妊娠中・授乳中の漢方と薬膳|禁忌・注意の基本ルール
妊娠中は「攻める生薬(動かす・下す・強く温める)」と「攻める方剤(下す・血を動かす)」を原則避ける|禁忌チェック早見ガイド
妊娠中は、からだが「胎児を守る方向」へ大きくシフトする時期。
そのため、漢方・薬膳の現場では子宮を刺激しやすい作用や、強い瀉下(下す)・利水(強い水抜き)・発汗は基本的に慎重になります。
医療用漢方剤の添付文書でも、大黄・牡丹皮・紅花・桃仁・牛膝・芒硝などを含む処方で「流早産の危険性があるので妊婦には投与しないことが望ましい」といった注意が示されることがあります。
不安がある場合は自己判断で継続せず、主治医・薬剤師へご相談ください。

妊娠中の基本ルール:攻める生薬(動かす・下す・強く温める)は避ける/妊娠中の大原則:攻める方剤(下す・血を動かす)は原則避ける
- 動かす:活血・通経(血を動かす)など
- 下す:瀉下(強く下す)など
- 強く温める:温裏・回陽(強い温め)など
- 強い利水:水を強く動かす(“強い水抜き”)
- 強い発汗:汗で発散させる(体質で刺激になりやすい)
妊娠中は「守る」設計が基本。刺激の強い方向は安全側で避け、必要なら専門家判断で調整します。
- 攻下(こうげ):強く下す処方
- 活血・駆瘀血(かっけつ・くおけつ):血の滞りを動かす処方
- 攻下+活血:妊娠中は特に慎重になりやすい組み合わせ
処方名よりも「方向性(下す/血を動かす)」で見分けると、安全側の判断がしやすくなります。

妊娠中は特に、濃い形ほど影響が出やすい前提で、迷ったら一旦ストップ→確認が安心です。
まず最優先でチェック: “流早産リスク”として注意が明記されやすい生薬
要注意 活血・通経=「血を動かす」系(桃仁・紅花・牡丹皮・牛膝 など) +
妊娠中は、活血(かっけつ)・通経(つうけい)=血を動かす方向は原則慎重です。 「瘀血(おけつ=血の滞り)」を動かす働きが中心のため、自己判断での継続は避けるのが安全側です。
代表例(原材料表示で見つけたら一旦ストップ)
- 桃仁(とうにん):活血・瘀血を動かす
- 紅花(こうか):活血・通経
- 牡丹皮(ぼたんぴ):清熱+活血(熱を冷ましつつ血を動かす)
- 牛膝(ごしつ):活血・通経/下行(下へ引く)
要注意 瀉下=「下す」系(大黄・芒硝 など)|妊娠中は慎重 +
瀉下(しゃげ)=強く下す方向は妊娠中に慎重になりやすい領域です。 「便秘だから」と自己判断で“下剤的アプローチ”を強める前に、まずは生活側の安全策を優先するのが基本です。
代表例(見つけたら要確認)
- 大黄(だいおう):瀉下(強く下す)
- 芒硝(ぼうしょう):軟堅・瀉下(便を軟らかくして下す)
便秘がつらい時の「安全側」代替案(まずここ)
- 味噌汁・野菜スープ・海藻/きのこ/豆を“毎日の定番”に
- 発酵食+発酵性食物繊維を「少しずつ」安定
- 一口30回を目安に「よく噛む」=消化のスイッチ(脾=土を助ける)
体質で判断 強い温め・刺激(附子/乾姜/呉茱萸など)|“濃い摂取”は自己判断を避ける +
冷えがつらい時期ほど温めたくなりますが、妊娠中は強い温め(温裏・回陽)は体質や経過により合わないことがあります。 まずは食事・服装・足元保温などの“やさしい温活”を軸にし、濃い形(濃煎・エキス・サプリ)は相談が安心です。
- 附子(ぶし):回陽(強く温める)で刺激が強く、管理が必要
- 乾姜(かんきょう)/呉茱萸(ごしゅゆ):温中だが体質・のぼせ・妊娠経過で判断

“健康茶・薬膳茶”で特に事故が起きやすい:下剤成分(センノシド)系の見分け方

妊娠中・授乳中の「便秘茶/ダイエット茶」は、まず原材料表示で 下剤成分(センノシド)系が含まれていないかを確認すると、安全性が上がります。
- センナ/センノシド
- キャンドルブッシュ(ハネセンナ)
- カッシア・アラタ(Cassia alata) など表記揺れ
見つけたら、自己判断で続けず相談が安心です。
妊娠中「慎重投与」とされやすい生薬・薬膳素材(実務チェック用)
表で確認 素材名/分類/注意理由/代替案/表示チェック(コピペ運用向け) +
ここでは、妊娠中に問題になりやすい「濃い摂取(濃煎・エキス・サプリ)」を想定し、 実務で使いやすい形に整理しています(食品の少量使用とは別物として扱うのが安全側です)。
| 素材名 | 分類(方向性) | 中医学の働き(ひとこと) | 注意理由(妊娠中) | 代替案(安全側) | 表示チェック(原材料) |
|---|---|---|---|---|---|
| 要注意大黄 | 瀉下(下す) | 強く通便 | 強い瀉下は妊娠中に慎重 | 味噌汁・野菜スープ/食物繊維を安定/よく噛む | 大黄 |
| 要注意芒硝(無水ボウショウ) | 瀉下(下す) | 便を軟らかくして下す | 強い瀉下は妊娠中に慎重 | 同上(まず生活側) | 芒硝/無水ボウショウ |
| 要注意桃仁 | 活血・通経(動かす) | 瘀血を動かす | 「血を動かす」方向は原則慎重 | 補う・守る設計へ(相談で個別調整) | 桃仁 |
| 要注意紅花 | 活血・通経 | 血を巡らせる | 通経系は妊娠中に慎重 | 温かい飲み物+足元保温(やさしい温活) | 紅花 |
| 要注意牡丹皮 | 清熱+活血 | 熱を冷ましつつ動かす | 活血を含むため慎重 | 状態整理→相談(週数・体質で判断) | 牡丹皮 |
| 要注意牛膝 | 活血・通経/下行 | 下へ引く | 下行性があり慎重 | むくみは塩分・水分バランス+軽い運動(相談推奨) | 牛膝 |
| 慎重半夏/厚朴 | 化痰・理気 | つかえ・吐き気 | 妊婦は自己判断を避けたい領域 | 少量頻回・温かいスープ/相談で方針決め | 半夏/厚朴 |
| 慎重麻黄 | 発汗・刺激 | 発散・解表 | 体質次第で刺激になりやすい | 休養・保温・水分・食事(症状が強い場合は受診) | 麻黄 |
| 慎重薏苡仁/麻子仁 | 利水/潤腸 | 水・腸を動かす | 目的と状態で判断(濃い摂取は慎重) | 少量・体感優先/不安なら相談 | 薏苡仁/麻子仁 |
| 最優先センナ系(健康茶) | 下剤成分(センノシド) | 強い通便 | 便秘茶・ダイエット茶で混入しやすい | まず生活側(スープ・食物繊維・よく噛む) | センナ/センノシド/キャンドルブッシュ/ハネセンナ/Cassia alata |
ただし、民間粉末・個人輸入生薬・“謎サプリ”は混入リスクがあるため注意が必要です。
チェック 現場で使える「安全側の線引き」チェックリスト +
- 濃い煎じ/エキス/サプリほどリスクが上がりやすい(食品少量とは別扱い)
- 妊娠中はまず 「下剤系」「活血・通経系」「強い温め(附子など)」を疑う
- 健康茶は原材料で センナ/キャンドルブッシュ(ハネセンナ)/Cassia alata を最優先チェック
- 迷ったら 自己判断で継続しない(産科主治医+薬剤師で整理)

授乳中の大原則: “乳児の下痢”が出やすい成分は特に注意
授乳中 特に注意:大黄(母乳移行→乳児下痢)/センノシド系(健康茶でも混入) +
授乳中は「禁忌」と断言されない場合でも、添付文書で授乳の継続/中止を検討とされることがあります。 とくに乳児の下痢につながりやすい成分は注意が必要です。
- 大黄(アントラキノン誘導体)を含む場合:乳児の便性を観察しつつ、必要性・期間で判断
- センノシド系(センナ/キャンドルブッシュ等):授乳婦投与で乳児下痢報告があるため要注意

不安を残したまま選ばない|相談→納得→購入の順でOK

「これは避けた方がいい?」を最短で整理。
検討中の漢方薬・薬膳素材・健康茶があれば、商品名(または原材料の写真)と 妊娠週数/授乳の有無/体調を添えて送ってください。購入は任意です。
・J-STAGE(妊娠初期の漢方薬(生薬)服用による妊娠及び胎盤形成への影響): 本文を見る
・妊婦への投与に注意が必要な漢方薬(資料PDF): PDFを見る
・(例)桃核承気湯の添付文書データ: 参照
・(例)桂枝茯苓丸料のIF(メーカー例): 参照
・(例)漢方製剤IF(授乳に関する注意の例): 参照
・(例)センノシド錠の添付文書(禁忌・授乳時の報告例): 参照
よくある質問(FAQ)|妊娠中・授乳中の「禁忌・注意」

Q 「薬膳」なら妊娠中でも何でも安全ですか? +
「薬膳=安全」とは限りません。特に濃煎・エキス・サプリは“濃さ”が別物です。
妊娠中は動かす/下す/強く温める方向性に当てはまるものは、安全側で避けるのが基本です。
Q 便秘茶(健康茶)を飲んでも大丈夫? +
妊娠中・授乳中は、まずセンナ/センノシド/キャンドルブッシュ(ハネセンナ)など
下剤成分の有無を原材料表示で確認してください。
「すっきり」「痩せ」「出る」を強調するお茶ほど、原材料チェックが重要です。
Q 授乳中に気をつける成分は? +
授乳中は、乳児の下痢につながりやすい成分に注意します。
目安として大黄を含む場合や、健康茶に混入しやすいセンノシド系は要確認です。
迷ったら「必要性・期間・乳児の便」を軸に相談が安心です。

