辛温解表類と辛涼解表類:中医学におけるかぜの治療法

中医学では、かぜのひき始めに適した食薬を「解表類」と呼びます。

この解表類は、かぜの初期症状に使用される食薬で、身体の表面にある邪気を発散させることを目的としています。

解表類は大きく分けて「辛温解表類」と「辛涼解表類」に分類され、症状や季節に応じて使い分けます。

以下に、これらの解表類について詳しく解説します。

辛温解表類の特徴と使い方まとめ:寒気や頭痛に効く漢方薬の基礎知識

辛温解表類は、主に寒性のかぜに対して使用される食薬です。

性質としては温性であり、辛味を持ち、発汗作用が強いのが特徴です。

これにより、寒気を体外に追い出し、かぜの初期段階で症状を軽減します。

主に晩秋、冬、早春の寒い季節に使用されます。

代表的な辛温解表類の食薬には、以下のものがあります。

  • 生姜:冷えによる腹痛や冬かぜに効果的です。発汗を促し、体を温める作用があります。
  • 葱白:咳や嘔吐を止める働きがあり、解毒作用も持つため、冬かぜに適しています。
  • 紫蘇:風邪のひき始めに有効で、特に寒気を伴う症状に用いられます。

使用の注意点
温解表類を使用する際には、汗が少し出た段階で使用をやめるのが一般的です。
過剰に発汗させることは逆効果となることがあります。
また、これらの食薬を加熱する際には、加熱時間を短くし、効能を最大限に保つことが重要です。
長時間の加熱は解表の働きを弱めてしまいます。

辛涼解表類の代表的な生薬と効果:風熱タイプの初期症状に効く漢方を学ぼう

辛涼解表類は、主に熱性のかぜに対して使用される食薬です。

性質としては涼性であり、辛味を持ちます。

これにより、体内の熱を冷まし、炎症や発熱を抑える作用があります。

特に晩春や初秋のような季節に適しており、首や肩の凝りを伴うかぜにも使用されます。

代表的な辛涼解表類の食薬には、以下のものがあります。

  • 薄荷:解熱作用があり、首や肩の凝り、晩春や初秋のかぜによく使われます。また、気分をリフレッシュさせる効果もあります。
  • 菊花:目の充血やかすみ目、吹き出物などにも効果があり、晩春や初秋のかぜに使用されます。
  • 淡豆豉(たんとうし):夏かぜに用いられ、軽度の鬱症状にも他の薬と併用して使われます。

使用の注意点
辛涼解表類も辛温解表類と同様に、使用する際には加熱時間を短くし、薬効を維持することが求められます。
また、症状に合わせて適切な種類の食薬を選ぶことが重要です。

銀翹散(ぎんぎょうさん):のどの痛みを和らげる効果と淡豆豉の役割

『銀翹散』は、中医学で広く使用されている漢方薬で、特にのどの痛みや口が渇いて水が飲みたくなるといったかぜの初期症状に効果的です。

この漢方薬は、かぜの症状が出始めたときに服用することで、症状の進行を防ぐことが期待できます。

寒気を伴うかぜに効果的な『葛根湯』とは異なり、『銀翹散』はのどの痛みを伴うタイプのかぜに適しています。

銀翹散の特長と効果

『銀翹散』は、のどや体表の炎症を抑える働きがあります。

特に乾燥した環境でのどが痛くなりやすい冬や、エアコンによる乾燥が問題となる夏に有効です。

乾燥した空気がのどにダメージを与えるため、部屋の湿度を適切に保つことも重要です。

銀翹散に含まれる生薬:淡豆豉の役割

『銀翹散』には、「淡豆豉(たんとうし)」という生薬が配合されています。

「淡豆豉」は、大豆を発酵させたもので、解熱作用や抗炎症作用があり、のどの痛みや炎症を和らげる効果が期待できます。

さらに、「淡豆豉」は精神を安定させる作用もあり、かぜによる不快感を軽減する助けになります。

銀翹散の服用と使用のポイント

  • かぜの初期に服用:銀翹散は、かぜの症状が現れ始めたときに服用するのが最も効果的です。
  • のどの痛みに特化:寒気を伴うかぜには葛根湯が適していますが、のどの痛みが主な症状であれば銀翹散を選びましょう。
  • 湿度の管理:乾燥した環境はのどの症状を悪化させる可能性があるため、室内の湿度を適切に保つことが推奨されます。

まとめ

風邪の治療には、中医学の漢方薬が効果的です。

特に辛温解表類と辛涼解表類は、風邪の症状に応じた治療法として広く用いられています。

辛温解表類は、寒気や冷えを伴う風邪に適しており、身体を温めて発汗を促す作用があります。

代表的な生薬には、「生姜」や「葱白(がいはく)」が含まれ、これらは風邪の初期段階で使用することで効果を発揮します。

冷えによる頭痛や鼻水が特徴の風邪には、この辛温解表類が最適です。

一方、辛涼解表類は、のどの痛みや発熱を伴う風邪に対して用いられます。

「薄荷」や「菊花」といった生薬が含まれ、身体を冷やして炎症を抑える効果があります。

特に、夏風邪や乾燥した環境での風邪に効果的です。

これにより、風邪による不快感を和らげつつ、早期の回復を目指します。

漢方薬の利点は、自然の成分を使用し、症状の根本から治療できる点にあります。

辛温解表類と辛涼解表類を上手に使い分けることで、風邪の早期回復が期待できるでしょう。

日常生活での健康維持にも役立つため、風邪の予防や軽減に漢方薬を取り入れることをおすすめします。

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薬剤師
河邊甲介

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著者プロフィール

河邊甲介 (薬剤師)

KOSUKE KAWABE

▷有資格

  • 薬剤師
  • 中医薬膳師:本草薬膳学院(学長:辰巳洋)にて資格取得
  • 薬膳素材専門士:本草薬膳学院(学長:辰巳洋)にて資格取得
  • ペットフーディスト

▷経歴

  • 福岡大学薬学部卒
  • 総合病院薬剤部・調剤薬局にて勤務
  • 2024年1月より宮崎県川南町(峠の里)にて漢方×薬膳×腸活のお店「ほどよい堂」を開局

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