不妊症の周期療法と漢方薬:体質に合わせた最適な選択肢

不妊症は、多くのカップルにとって深刻な問題ですが、周期療法と漢方薬の組み合わせは、その治療に新たな展望を開いています。

この治療法は、個々の体質や症状に合わせてカスタマイズされ、単なる症状の緩和を超えて、根本的な改善を目指します。

周期療法は、女性の月経周期に合わせた治療法であり、生理周期のバランスを取り戻し、排卵を正常化することを目的とします。

一方、漢方薬は、体質に基づいて処方され、体のエネルギーの流れを調整し、生殖系の健康を促進します。

この組み合わせにより、身体の自然なバランスが取り戻され、妊娠を促進する可能性が高まります。

本記事では、不妊症の原因となるさまざまな体質や状態に応じた周期療法と漢方薬の最適な選択肢について詳しく掘り下げていきます。

漢方と西洋医学の結合『周期療法』:不妊症の治療と月経周期の整え方

不妊症の周期療法は、月経周期と個々の体質に合わせた漢方薬を用いて、自然な妊娠を促進する方法です。

この治療法は、ホルモン療法や人工授精などの西洋医学の手法と組み合わせることで、より高い妊娠率を目指します。

月経不順、月経痛、PMSから美容や健康維持に至るまで、幅広く応用されています。

結婚後、通常の夫婦生活を送ってから2年以上子供ができない場合は一般的に不妊症とされますが、近年では1年で妊娠しない場合にも不妊の可能性が考えられるようになっています。

周期療法は、これらの状態に対しても有効な治療法とされており、個々の体質に応じたアプローチが特徴です。

この記事では、不妊症の原因や治療方法、そして漢方薬と周期療法がどのように組み合わさって効果を発揮するかについて詳しく解説します。

不妊治療に関心のある方や月経トラブルでお悩みの方にとって、貴重な情報源となれると幸いです。

周期療法とは?体質改善に効果的なアプローチ

漢方医学における不妊周期療法は、体内の本来の機能を尊重し、自然な妊娠を促進するために組織の活動や休養の仕組みを助けます。

初潮から閉経までの女性の生理周期は、月経期、卵胞期、排卵期、黄体期の4つの期間に分かれ、漢方ではそれぞれの期に応じた薬や養生法を適用します。

この方法は、体のリズムを正常化し、妊娠の条件を整えることで知られています。

漢方医学では、体質の診断に弁証論治という手法が用いられます。

気・血・水(津液)の不足や滞りを判断し、それに基づいて治療法を選択します。

近年の学術的な研究と臨床データにより、不妊周期療法は高い効果を示すことが確認されています。

この記事では、漢方医学が不妊治療においてどのように体質改善を支援するか、また弁証論治がその根拠となる診断法であることについて詳しく解説します。

月経周期表の基礎知識:月経期(生理期)から高温期まで

周期療法と生理周期:各時期ごとの漢方薬の活用法

周期療法では、生理周期(生理期、低温期、排卵期、高温期)に合わせて異なる漢方薬を服用し、効果的な治療を行います。

生理周期漢方薬の使用方法効果
生理期(月経期)活血薬と理気薬を併用して、子宮内の血液をきれいに排出させる。子宮内の老廃物を排出し、血液の流れを改善します。
低温期(卵胞期)補陰血薬を中心に少量の補陽薬を併用し、子宮内膜を増殖し成熟卵胞を育てる。子宮内膜を厚くし、健康な卵胞の成長を促進します。
排卵期補精薬と活血薬を併用して、排卵をスムーズにします。健康な卵子の放出を支援し、受精の可能性を高めます。
高温期(黄体期)補陽薬を中心に少量の補陰血薬を併用し、受精卵を子宮内に着床させ、妊娠を継続できるようにします。子宮内の環境を整え、受精卵の着床を支援し、妊娠をサポートします。

月経期の漢方療法:活血薬と理気薬で子宮をスムーズに大掃除!(陽から陰への転換)

月経期(周期の始めの3日〜1週間)は、子宮内膜を再生する前段階で、粘膜層を完全に排出する重要な時期です。

月経期は体内で大きな変化が生じ、不必要になった子宮内膜や月経血を排出する重要な時期です。

これらが体内に残ると血の巡りが悪化し、体調不良につながる可能性があります。

円滑に排出を促すために、理気活血の作用を持つ漢方薬が役立ちます。

この時期には、活血薬として「丹参、川芎、紅花」などが用いられ、子宮内膜を徹底的に清浄し、不要な増殖を防ぎます。

同時に、理気薬の「香附子や木香」も服用し、子宮の筋肉と血管のリズムを改善し、月経血のスムーズな排出と月経痛の緩和をサポートします。

項目内容
仕組み月経排出に向けて卵胞が選ばれ、子宮が準備される
周期療法活血薬と理気薬の組み合わせが効果的
生薬活血薬:丹参、川芎、紅花、桃仁、牛膝
理気薬:香附子、木香、陳皮、枳実
方剤活血薬:環元清血飲 、芎帰調血飲第一加減、桂枝茯苓丸、桃核承気湯
理気薬:環元清血飲 、芎帰調血飲第一加減、香蘇散、半夏厚朴湯、四逆散、柴胡疎肝湯、逍遥散、抑肝散

低温期(卵胞期)の漢方療法:赤ちゃんの卵を育てる丈夫なベッドづくり(陰を補う時期)

低温期/卵胞期(月経期後の約1週間〜10日間)は、子宮内膜の再生と卵胞の成熟を促進する重要な時期です。

月経終了から排卵までの卵胞期は、卵子の成長を支える大切な期間です。

この時期には陰と血を補い、より質の高い卵子が育つようサポートします。

卵胞を発育させ、厚い子宮内膜を形成するために「補陰養血」というアプローチが用いられます。

補血薬として「当帰、芍薬、熟地黄」などの成分を含む漢方薬を使用し、失われた血液の回復を促進します。

また、滋陰薬として「山薬」などを使用して、子宮と卵巣への栄養供給を増やし、安定した状態を維持します。

項目内容
仕組み月経期の出血が止まり、子宮内膜が修復される
周期療法補血薬と滋陰薬の組み合わせが重要
生薬補血薬:当帰、芍薬(白芍)、熟地黄
滋陰薬:山薬、女貞子
方剤補血薬:「参茸補血丸(さんじょうほけつがん)」「婦宝当帰膠」
滋陰薬:杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)、六味丸、八味地黄丸

子宮のウォームアップ:排卵期に活血薬+理気薬で体を整える(陰から陽への転換)

排卵期(周期の中間部の数日間)は、卵巣内の成熟卵胞から卵子を排卵し、黄体を作り、低温期(卵胞期)から高温期(黄体期)へ移行させる重要な時期です。

排卵期は、陰から陽に転換し、卵子が卵胞から飛び出す時期です。

スムーズな排卵を助けるため、気と血を巡らせ、黄体化を促進する「助陽理気」や「活血促排卵」の方法が有効です。

この時期には、再び活血薬と理気薬を使用してホルモン分泌の連携を良くし、確実かつ速やかに排卵を促進し、黄体化をサポートします。

また、腎を補うための補腎薬も併用されます。

項目内容
仕組み排卵
周期療法活血薬と理気薬の組み合わせが重要
生薬活血薬:丹参、川芎、紅花、桃仁、牛膝
理気薬:香附子、木香、陳皮、枳実
方剤冠元顆粒、血府逐瘀丸

高温期(黄体期)の漢方療法:補陽薬でベットをやわらかに!(陽を補う時期)

高温期(周期後半の約2週間)は、受精卵が子宮内膜に着床しやすい環境を整えるための重要な期間です。

この期間中、黄体ホルモンの働きにより、子宮内膜が再生され、栄養素に富んだ分泌液(子宮ミルク)を蓄えます。

排卵後の黄体期では、体温が上がり、陽の力が高まります。

受精卵の着床に備えるため、身体を温め、子宮内膜を整える「補陽」が大切です。

以下に、高温期の役割と漢方治療について詳しく説明します。

高温期(黄体期)の役割
  • 子宮内膜の準備:黄体ホルモンが分泌されることで、子宮内膜への血液供給が加速し、体内に蓄えられていた栄養素が分解されます。これによりエネルギー代謝が高まり、基礎体温が月経期・卵胞期よりも0.3〜0.5℃高く維持されます。
  • 子宮ミルクの分泌:再生された子宮内膜には、分泌腺が働き、受精卵の着床・養育に必要な栄養素を含む分泌液が蓄えられます。
高温期の末期

高温期の末期に黄体が萎縮し始めると、子宮内膜がはがれ落ち始めます。これが月経の始まりとなります。

周期療法:補陽(ほよう)

高温期の健康を維持し、受精卵の着床を助けるために、「補陽(ほよう)」と呼ばれる漢方の周期療法が効果的です。

この療法は、黄体ホルモンの分泌を促し、子宮内膜の準備をサポートします。

高温期は、受精卵の着床に重要な期間です。黄体ホルモンの作用により、子宮内膜が準備され、エネルギー代謝が高まります。

周期療法の「補陽」や、補陽薬を用いた漢方治療は、この期間の健康維持と受精卵の着床をサポートします。

項目内容
仕組み子宮内膜は黄体ホルモンの作用により受精卵の着床を準備。
黄体が萎縮し始めると内膜がはがれ落ちる。
周期療法補陽薬の使用が重要
生薬補陽薬:鹿茸、淫羊藿、冬虫夏草、肉蓯蓉、紫河車
方剤補陽剤:「海馬補腎丸(かいまほじんがん)」「参茸補血丸」「瀉火補腎丸」
理気剤:「逍遙散」「開気丸」

まとめ:子宮健康を目指す方に!周期調節法のすすめ

おすすめの方説明
妊活中妊娠を目指している方
子宮の状態を良くしたい方子宮の健康を改善したい方
月経の不調がある方月経不順や月経痛などの不調を抱えている方
排卵がスムーズにいかない方排卵に問題がある方
採卵や移植を考えている方不妊治療で採卵や胚移植を計画している方

月経周期に合わせた漢方薬の選び方|特徴に合った漢方薬で女性の健康をサポート

以下の表に各周期の特徴と推奨される漢方薬をまとめました。

この表により、各周期ごとに最適なケアが明確になり、漢方薬の選択がしやすくなります。

周期特徴目的推奨漢方薬
月経期陽から陰への転換期で、体内の激しい変化が起こる。不要な子宮内膜や月経血を排出する時期。不要な子宮内膜や月経血の排出を促進冠元顆粒、婦宝当帰膠、逍遙散、血府逐瘀丸、帰調血飲第一加減、冠心Ⅱ号方、香蘇散、半夏厚朴湯、四逆散、柴胡疎肝湯、抑肝散
卵胞期月経後から排卵まで。卵子の成熟を促し、厚い子宮内膜を形成するために陰と血を補う時期。卵胞の発育と子宮内膜の形成杞菊地黄丸、参茸補血丸、婦宝当帰膠、六味丸、八味地黄丸
排卵期陰から陽への転換期で、卵子が卵胞膜を破って排出される。気血の巡りを促進し、排卵を円滑にする時期。排卵の促進、黄体化のサポート冠元顆粒、血府逐瘀丸、冠心Ⅱ号方
黄体期排卵後、黄体ホルモンの分泌により体温が上昇する陽の時期。子宮内膜を柔らかくし、受精卵の着床に備える。体温を上げて着床準備、栄養供給のサポート海馬補腎丸、参茸補血丸、瀉火補腎丸、逍遙散、開気丸

周期調節法の基本理論とカスタマイズ方法:個別対応の重要性

28日周期を基本とした理論
周期調節法は、通常28日周期を基本としています。しかし、月経周期が28日より短い方や長い方、特定の疾患や体質を抱えている方には、より適した方法を用いる場合があります。

個別対応の重要性
すべての方が4つの周期(生理期、低温期、排卵期、高温期)に分けて治療するわけではありません。月経期に問題がない方は月経期を省略し、排卵期に問題がない方は排卵期を省略するなど、低温期と高温期の2周期に分けることもあります。

特別なケースへの対応
生理周期が長く不安定な方、胃腸やその他の体質改善が必要な方、排卵障害のある方などは、周期ごとに分けずに体質改善のための漢方薬を継続することが推奨されます。

体質に合わせた漢方薬の選び方~陽気不足や血虚など不妊症でよく見られるタイプ

周期療法は、月経リズムに合わせて漢方薬を使い分けることを基本としますが、決まった薬があるわけではなく、個人の体質や体調に合わせた薬の選択が重要です。

体質は固定されたものではなく、食事、生活環境、加齢などによって変化するため、適切な薬も変わり得ます。

不妊症に悩む方の多くには、以下の体質タイプが見られることが一般的です。

  1. 陽気不足:エネルギーや温める力が足りず、冷えを感じやすい。
  2. 血虚:血が不足し、顔色が悪く、疲れやすい。
  3. 気滞:気の巡りが滞り、ストレスを感じやすい。
  4. 瘀血:血の巡りが悪く、冷えや痛みが生じやすい。
  5. 陰虚火旺:体の潤いが不足し、ほてりやのぼせがある。
  6. 痰湿:余分な水分が滞り、むくみやだるさが感じられる。

不妊症の漢方治療では、このような体質タイプを考慮し、個々の状況に合った薬を選ぶことが大切です。

陽気不足タイプ(ようきぶそく)

概要:
陽気不足タイプとは、体を温めるエネルギーである「気」が不足している状態で、冷えやすく、体を温める機能が低下しているのが特徴です。

主な症状:

  • 手足が冷えやすく、疲れやすい
  • 元気がなく、食欲がない
  • 月経血の色が薄い赤色で水っぽい
  • 月経時にだらだらと出血が続く、不正出血が月経前に見られることがある
  • 基礎体温が全体的に低い、高温期と低温期の差が小さい(0.3℃以内)、高温期の日数が短い(10日未満)

原因:
冷たい飲食物の取りすぎや薄着、冷房などが原因となり、ホルモンバランスや自律神経、ストレスによっても冷えが引き起こされやすくなります。特に下半身の冷えは、子宮や卵巣といった妊娠に関わる臓器に影響を与え、骨盤周辺の血流や働きを低下させるため、妊活においては下半身を冷やさないことが大切です。

おすすめの漢方薬:

  • 婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)/イスクラ:主成分の当帰が体を温め、骨盤内の血流を改善するとともに、女性ホルモンのバランスを整える効果があります。
  • 参茸補血丸(さんじょうほけつがん)/イスクラ:気と血を補い、体を温める効果があり、疲れやすさや冷えの改善をサポートします。
  • 参馬補腎丸(じんばほじんがん)/イスクラ:腎の機能を高め、冷えや体力の不足を補い、妊娠に向けた体作りに役立ちます。

対策のポイント:
妊活を考えている場合は、まず下半身を冷やさない生活を心がけることが重要です。

血虚タイプ(けっきょ)

概要:
血虚タイプは、体に栄養と潤いを与える「血」が不足しているか、その機能が低下している状態を指します。このタイプの人は、血色が良くなく、体が十分な栄養を受け取れないために様々な不調が現れやすくなります。

主な症状:

  • 血色が悪く、顔色が青白い
  • 立ちくらみやめまいを起こしやすい
  • 眠りが浅く、夢をよく見て不眠がち
  • 疲れが取れにくく、気分が落ち込みやすい
  • 月経時に月経血の色が薄いピンク色で、量が少なく、月経日数も短い
  • 月経後に特に疲れやすい
  • 基礎体温では低温期が長く、高温期が短い(10日未満)

原因:
食事の不摂生や生活習慣の乱れ、ストレスなどが影響し、体が十分な「血」を作れず、不足することで症状が現れやすくなります。特に、貧血傾向にある人や過労による栄養不足が関わりやすいです。

おすすめの漢方薬:

  1. 婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)/イスクラ
    • 当帰を多く含み、体力を高め、貧血や不妊の改善、女性ホルモンのバランスを整えます。骨盤付近の血流を改善するため、妊娠しやすい体作りにも役立ちます。
  2. 参茸補血丸(さんじょうほけつがん)/イスクラ
    • 気と血を補い、体を温め、体力の回復をサポートします。
  3. 四物湯(しもつとう)
    • 血を補い、血行を改善し、月経周期を整える作用が期待できます。
  4. 当帰補血湯(とうきほけつとう)
    • 血を補い、疲れやすさや冷えを改善する効果があります。
  5. 心脾顆粒(しんぴかりゅう)/イスクラ
    • 血と気を補う作用があり、精神面での不調や不眠症状にも効果的です。
  6. 参茸大補丸錠(さんじょうたいほがんじょう)/コタロー
    「参茸大補丸錠」は、滋養強壮を目的とした錠剤で、疲れた体をサポートするための生薬製剤です。主に鹿茸(ろくじょう)、牛黄(ごおう)、紅参(こうじん)、黄耆(おうぎ)などが含まれており、これらの生薬が疲労回復や体力強化を助けます。

対策のポイント:
血虚タイプの方は、栄養バランスの取れた食事を心がけ、睡眠と休養をしっかりとることが重要です。また、体を冷やさないようにし、温かい食事や飲み物を取り入れることで、体内の血流が良くなりやすくなります。

気滞タイプ(きたい)

概要:
気滞タイプは、体のエネルギーである「気」のめぐりが滞り、ストレスに影響されやすくなった状態を指します。このタイプの人は、気持ちが落ち込みやすく、情緒が不安定になりがちです。体内のエネルギーがスムーズに流れないことで、さまざまな不調が引き起こされます。

主な症状:

  • ストレスに弱く、イライラや怒りっぽさが出やすい
  • 情緒不安定でため息が多くなる
  • 気分が塞ぎやすくなる
  • 月経前に胸やお腹の張り、肩こり、頭痛が起こりやすい
  • 基礎体温の変動が激しく、低温期から高温期への移行に時間がかかる
  • 月経周期が不安定で、月によって月経痛の強さが変わる
  • 高プロラクチン血症や乳汁の分泌が見られることもある

原因:
日常生活でのストレスや緊張、不規則な生活が、体内の気の流れを滞らせる主な原因です。自律神経の乱れも影響し、ホルモンバランスが崩れることで月経不順や気分の不安定が引き起こされやすくなります。

おすすめの漢方薬:

  1. 逍遥丸(しょうようがん)/イスクラ
    • 自律神経を整え、気の流れをスムーズにすることで、ストレスを和らげ、気分の安定を助けます。
  2. 刺五加人参(シベリア人参)
    • 抗ストレス効果があり、リラックス効果が早く現れます。また、疲労回復にも優れているため、気分が落ち込みがちなときに適しています。
  3. 加味逍遙散(かみしょうようさん)

    加味逍遙散は、逍遙散に牡丹皮と山梔子を加えた処方で、主に「肝鬱血虚脾虚(かんうつけっきょひきょ)」の証に対応します。逍遙散は、肝の機能が鬱滞し、血流や精神状態が不調をきたす「肝鬱」による症状を改善するための薬方です。肝の機能がうまく働かず、調整ができない状態を改善し、身体全体の調和を取り戻す効果があります。

対策のポイント:
気滞タイプの人は、ストレス解消が大切です。運動や趣味、リラックスできる環境作りなど、日常的に心と体をリフレッシュさせる工夫が必要です。また、温かい食事や体を冷やさない服装を心がけ、リラックスできる環境を整えましょう。

瘀血タイプ(おけつ)

概要:
瘀血タイプは、血液の流れや血液の質が悪くなり、血が粘り気を増してドロドロになり、固まりやすくなった状態です。この状態は、子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫、癒着などの婦人科系の問題を引き起こすことがあり、不妊の原因にもなりやすいとされています。

主な症状:

  • 月経痛がひどく、レバー状の塊や粘膜のような塊が月経血に混じる
  • 月経血の色が暗い赤色や黒っぽい色になる
  • 月経中に頭痛や肩こりなどの不調が出やすい
  • 基礎体温が月経が始まってもなかなか下がらず、一度下がった体温が再び上がることがある

原因:
血液の流れが悪くなる原因には、冷えや運動不足、ストレス、体内の老廃物の滞りなどが考えられます。これにより、骨盤周りの血流が悪くなり、子宮や卵巣へ新鮮な血液が行き渡らず、婦人科系のトラブルを引き起こすことがあります。

おすすめの漢方薬:

  1. 冠元顆粒(かんげんかりゅう)/イスクラ
    • 活血化瘀(かっけつかお)作用があり、血液の流れを良くして瘀血を改善します。骨盤の血流を促進し、子宮や卵巣へ新鮮な血液を届けることで、不妊症改善をサポートします。「冠元顆粒」は、元々の「冠心Ⅱ号方」から「降香」を除き、その代わりに精神的ストレスに効果がある「木香(もっこう)」と「香附子(こうぶし)」を加えた処方です。
  2. 血府逐瘀丸(けっぷちくおがん)/イスクラ
    • 血液の停滞を解消し、血の巡りを整える効果があり、特に月経痛の緩和や血流改善に役立ちます。
  3. 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

    桂枝茯苓丸は、婦人科の名方の一つで、以前紹介した当帰芍薬散や加味逍遙散と並んで、婦人の聖薬として広く使用されています。主に「瘀血」と呼ばれる血行障害を改善する目的で使われ、特に子宮内の瘀血を排出させ、子宮の状態を正常に戻すために設計された処方です。この作用により、子宮の健康が回復し、妊娠しやすい状態を作り出すことが期待されます。
  4. 冠心Ⅱ号方(かんしんにごうほう)

    この処方は、漢方の歴史の中では比較的新しいもので、主に虚血性心疾患に使用されます。東洋医学の理論に基づくというよりも、丹参を中心に冠動脈疾患や狭心症に対する活血薬を組み合わせた処方です。配合されている生薬は、丹参(たんじん)、川芎(せんきゅう)、赤芍(せきしゃく)、紅花(こうか)、降香(こうこう)の5種類で、いずれも「活血化瘀」を促進する効果を持つ漢方薬です。
  5. 環元清血飲 (かんげんせいけついん) (冠心Ⅱ号方の変方) / コタロー

    冠心Ⅱ号方は、中国中医研究院が開発した活血化瘀剤で、血流改善に効果があります。本方の主薬である丹参(タンジン)は、芍薬(シャクヤク)、川芎(センキュウ)、紅花(コウカ)といった活血作用のある生薬とともに、血の巡りを良くし、瘀血を改善します。また、「気巡れば血も巡る」と言われるように、木香(モッコウ)と香附子(コウブシ)を加えることで、気の巡りを改善し、活血作用をさらに助けています。
  6. 生薬製剤二号方(冠心Ⅱ号方の変方) / ウチダ和漢薬

    ウチダの生薬製剤二号方は、主薬の丹参をはじめ川芎、紅花、芍薬、木香、香附子の6つの生薬を配合し、月経不順や月経困難、産後の腹痛などの婦人科系の不調や高血圧に伴う頭痛、肩こり、めまいなどを改善し、血行を促進することで女性特有のさまざまな瘀血症状に効果をもたらします。

対策のポイント:
瘀血タイプの人は、血流を促進するために、日頃から冷え対策や運動を心がけることが大切です。温かい食事や入浴を習慣化し、ストレスを溜めない生活を意識しましょう。また、骨盤周りを温めることで血流が促され、妊娠しやすい体づくりにもつながります。

痰湿タイプ(たんしつ)

概要:
痰湿タイプは体内に余分な水分が滞りやすい状態です。特に太っている人に多く見られ、余分な水分(痰湿)が女性ホルモンに悪影響を及ぼし、嚢胞やしこり、肥厚、卵巣嚢腫などのトラブルを引き起こす要因となります。中医学では多嚢胞卵巣症候群を痰湿による不妊や月経不順として捉えています。

主な症状:

  • 月経の遅れ、または無月経
  • 月経血の量が少なく、色が薄い
  • 基礎体温が低温期で不安定、または一相性で変動が少ない

原因:
体内の余分な水分が滞ると、内臓機能のバランスが乱れ、血液の循環も悪化します。これにより女性ホルモンが不安定になり、嚢胞やしこりができやすくなります。また、冷たい食べ物や飲み物、運動不足、ストレスなどが痰湿を引き起こしやすい要因とされています。

おすすめの漢方薬:

  1. 温胆湯(うんたんとう)/ コタロー
    • 気の流れを整え、余分な湿気を取り除き、痰湿を改善します。内臓機能を調整し、不妊や月経不順の改善に効果があります。
  2. 瀉火利湿顆粒(しゃかりしつかりゅう)/イスクラ
    • 熱を抑えて湿気を取り除くことで、痰湿の症状を和らげます。月経不順や体内の余分な水分を排出するのに役立ちます。
  3. 二陳湯(にちんとう)
    • 痰湿を取り除き、消化機能を改善します。胃腸の働きをサポートし、痰湿タイプの不調を緩和します。

対策のポイント:
痰湿タイプの人は、体を温め、余分な湿気を取り除く生活習慣が大切です。冷たい飲食物を控え、温かい食事を摂ることや、適度な運動を心がけましょう。また、ストレスの解消も痰湿改善に効果的です。

漢方によるサポート:
漢方治療は、体のバランスを整え、自然な形で妊娠しやすい体作りをサポートします。痰湿による不妊に悩んでいる方には、体質改善を目指した周期療法がおすすめです。不妊でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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薬剤師
河邊甲介

宮崎県の川南町にある峠の里からの絶景を眺めながら、漢方と薬膳を組み合わせた腸活相談が受けられる「薬局×セレクトショップ」です。

「中医薬膳師×薬膳素材専門士×ペットフーディスト」の資格を有する薬剤師が、体調不良、ダイエットやアトピーなどの悩みにも親身に対応します。

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宮崎県川南町「ほどよい堂」では、「漢方×薬膳×腸活」に関する様々な商品を揃えています。

気軽に一度、ご相談にお越しください!

著者プロフィール

河邊甲介 (薬剤師)

KOSUKE KAWABE

▷有資格

  • 薬剤師
  • 中医薬膳師:本草薬膳学院(学長:辰巳洋)にて資格取得
  • 薬膳素材専門士:本草薬膳学院(学長:辰巳洋)にて資格取得
  • ペットフーディスト

▷経歴

  • 福岡大学薬学部卒
  • 総合病院薬剤部・調剤薬局にて勤務
  • 2024年1月より宮崎県川南町(峠の里)にて漢方×薬膳×腸活のお店「ほどよい堂」を開局

身体とこころの安心をお届けします

薬剤師であり、漢方×薬膳×腸活の専門家として、「ほどよい堂」を運営しています。
中医学的体質診断を基に、個別に最適な健康アドバイスを提供し、無料相談も実施中。
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