わんこの腸活!切っても切れない三角関係【腸×脳×皮膚】

腸と皮膚は似ている⁉

皮膚の重要な役割は
バリア機機能

犬のアレルギーマーチと
腸内細菌の関係

愛犬の健康を願うあなたに!
わんこの腸活!
厳選攻略法!

小腸と大腸の主な役割

腸は大きく分けると小腸と大腸があります。

  • 小腸の役割
    食物の消化吸収を担っています。
    また、免疫を担当する細胞や抗体全体の約7割が腸に集中しています。
    善玉菌はここにいる免疫細胞を調節する働きがあります。

  • 大腸の役割
    水分、ミネラルの吸収が主な仕事ですが、大腸は腸内細菌によって食物繊維の分解・発酵が主に行われる場所です。
    腸内細菌の多くは大腸にいます。
    ウェルシュ菌やブドウ球菌、大腸菌などの悪玉菌が増えるという状態は大腸で起きていることが多いです。

腸は免疫系を調節する重要な臓器

腸が主に担っている免疫とは、身体を正常な状態に保つための防御機能のことで、その働きのひとつに、病原菌や異常のある細胞を認識して排除するというものがあります。

体内に細菌やウイルスなどの異物が侵入すると、身体の中の様々な免疫細胞が炎症反応を起こし、異物を攻撃・排除しようと働くのです。

一方で、通常は栄養成分などの身体に必要なものには反応せず(寛容)に受け入れます。

炎症性免疫細胞とは

炎症性免疫細胞とは簡単に言うと「悪いものは排除する」アクセルに相当します。

このような炎症反応は、「急性炎症」と「慢性炎症」に分けられます。

急性炎症は主に「自然免疫反応」によるものです。

自然免疫とは、身体に異常が発生した時に最初に働き始める第一防衛システムで、マクロファージや好中球、ナチュラルキラー(NK)細胞といった免疫細胞が異物を認識すると速やかに攻撃を始めます。

しかし、自然免疫によって異物が排除できない場合、マクロファージなどが他の免疫細胞(T細胞やB細胞といったリンパ球)に応援を要請することで「獲得免疫反応」が起きます。

獲得免疫とは、自然免疫によって異物を撃退できない場合に働く、第二防衛システムです。

防御性免疫細胞とは

防御性免疫細胞とは簡単に言うと「炎症性細胞の暴走をなだめる」ブレーキに相当します。

制御性T細胞(Treg細胞)は免疫応答を抑制する機能を持ち、自己免疫疾患や炎症性疾患、アレルギー疾患などを引き起こす過剰な免疫応答を抑制する役割を担っています。

健常人の末梢血にあるCD4+T細胞のうち個人差はありますが、概ね5%程度含まれています。

主に免疫が自分の体を誤って攻撃してしまう自己免疫疾患の発症を防ぐために、自己に対する免疫応答を抑制(免疫寛容)する役割を持つ細胞です。

制御性T細胞(Treg細胞)と短鎖脂肪酸(酪酸)の関係とは

ヒトの体表や粘膜には体細胞の総数をはるかに超える数の共生微生物が定着していて、恒常性の維持において重要な役割をはたしています。これは、ヒトだけに特有のものではなく、犬にも同様に当てはまります。

健常な腸管においては,常在細菌に対する「免疫応答」と「免疫寛容」とのバランスにより炎症応答は適切に制御されているのですが、腸内細菌のバランスが壊れると、慢性あるいは再発性の炎症疾患の原因となってしまうのです。

近年,わが国においても食生活の欧米化にともない腸内環境のバランスのくずれることが炎症性腸疾患の増加の一因と考えられています。

腸内細菌をもたない無菌マウスや、抗生物質の投与により腸内フローラ(腸内細菌叢)をかく乱したマウスを用いた研究から、腸内常在細菌は免疫系の成熟や機能の維持において必要不可欠とされていることが分かっています。※1

さらに、最近の研究より、クロストリジウム目に属する細菌である「酪酸菌」が腸内細菌に対する免疫寛容をつかさどる制御性T細胞(regulatory T cell:Treg)の分化を誘導することが判明しています。※2

腸内細菌は代謝産物のひとつとして短鎖脂肪酸のひとつである「酪酸」を産生するのですが、この酪酸が大腸において制御性T細胞の分化を誘導するのです。

このことが、炎症性免疫細胞の暴走を制御してくれて「炎症性腸疾患・アトピーなどのアレルギー性疾患」を予防してくれるのです。

出典:10.7875/first.author.2013.167

皮膚の重要な役割は防御・バリア機能

皮膚は、体を覆うことで筋肉や脂肪などの組織を保持するだけでなく、外界からの異物や紫外線から体を守るバリア機能、水分代謝や体温調節など、実にさまざまな役割をもっています。

必要なものは取り入れ、身体に悪いものは排除するという機能は「腸」とそっくりです。

これは構造的な面でも、口から肛門まで一つの管でつながっている「腸」と似ていてます。

腸は体の中にあるように思われますが、実は腸の内側の空間は外界と接しています。

また、皮膚の表面にはたくさんの「常在菌」が存在していて、ヒトの皮膚表面や毛穴の中に、約20種類、数百億個の常在菌が生息しています。

この常在菌は「雑菌」として見過ごされがちですが、実は皮膚を守る良い働きをしているものが多く、このような点も、腸内フローラと同じですね。

犬のアレルギーマーチと腸内細菌の関係

ヒトの場合、乳児期にアトピー性皮膚炎がある場合、成長にともなって食物アレルギーやぜん息、鼻炎などほかのアレルギー疾患を発症する確率が高くなることがわかっています。これを、「アレルギーマーチ」といいます。

このアレルギーマーチですが、犬の場合も同じような傾向があるといいます。

犬の場合は、アトピー性皮膚炎はおおむね3歳以下で発症することが多く、アトピー性皮膚炎になった犬は他のアレルギー疾患も併発しやすい傾向になります。

ここで、生まれて2ヶ月以内に親兄弟から離されるとアトピー性皮膚炎を発症するリスクが上昇するというデータが出ているのですが、これは、腸内細菌の多様性が確立していないうちに親兄弟から離されることで、腸内細菌の多様性が低下することがアトピー性皮膚炎発症の原因のひとつではないかと考えられています。

また、アトピー素因のある仔犬にプロバイオティクスなどの腸活をすることで、アトピー性皮膚炎発症の予防効果・症状軽減効果が認められたという研究発表もあります。

一見すると、皮膚と腸は関係ないように思われますが、実は密接なつながりがあったのです!

腸内細菌フローラのバランスを良好に保つ方法とは【腸活の3本柱】

腸活の3本柱は「プロバイオティクス」「プレバイオティクス」「バイオジェニックス」です。

プロバイオティクスとは、アンチバイオティクス(抗生物質)に対して提案された用語であり、共生を意味するプロバイオシス(probiosis、pro:共に、~のために、biosis:生きる)を語源としています。代表的なものに乳酸菌、ビフィズス菌、納豆菌、酪酸菌など人の腸に存在する善玉菌があります。

プレバイオティクスは、大腸内の特定の細菌の増殖および活性を選択的に変化させることより、宿主に有利な影響を与え、宿主の健康を改善する難消化性食品成分と定義されています。食品成分の中では食物繊維、難消化性のオリゴ糖類、プロピオン酸菌による乳清発酵物などがあります。

難消化性オリゴ糖は様々な種類があり、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖(GOS)、乳果オリゴ糖(乳糖果糖オリゴ糖)、キシロオリゴ糖、マンノオリゴ糖(MOS)、ラクチュロース(ミルクオリゴ糖)、ラフィノース(ビートオリゴ糖)、アガロオリゴ糖(寒天オリゴ糖)、セロビオースなどがあります。

プレバイオティクスに要求される条件

  1. 消化管上部で加水分解、吸収されない。
  2. 大腸に共生する一種または限定された数の有益な細菌(ビフィズス菌等)の選択的な基質であり、それらの細菌の増殖を促進し、または代謝を活性化する。
  3. 大腸の腸内細菌叢(フローラ)を健康的な構成に都合の良いように改変できる。
  4. 宿主の健康に有益な全身的な効果を誘導する。

バイオジェニックスとは、腸内フローラを介することなく、直接生体に作用し、免疫賦活、コレステロール低下作用、血圧降下作用、整腸作用、抗腫瘍効果、抗血栓、造血作用などの生体調節、生体防御、疾病予防・回復、老化制御などに働く食品成分で、乳酸菌体ペプチド、乳酸菌生産生理活性ペプチド、植物フラボノイド、DHA、EPA、ビタミンA・C・E、β-カロチン、CPPなどの食品成分の事を指しています。

バイオジェニックスの代表格である「乳酸菌生産物質」は、腸内の善玉菌と呼ばれるビフィズス菌や乳酸菌が生み出した成分のことです。

このビフィズス菌や乳酸菌が生み出した代謝産物には、人間が健康的な生活を送る際に必要な物質が多種含まれています。

腸活3本柱のポイント

  1. 「プロバイオティクス」
    直接、有用菌である乳酸菌、ビフィズス菌、納豆菌、酪酸菌など取り入れる。
    ポイントは菌が生きているかではなく菌数と多様性!(ほとんどの菌は胃酸や胆汁酸などで死滅する)
  2. 「プレバイオティクス」
    腸内に住み着いている善玉菌にエサを与えることで菌の活性化・増殖を促す。
    ポイントは食物繊維は、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維に分けられますが、善玉菌の増殖に特に効果的なのは、「水溶性」の食物繊維です!
  3. 「バイオジェニックス」
    人工的に体外で乳酸菌を利用して「乳酸菌生産物質」を作り出し、それを摂取する。
    健康維持に直接関係しているのは、菌そのものではなく、菌が作り出した「乳酸菌生産物質」であるとされ、これらは胃酸・胆汁酸の影響を受けにくいため、口から摂取したものがそのまま腸で吸収されるため効率的!
    ポイントは腸内フローラを介さず身体に直接働きかけること!

わんこの腸活!【腸×脳×皮膚】三角関係のまとめ

「脳腸皮膚相関」とは、脳と腸と皮膚が相互に作用しあう関係性のことです。

『腸×脳×皮膚』一見何のつながりもないようですが、実は密接なつながりがあったのです!

腸と皮膚の関係は「皮膚腸相関(skin-gut axis)」あるいは「腸皮膚相関(gut-skin axis)」と呼ばれています。

腸と他の臓器の関連では、他にも「脳腸相関(brain-gut axis)」という言葉もよく用いられています。

近年の研究から、逆に腸内細菌叢などの腸環境が「脳、皮膚、肺、心臓、肝臓」などの多くの臓器の状態に影響を与えることが明らかになってきています。

腸内細菌やその代謝物が腸管の免疫細胞や神経細胞に及ぼす作用の解析も進み、最近では、「microbiota-gut-skin axis」など腸内細菌叢の重要性が解明されてきています。

犬の場合も人と基本的には同じように、「腸活」を行うことで、多くの健康効果が得られることが予想されます。

食事はからだを作る基本です。

バランスの取れた食事と運動に腸活をプラスすることであなたの大切なパートナーが健康で長生きできることが期待できるのです。

参考文献

日本がん免疫学会
理化学研究所
公益財団法人/腸内細菌学会HP(用語集)
※1:Chung, H., Pamp, S. J., Hill, J. A. et al.: Gut immune maturation depends on colonization with a host-specific microbiota. Cell, 149, 1578-1593 (2012)[PubMed]
※2:Atarashi, K., Tanoue, T., Shima, T. et al.: Induction of colonic regulatory T cells by indigenous Clostridium species. Science, 331, 337-341 (2011)[PubMed]
薬剤師
河邊甲介

宮崎県の川南町にある峠の里からの絶景を眺めながら、漢方と薬膳を組み合わせた腸活相談が受けられる「薬局×セレクトショップ」です。

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