耳、玉ねぎ、黒酢

実熱(じつねつ)・食積

  • 特徴:口臭、便秘、のどの渇き、吹き出物、発熱
  • 舌脈:舌が紅で黄苔厚/脈は数脈(速い)
  • 薬膳例:ゴーヤ、緑豆、セロリ、大根葉

実証の比較表

タイプ主な症状薬膳例
気滞張る痛み、ため息、イライラ紅〜正常、苔薄弦脈陳皮・春菊
痰湿重だるい、痰、浮腫、肥満胖大・厚膩苔滑脈はとむぎ・大根
瘀血刺痛・固定痛、月経血塊紫暗・瘀点渋脈紅花・黒木耳
実熱便秘、口臭、吹き出物紅・黄苔厚数脈ゴーヤ・緑豆

腸活との関連

  • 気滞 → 腸の蠕動低下、ガス停滞 → 香り野菜・温かいお茶で巡り改善
  • 痰湿 → 腸内での水分停滞・過剰発酵 → 穀類・豆類・海藻で排湿
  • 瘀血 → 腸粘膜の血流不良 → 発酵食品+活血食材で微小循環改善
  • 実熱 → 腸の炎症傾向 → 緑豆・ゴーヤなどの清熱薬膳でクールダウン

虚実錯雑/寒熱錯雑/半表半裏の交絡

中医学では「虚証」「実証」と単純に分けられないケースが多々あります。

これを錯雑証(さくざつしょう)といい、治療方針を誤らないためには「本と標」を分けて考える必要があります。

本虚標実(ほんきょひょうじつ)

体質は虚弱(虚証)だが、一時的に邪気が強く現れているパターン。

  • :慢性の脾気虚を背景に、食べ過ぎで食積・便秘を起こす。
  • 舌脈:舌は淡(虚)、苔は厚い(実)
  • 方針:基本は補気健脾、急性症状には通便・消導を併用

本実標虚(ほんじつひょうきょ)

体質は実証寄りだが、消耗して虚が表れるパターン。

  • :ストレスで肝気鬱結(実)→長期化で気血消耗し血虚不眠(虚)。
  • 舌脈:舌は紅暗(実)、全体は痩せ傾向(虚)
  • 方針:まず実を緩め(疏肝理気)、その後に補血安神を併用

寒熱錯雑(かんねつさくざつ)

寒証と熱証が入り混じる。

  • :下半身は冷えるが、上半身はのぼせ・口渇(陰虚+虚熱)。
  • 治法:温めすぎないよう注意しつつ、上下を調和させる。

半表半裏(はんぴょうはんり)

病邪が「体の表」と「内側」の間にとどまり、寒熱や虚実が混じり合う。

  • :悪寒と発熱が同時にある/往来寒熱(寒さと熱が交互)。
  • 治法:和解少陽(小柴胡湯など)が代表。

錯雑証の整理表

パターン特徴治法の方向性
本虚標実体は虚、局所は実慢性胃弱+食積便秘補気+消導
本実標虚体は実、消耗で虚肝鬱+血虚不眠疏肝+補血
寒熱錯雑冷えと熱が混在下半身冷え+上半身のぼせ調和温凉
半表半裏表裏の間に病邪往来寒熱、小柴胡湯証和解少陽

消化器(脾)と虚実──「土王説×腸活」で根本から

宮崎県川南町の漢方薬局ほどよい堂での漢方相談風景|土王説に基づいた腸活アドバイスの様子

中医学では「脾(ひ)」=消化器系(胃腸)が生命活動の土台とされ、後天の本(こうてんのもと)と呼ばれます。

土王説では、脾が五臓六腑の中心にあってエネルギー(気血水)を生み出す要と考えます。

現代でいう腸内環境や消化吸収機能の働きと重なり、「腸活」との親和性が非常に高いのです。

脾を虚実の「ハブ」として捉える

  • 虚証パターン
    • 脾気虚:食欲不振、食後の倦怠、軟便
    • 脾陽虚:冷え、下痢、むくみ
  • 実証パターン
    • 痰湿:消化不良、胃もたれ、重だるさ、肥満傾向
    • 食積:暴飲暴食後の腹満・便秘

つまり、脾は虚実の両方を抱えやすい臓腑であり、判定の中心軸になります。

リーキーガット仮説と中医学の整合点

リーキーガット症候群(腸漏れ)では、腸粘膜バリアの弱まりによって炎症や免疫過剰が起こります。

  • 中医学での対応
    • 脾虚 → バリア機能低下・消化力不足
    • 痰湿・湿熱 → 腸内環境悪化・炎症
    • 気滞・瘀血 → 腸粘膜の血流不良

→ つまり、リーキーガットは「虚と実が錯雑した腸トラブル」として理解できます。

脾を立て直す生活:咀嚼30回・温食・味噌汁・野菜スープ

脾を健やかに保つ=腸活の実践です。

脾虚(虚証)の養生

  • よく噛む(1口30回)
  • 温かい食事(冷たい飲み物を避ける)
  • 穀類・豆類・根菜・甘味のある野菜

痰湿(実証)の養生

  • 油っぽい食事を控える
  • 発酵食品(味噌・納豆・キムチ)で巡りを良くする
  • 野菜スープや香味野菜で消化を助ける

脾虚・痰湿の対比表(腸活目線)

タイプ主な症状食習慣腸活の工夫
脾虚食欲不振、軟便、疲れやすい少食・冷たい飲食温かい汁物・穀類・発酵食品
痰湿胃もたれ、便秘、体重増加脂っこい・甘いもの過多食物繊維・香味野菜・軽い運動

タイプ別セルフチェック(虚/実)

虚実判定を臨床レベルで正確に行うには四診(望・聞・問・切)が不可欠ですが、日常的な目安としてセルフチェック表を活用するのも有効です。

ここでは、代表的な質問項目を「虚タイプ」と「実タイプ」に分けて整理しました。

5分自己判定:虚タイプチェックリスト

以下の質問で 3つ以上YESなら虚証傾向 です。

質問YES/NO
すぐに疲れて休みたくなる
食後に眠くなることが多い
顔色が青白い・血色が悪い
声が小さく、弱々しいと感じる
手足が冷えやすい
めまい・立ちくらみが起こる
寝汗をかきやすい
下痢や軟便が多い

→ このタイプは エネルギーや栄養が不足(気血陰陽の虚) している可能性が高く、補うケア(補気・補血・滋陰・温陽)が必要です。

5分自己判定:実タイプチェックリスト

以下の質問で 3つ以上YESなら実証傾向 です。

質問YES/NO
胸やお腹が張って苦しい
便秘・残便感がある
痰が多く、のどに絡む
イライラしやすく怒りっぽい
顔や体が赤らみやすい
汗や体臭が強いと感じる
頭痛や肩こりが強く出る
舌の苔が厚く、ベタつく

→ このタイプは 余分なものが体に滞っている(気滞・痰湿・瘀血・実熱) 可能性が高く、取り除くケア(理気・化痰・活血・清熱)が必要です。


ポイント

  • 虚実は一方向だけでなく変化する
     長期の実証が虚証に転じることもあれば、虚証が続いて実邪を招くこともあります。
  • セルフチェックはあくまで目安
     詳しい判定は専門家による四診(舌・脈・腹など)での確認が必要です。

「虚実」判定フローチャート(テキスト版)

虚実の判定は、問診・望診・切診を総合して決めるのが基本ですが、セルフチェックとして簡易的に使えるテキスト版フローチャートを紹介します。

入り口→分岐→確証の取り方

  1. 症状の強さを確認
    • 急に強く出ている → 実証の可能性大
    • じわじわ慢性的 → 虚証の可能性大
  2. 疲労感の有無
    • 少し動くだけで疲れる → 虚証
    • エネルギーはあるが詰まり感が強い → 実証
  3. 食欲・消化の様子
    • 少食・食後だるい・軟便 → 虚証(脾気虚)
    • 胃もたれ・便秘・ガス・厚い苔 → 実証(痰湿・食積)
  4. 舌・脈の特徴
    • 舌淡・薄苔・脈弱 → 虚証
    • 舌紅紫・厚苔・脈弦実 → 実証

迷ったときの保留ライン

  • 混在タイプ(虚実錯雑)は少なくありません。
    例:脾気虚がベース(虚)+食積による便秘(実)。

その場合は「まず邪を去り、その後補う」が基本方針です。
→ つまり「急性の実邪を除去 → 長期的に虚を補う」という順序が望ましいです。

虚実判定フローチャート(簡易テキスト)

強い急な症状あり? → YES → 実証
                        → NO → 慢性的な疲労?
                                     → YES → 虚証
                                     → NO → 舌苔厚い?脈強い?
                                                  → YES → 実証
                                                  → NO → 虚証

治則治法と代表的な方剤・サプリ導線

虚実判定の目的は、治則治法(治療の方向性)を決めることにあります。

シンプルにまとめると、

  • 虚証 → 補う(補法)
  • 実証 → 瀉す(瀉法)

という原則に従います。

ここでは代表的な方剤・薬膳食材・腸活サプリを具体的に示します。

虚証タイプ:補うケア

治則

  • 補気(気を養う)
  • 補血(血を養う)
  • 滋陰(潤いを補う)
  • 温陽(体を温める)

代表的な方剤

  • 四君子湯:気虚の基本方剤
  • 帰脾湯:気血両虚・不眠・健忘
  • 六味丸:腎陰虚・ほてり・寝汗
  • 右帰丸:腎陽虚・冷え・疲労

薬膳例

  • 山薬、蓮子、黒豆、クコの実、羊肉、生姜

腸活サプリ導線

  • プロバイオティクス+プレバイオティクスを併用
  • 消化力を補うため、発酵食品や水溶性食物繊維を重視

実証タイプ:取り除くケア

治則

  • 理気(巡りを良くする)
  • 化痰(痰を除く)
  • 活血(血の滞りを除く)
  • 清熱・通便(炎症や便秘を取る)

代表的な方剤

  • 柴胡桂枝湯:半表半裏証、気滞
  • 二陳湯:痰湿の停滞
  • 桃核承気湯:瘀血と便秘
  • 清上防風湯:実熱による皮膚炎

薬膳例

  • はとむぎ、大根、セロリ、ゴーヤ、紅花、玉ねぎ

腸活サプリ導線

  • デトックス系のバイオジェニックス(クロレラバイオリンク、玄米×麴など)
  • 瀉下や清熱を優先し、不要なものを掃除してから整える

腸活と虚実の合わせ技

  • 虚証の腸活:まず「補う」ことが優先 → 消化力の底上げ
    • 温かい味噌汁、野菜スープ
    • プレバイオティクス食品(オリゴ糖・海藻)
  • 実証の腸活:まず「掃除」してから → 停滞を流す
    • 野菜・果物の食物繊維
    • 苦味・辛味のある食材で巡り改善

虚実別アプローチまとめ表

タイプ治則代表方剤薬膳例腸活の工夫
虚証補気・補血・滋陰・温陽四君子湯・帰脾湯・六味丸山薬・クコ・羊肉プレ+プロで消化を補強
実証理気・化痰・活血・清熱二陳湯・桃核承気湯・清上防風湯はとむぎ・ゴーヤ・紅花デトックス系バイオジェニックス

症例ペルソナ① 夜職女性:不眠×胃もたれ(本虚標実)

病態把握:脾気虚+肝鬱・痰湿

ペルソナ設定

  • 属性:28歳・ナイトワーク従事(キャバクラ勤務)
  • 生活背景:強い照明・音楽・接客ストレス、深夜の食事(アルコール・脂っこい食べ物)、昼夜逆転生活
  • 主訴:寝つけない・眠りが浅い、翌朝も疲れが取れない。胃もたれ、食後の膨満感。

中医学的整理

  • 本(基礎体質):脾気虚(消化吸収力が弱くエネルギー不足)
  • 標(現れた症状):肝気鬱結+痰湿停滞(ストレス+飲酒で気滞・痰湿が増加)
  • 八綱弁証:虚証(本体)+実証(局所停滞)= 本虚標実

方針:補脾気+理気化痰+睡眠衛生&腸活

治則治法

  • 補気健脾:脾を立て直し、気を養う
  • 理気化痰:ストレスで滞った気を流し、痰湿を取り除く
  • 安神:睡眠の質を改善する

代表的な方剤

  • 帰脾湯:気血を補い、睡眠不安・不眠を改善
  • 香蘇散:気滞を和らげ、ストレス性の胃腸症状に
  • 二陳湯:痰湿を取り、胃のもたれを解消

薬膳アドバイス

  • 脾虚向け:山薬・蓮子・大棗・鶏ささみ・白米粥
  • 痰湿向け:大根・はとむぎ・昆布・陳皮・生姜
  • 夜遅い食事は「消化に優しいスープ系」を中心にし、揚げ物やアルコールは控える

腸活導線

  • 虚証対応:プレバイオティクス重視(食物繊維・発酵食品)で腸内環境を支える
  • 実証対応:停滞を掃除するためクロレラ・玄米酵素などのデトックス系を併用

ペルソナ症例まとめ表

項目内容
年齢・背景28歳・夜職勤務(キャバクラ)
主な症状不眠、浅眠、胃もたれ、食後膨満感
弁証本虚標実(脾気虚+肝鬱・痰湿)
方針補気健脾+理気化痰+安神
方剤例帰脾湯・香蘇散・二陳湯
薬膳例山薬・大棗・鶏肉/大根・はとむぎ・昆布
腸活プレバイオティクス強化+デトックスサポート

症例ペルソナ② ITエンジニア男性:頭痛×便秘(実熱×気滞)

病態把握:肝鬱化火+腸燥

ペルソナ設定

  • 属性:35歳男性・ITエンジニア
  • 生活背景:長時間のデスクワーク、夜遅い食事、運動不足。カフェイン多用。
  • 主訴:頭痛が頻発し、便秘気味。イライラしやすい。

中医学的整理

  • 本(体質傾向):肝気鬱結(ストレスで気が滞る)
  • 標(症状):鬱熱がこもって「実熱」→腸の潤い不足で便秘(腸燥)
  • 八綱弁証:実証(気滞+実熱)

方針:清熱疏肝+潤腸通便+姿勢・水分・食物繊維

治則治法

  • 疏肝理気:ストレスで滞った肝気を流す
  • 清熱:熱を冷まし、頭痛やイライラを鎮める
  • 潤腸通便:便秘を解消する

代表的な方剤

  • 柴胡清肝湯:肝鬱化火の頭痛・目赤・イライラに
  • 大承気湯:強い便秘に用いる代表方剤
  • 潤腸湯:便秘だが虚実中間タイプに(滋陰+通便)

薬膳アドバイス

  • 清熱理気系:セロリ、春菊、ミント、菊花茶
  • 潤腸通便系:ごま、くるみ、はちみつ、バナナ
  • 避けるべきもの:唐辛子、アルコール、カフェイン過剰

腸活導線

  • 実証対応:まず停滞を解消 → 食物繊維(水溶性+不溶性)を組み合わせる
  • 便秘ケア:発酵食品(納豆・ヨーグルト)より、まず野菜・海藻・水分で通便を整える

ペルソナ症例まとめ表

項目内容
年齢・背景35歳男性・ITエンジニア
主な症状頭痛、便秘、イライラ
弁証実証(肝鬱化火+腸燥)
方針清熱疏肝+潤腸通便
方剤例柴胡清肝湯・大承気湯・潤腸湯
薬膳例セロリ・菊花・ごま・はちみつ
腸活食物繊維+デトックス優先(クロレラバイオリンク)

症例ペルソナ③ 更年期女性:のぼせ×不安(陰虚×気滞)

病態把握:腎陰虚ベース+肝気鬱結

ペルソナ設定

  • 属性:52歳女性・会社員
  • 生活背景:更年期を迎え、仕事や家庭の両立でストレス多め。寝つきが悪く、のぼせやほてりを感じる。気分が不安定でイライラすることも。
  • 主訴:のぼせ、動悸、不安感、睡眠障害。

中医学的整理

  • 本(基礎体質):腎陰虚 → 陰液不足で、体を冷ます力が低下
  • 標(現れた症状):肝気鬱結 → ストレスで気滞、情緒不安や胸脇の張り
  • 八綱弁証:虚証(陰虚)+実証(気滞)= 虚実錯雑タイプ

方針:滋陰潜陽+疏肝解鬱+睡眠・呼吸・温凉バランス

治則治法

  • 滋陰潜陽:陰を補い、のぼせ・ほてりを和らげる
  • 疏肝解鬱:気滞を流し、不安やイライラを鎮める
  • 安神:不眠や不安を緩和する

代表的な方剤

  • 六味丸/知柏地黄丸:腎陰虚のほてり・のぼせ
  • 加味逍遙散:更年期の情緒不安、ストレス性の気滞
  • 酸棗仁湯:不眠・不安・心神不安

薬膳アドバイス

  • 滋陰食材:百合、クコの実、豆腐、白きくらげ、黒ごま
  • 疏肝解鬱食材:陳皮、みかん、しそ、春菊
  • 控えるもの:辛いもの・アルコール・夜更かし

腸活導線

  • 陰虚対応:腸粘膜の潤いを守るために水溶性食物繊維(オートミール、海藻)
  • 気滞対応:香りのあるハーブ・柑橘類で巡りをサポート

ペルソナ症例まとめ表

項目内容
年齢・背景52歳女性・更年期・会社員
主な症状のぼせ、不安、不眠、イライラ
弁証虚実錯雑(腎陰虚+肝気鬱結)
方針滋陰潜陽+疏肝解鬱+安神
方剤例六味丸・加味逍遙散・酸棗仁湯
薬膳例百合・黒ごま・陳皮・春菊
腸活水溶性食物繊維+香味野菜

食養生・薬膳──虚実別の素材と献立の考え方

虚実を見極めた後に最も身近にできるケアが食養生(薬膳)です。

「不足を補う」「停滞を取り除く」という八綱弁証の基本を、毎日の食材選びに落とし込むことで、自然に体質改善へとつながります。

虚証向けの食養生

虚証タイプは「足りない」ことがベースなので、滋養・補養の食材を少しずつ、消化の良い形で摂ることが大切です。

  • 補気:山薬、蓮子、大棗、白米、鶏ささみ
  • 補血:黒豆、竜眼肉、レバー、クコの実
  • 滋陰:百合、豆腐、白きくらげ、梨
  • 温陽:羊肉、生姜、にら、シナモン

献立例(虚証向け)

  • 朝:白米粥+山薬+クコの実
  • 昼:鶏ささみと根菜の煮物
  • 夜:羊肉と生姜のスープ、黒豆ごはん

実証向けの食養生

実証タイプは「余分なものが滞る」ため、巡りを良くし、デトックスする食材が基本。

消化負担を減らすことも大切です。

  • 理気:陳皮、春菊、みかん、しそ
  • 化痰利湿:はとむぎ、大根、昆布、緑豆
  • 活血:紅花、黒木耳、玉ねぎ、黒酢
  • 清熱通便:ゴーヤ、セロリ、白菜、海藻

献立例(実証向け)

  • 朝:大根おろし+納豆ごはん
  • 昼:セロリと春菊のサラダ、はとむぎスープ
  • 夜:ゴーヤチャンプルー、黒木耳と玉ねぎの炒め物

共通する調理のポイント

  • よく噛む(1口30回):脾胃を守り、消化吸収を助ける
  • 温かい汁物を毎日:味噌汁・野菜スープは虚実どちらにも有効
  • 旬の食材を活用:身土不二の考えに基づき、地元・季節の野菜を中心に

虚実別・食養生の比較表

タイプ基本原則主な食材献立例
虚証補って滋養山薬・黒豆・百合・羊肉粥・煮物・温スープ
実証巡らせて掃除陳皮・はとむぎ・紅花・ゴーヤ大根おろし・サラダ・炒め物

腸活と虚実──プロバイオ・プレバイオ・バイオジェニックスの使い分け

腸活(ちょうかつ)は健康トレンドとして定着していますが、中医学的に虚実を見極めたうえで取り入れることで、より効果的に働きます。

腸活の三本柱は以下の3つです。

  • プロバイオティクス:腸に直接「善玉菌」を届ける
  • プレバイオティクス:腸内の善玉菌のエサになる食物繊維・オリゴ糖
  • バイオジェニックス:乳酸菌生産物質や菌体成分そのものが免疫調整や抗酸化に働く(例:クロレラBCEx、ビファインF)

虚証タイプと腸活

虚証の人は「足りない」ことがベース。腸内細菌も不足している傾向があります。

  • 気虚・脾虚
    • 消化力が弱い → プレバイオティクス(食物繊維・オリゴ糖)で土台を強化
    • 発酵食品は少量から(納豆・味噌汁)
  • 血虚・陰虚
    • 潤い不足 → 水溶性食物繊維(海藻・オートミール)+発酵食品
    • バイオジェニックス(クロレラBCEx)で粘膜保護をサポート

実証タイプと腸活

実証の人は「余分なものが溜まっている」傾向があり、菌を足すよりもまず掃除が必要です。

  • 気滞・痰湿
    • ガス・便秘・胃もたれ → 食物繊維で停滞を流す(ごぼう・キャベツ)
    • デトックス系バイオジェニックス(クロレラバイオリンク・玄米×麴)で掃除
  • 瘀血・実熱
    • 便秘・口臭・吹き出物 → 清熱・通便の薬膳(ゴーヤ・セロリ)
    • プロバイオは炎症が落ち着いてから導入

腸活導線の組み合わせ方

  • 虚証 → 足してから整える
    → プレバイオ+少量のプロバイオで土台を強くする
  • 実証 → 掃除してから整える
    → バイオジェニックス+食物繊維で滞りを取った後、プロバイオを導入

虚実別 腸活マップ表

タイプ腸活の優先順位推奨食品/サプリ
虚証(気虚・血虚・陰虚・陽虚)プレバイオ → プロバイオ → バイオジェニックス味噌汁・納豆・オートミール・クロレラBCEx、玄米×麴
実証(気滞・痰湿・瘀血・実熱)バイオジェニックス → 食物繊維 → プロバイオクロレラバイオリンク・玄米×麴・ごぼう・ゴーヤ

虚実判定を誤ったときのリスクとリカバリー法

虚実の判定は中医学の核心です。

しかし、臨床でもセルフケアでも「虚を実と見誤る」「実を虚と勘違いする」ことは起こり得ます。

ここでは誤判定のリスクと、その後のリカバリーの方法を整理します。

虚を実と誤った場合

  • 想定ケース
    • 本当は「脾気虚(虚)」なのに、実証と判断して清熱剤や下剤を使用。
  • 起こりやすいリスク
    • 体力低下、下痢、疲労感の悪化
    • 「漢方は効かない」と感じて中断
  • リカバリー法
    • 服薬・食養生を一時休止し、白湯・温かい粥などで脾胃を守る
    • 補気・補血系の薬膳(山薬・大棗・鶏肉)を少量から再導入

実を虚と誤った場合

  • 想定ケース
    • 本当は「痰湿(実)」なのに、虚証と誤判定して滋養強壮薬を使用。
  • 起こりやすいリスク
    • もたれ・便秘・ガス腹
    • 頭痛・湿疹など「余分」が悪化
  • リカバリー法
    • デトックス中心に切り替え(大根おろし・はとむぎ茶)
    • 化痰・利湿系の軽めの漢方(平胃散・二陳湯)を少量で様子を見る

誤判定を減らすためのセルフ工夫

  1. 舌と便を毎日観察する
    → 舌苔の厚さ・色、便通の性状は最も虚実が反映されやすい。
  2. 短期で判断しない
    → 1日での変化ではなく、1〜2週間の傾向を見て総合判断。
  3. 体力の反応を観察
    → 食後に元気が出るか?余計に疲れるか?で虚実の目安がつく。

専門家に相談するタイミング

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  • 不眠・便秘・頭痛などが 1ヶ月以上続くとき
  • 薬膳・漢方を試して 逆に症状が悪化したとき
  • 舌や体調の変化が 自己判断では整理できないとき

この場合は、専門家(薬剤師・鍼灸師・漢方医)に相談し、改めて虚実判定を受け直すことが最善です。

現代医学との接点──検査値・自覚症状とのリンク

八綱弁証での「虚実」は、あくまで東洋医学的な枠組みですが、現代医学の検査値や一般的な症状ともリンクさせることが可能です。

両者を併せて理解することで、より納得感を持って体質改善に取り組むことができます。

虚証とリンクしやすい検査・症状

  • 気虚
    • 検査所見:慢性の低血圧、軽度の貧血傾向
    • 症状:疲れやすい、立ちくらみ、息切れ
  • 血虚
    • 検査所見:鉄欠乏性貧血(ヘモグロビン低値、フェリチン低値)
    • 症状:顔色不良、めまい、爪が割れやすい、不眠
  • 陰虚
    • 検査所見:甲状腺機能亢進傾向、ホルモンバランスの乱れ
    • 症状:のぼせ、寝汗、乾燥肌、不安感
  • 陽虚
    • 検査所見:慢性低体温、基礎代謝低下、甲状腺機能低下症
    • 症状:冷え、むくみ、下痢、朝起きられない

実証とリンクしやすい検査・症状

  • 気滞
    • 検査所見:大きな異常は出にくいが、ストレス関連ホルモン高値
    • 症状:胸脇部の張り、頭痛、イライラ
  • 痰湿
    • 検査所見:高脂血症(中性脂肪・コレステロール高値)、BMI高め
    • 症状:体の重だるさ、痰が多い、めまい、肥満
  • 瘀血
    • 検査所見:血液粘稠度が高い、血小板高値、血栓傾向
    • 症状:刺痛、しびれ、シミや皮膚の色素沈着、冷えのぼせ
  • 実熱
    • 検査所見:炎症反応(CRP高値、白血球増加)
    • 症状:便秘、口臭、発熱、皮膚炎、のぼせ

虚実と健康診断を結びつける活用法

  1. 検査値に異常がなくても虚実は存在する
    • 例えば「疲労感が強いのに血液検査は正常」という場合でも、虚証(気虚・陰虚)が隠れていることは多い。
  2. 検査値の偏り=実証サインになりやすい
    • 高脂血症・高血圧・炎症マーカーなどは痰湿・実熱とリンクしやすい。
  3. 自覚症状と舌・脈の観察を組み合わせる
    • 体感と数値を統合することで「漢方的ケア」と「生活習慣改善」が両輪で進めやすくなる。

虚実×検査・症状リンク表

タイプ現代医学的関連主な症状
気虚低血圧・軽度貧血疲労・息切れ
血虚鉄欠乏性貧血顔色不良・不眠
陰虚ホルモン乱れのぼせ・乾燥
陽虚低体温・代謝低下冷え・下痢
気滞ストレスホルモン高値イライラ・頭痛
痰湿高脂血症・肥満重だるさ・痰
瘀血血液粘稠度↑刺痛・色素沈着
実熱CRP高値・炎症便秘・口臭・発熱

まとめ──虚実を知ることがセルフケアの第一歩

虚実の判定は、中医学における体質診断の「入口」であり「羅針盤」です。

  • 虚証:体に必要なものが足りない状態 → 補うケア(滋養・強化)
  • 実証:余分なものが停滞している状態 → 取り除くケア(巡らす・デトックス)

この大原則を理解するだけでも、食事・生活習慣・漢方薬の選び方が格段にシンプルになります。

虚実を知るメリット

  1. 迷いが減る
    • 「疲れたら補う/詰まったら流す」と判断の基準ができる。
  2. セルフケアが続けやすい
    • 薬膳・腸活・睡眠習慣などを虚実に沿って調整することで「効いている実感」が得やすい。
  3. 専門相談に役立つ
    • 自分が「虚寄りか実寄りか」を把握してから相談すると、漢方薬局やクリニックでもスムーズに話が進む。

今日からできる小さな一歩

  • 舌と便を観察する:毎日の鏡チェックで虚実の変化を把握
  • 温かい汁物を取り入れる:虚にも実にも有効な養生習慣
  • 生活リズムを整える:睡眠・咀嚼・旬の食材で脾胃を守る

ほどよい堂でできること

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営業時間:10:00~18:00(月曜日定休、火曜日は不定休)
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■ ご相談・ご予約はこちらから

・漢方相談(初回カウンセリングは約60分)
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ご相談は基本的にご予約制となっておりますが、時間的な余裕がある場合は飛び入りでの相談もお受けしております。

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著者プロフィール

河邊甲介 (薬剤師)

KOSUKE KAWABE

▷有資格

  • 薬剤師
  • 中医薬膳師:本草薬膳学院(学長:辰巳洋)にて資格取得
  • 薬膳素材専門士:本草薬膳学院(学長:辰巳洋)にて資格取得
  • ペットフーディスト

▷経歴

  • 福岡大学薬学部卒
  • 総合病院薬剤部・調剤薬局にて勤務
  • 2024年1月より宮崎県川南町(峠の里)にて漢方×薬膳×腸活のお店「ほどよい堂」を開局

身体とこころの安心をお届けします

薬剤師であり、漢方×薬膳×腸活の専門家として、「ほどよい堂」を運営しています。
中医学的体質診断を基に、個別に最適な健康アドバイスを提供し、無料相談も実施中。
健康に関するお悩みを漢方や薬膳、腸活でサポートし、体質改善を目指します。
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