漢方で五十肩を改善する:痛みの原因と対策ガイド
五十肩、または肩関節周囲炎は、中年以降の人々に多く見られる痛みを伴う症状で、肩の可動域が制限されることがあります。
この状態は、日常生活においても大きな影響を及ぼし、痛みやこわばりが続くと、仕事や趣味にも支障をきたします。
幸いにも、漢方医学は五十肩の症状に対する有効な治療法を提供しています。
漢方では、体全体のバランスを整えることによって、痛みの根本的な原因を取り除くアプローチが取られます。
本ガイドでは、五十肩の痛みの原因とそれに対する漢方の対策方法について詳しく解説します。
具体的には、効果的な漢方薬や食事療法、生活習慣の改善など、実践的なアドバイスを提供し、五十肩の改善に向けたサポートを行います。
目次
五十肩(肩関節周囲炎)とは
五十肩、または肩関節周囲炎は、50歳代を中心とした中年以降に発症する疾患で、明らかな原因が無く肩の疼痛と可動域制限が生じることが特徴です。
肩関節周囲の組織が加齢により変化することが原因とされ、癒着性関節包炎や凍結肩とも呼ばれます。
肩関節周囲炎の病態
肩関節は人体の中で最も可動域が広い関節であり、そのため負担も大きくなります。
老化により肩関節を構成する骨、軟骨、靱帯、腱などが硬くなり、酷使することで周囲の組織に炎症や損傷が発生します。
この結果、肩の疼痛(主に肩前方)が生じ、可動域制限が見られるようになります。
さらに、関節包や肩峰下滑液包の癒着が進行すると症状は悪化します。
症状の進行と治療法
五十肩の症状は3つの時期に分けられます。
炎症期では疼痛が強く、運動時痛、夜間痛、安静時痛が見られます。
拘縮期では可動域制限が強くなりますが、疼痛は軽減していきます。
回復期では可動域が徐々に改善し、運動時痛も消失します。
各時期は約4ヶ月で、全体で1年ほどで治癒するとされています。
西洋医学における治療法は、炎症期では消炎鎮痛剤の内服や外用薬、ステロイドやヒアルロン酸の関節内注射が行われます。
拘縮期には運動療法やホットパックによる温熱療法が主な治療法となります。
日常生活への影響
五十肩は日常生活に大きな影響を及ぼします。
運動時痛により肩の動きが制限され、髪を整えたり服を着替えることが不自由になることがあります。
また、夜間痛により眠れないほどの痛みを感じることもあります。
これらの症状に対する理解と適切な治療が、五十肩の改善に向けた重要なステップとなります。
漢方的な五十肩(肩関節周囲炎)の概念
五十肩の漢方的解釈
五十肩(肩関節周囲炎)は、漢方医学において「肩不挙」「肩痹」「老年肩」「凍結肩」などと記載され、「痹証」の一種とされています。
年老体弱、労損、外傷、風寒湿邪の侵襲などが主な病因で、これにより肩部周囲の筋肉が慢性的な無菌性炎症を起こします。
特に50歳代に多く見られ、肩部の纏わりつくような疼痛が活動を妨げ、病程は数ヶ月から2年程度とされています。
中医学における病態の理解
中医学では、生命力の源である「腎の精気(腎精)」が20~30歳代でピークを迎え、40歳を過ぎると徐々に衰えるとされています。
腎精が衰えると、外邪(人体に悪影響を与える自然環境の変化)に対するバリア機能も低下し、冷たい風や雨などがきっかけで気血の流れが滞り、肩の痛みを引き起こす原因となります。
肩の痛みが長引くとさらに気血の巡りが悪くなり、関節が硬くなって肩を挙げることができなくなる悪循環に陥ります。
漢方的視点で見る五十肩(肩関節周囲炎)の発生原因
老化(腎虚)
五十肩は、漢方医学において「腎虚」、つまり腎の精気の衰えが原因とされます。
年齢と共に腎精が減少し、生命力やバリア機能が低下することで、肩関節の痛みが発生しやすくなります。
労倦過度
過度な労働や疲労は、五十肩の発症を促進します。
労倦過度により体力が消耗し、気血の流れが滞りやすくなり、肩関節に負担がかかります。
外邪(風・寒・湿・熱)の侵襲
風寒湿熱といった外邪の侵襲は、五十肩の重要な発生原因とされています。
これらの外邪が体内に侵入すると、気血の流れが阻害され、肩部に痛みや炎症が発生します。
姿勢不良
長時間の不良姿勢は、肩関節に過度な負担をかけ、五十肩のリスクを高めます。
特にデスクワークやスマートフォンの使用が多い現代社会では注意が必要です。
運動不足
運動不足も五十肩の原因の一つです。
適度な運動は、気血の流れを促進し、関節の柔軟性を保つために重要です。
脾胃虚弱
脾胃の機能が低下すると、栄養の吸収が悪くなり、気血の生成が不十分になります。
これが肩関節の健康にも影響を及ぼし、五十肩の原因となります。
外傷
過去の外傷が原因で五十肩が発生することもあります。
肩関節の損傷が治癒不全となり、慢性的な痛みや炎症が残る場合があります。
これらの要因が複合的に作用して五十肩が発生するため、漢方医学では総合的なアプローチが重要とされています。
五十肩(肩関節周囲炎)の漢方的発生メカニズムとは?
五十肩(肩関節周囲炎)は、漢方医学において複数の原因で発生します。
以下にその主要なメカニズムを示します。
五十肩(肩関節周囲炎)の漢方的な発生原因
発生原因 | 説明 |
---|---|
風寒湿阻 | 加齢による筋骨の失養に風寒湿邪が侵襲し、気血の流れが停滞して「不通則痛」を引き起こします。風邪・寒邪・湿邪の偏盛により特有の症状が現れます。 |
湿熱阻絡 | 筋骨が失養し、湿熱邪が侵襲するか、脾虚湿盛から化火した湿熱が停滞することで気血の流れが阻害され「不通則痛」を引き起こします。 |
瘀血阻絡 | 加齢、労倦過度、姿勢不良、運動不足、または他の病証の遷延により血の運行が不順となり瘀血が発生し、「不通則痛」を引き起こします。 |
気血両虚 | 過労、睡眠不足、脾胃虚弱により気血不足となり、筋骨失養が甚大となって「不栄則痛」を引き起こします。 |
肝腎不足 | 加齢や過労により肝血や腎精が損耗し、筋骨失養が甚大となって「不栄則痛」を引き起こします。 |
五十肩(肩関節周囲炎)の中医学体質別治療法
五十肩に対する漢方的アプローチは、個々の体質や症状に応じた治療を提供し、症状の根本的な改善を目指します。
体質 | 特徴 | 漢方薬 | ツボ | 食材 |
---|---|---|---|---|
風寒湿邪(ふうかんしつじゃ)体質 | 冷たい湿気にさらされることで気血の流れが滞りやすく、発病初期の持続的な痛みが見られ、温めると一時的に和らぎます。 | 疎経活血湯、桂枝加苓朮附湯 | 大椎、陰陵泉(お灸を多用) | ネギ、生姜、シナモン、紫蘇、玉ねぎ、ニンニク、山椒、ニラ、酢 |
血瘀(けつお)体質 | 刺すような痛みがあり、夜間に悪化しやすく、痛みの場所が一定で長期化しやすい。 | 疎経活血湯、桂枝茯苓丸 | 血海、三陰交 | 紅花、シナモン、黒糖、生姜、ネギ、玉ねぎ |
気血両虚(きけつりょうきょ)体質 | 倦怠感、食欲不振、不眠が見られ、長期化しやすい。 | 独活寄生湯、大防風湯 | 足三里、気海 | 豆腐や湯葉などの大豆製品、卵、いんげん豆、山芋、人参、ほうれん草 |
まとめ
五十肩(肩関節周囲炎)は、漢方医学で「肩不挙」や「肩痹」とも呼ばれ、加齢や外邪(風寒湿邪)、気血の不調が原因で発生します。
風寒湿邪が侵襲し気血の流れが停滞することで「不通則痛」を引き起こし、痛みが生じます。
また、湿熱邪や瘀血、気血両虚、肝腎不足も原因とされています。
改善には、風寒湿邪体質には『疎経活血湯』や『桂枝加苓朮附湯』が効果的で、冷えや重だるさを改善します。
血瘀体質には『疎経活血湯』や『桂枝茯苓丸』が適し、刺すような痛みや夜間の悪化を緩和します。
気血両虚体質には『独活寄生湯』や『大防風湯』が推奨され、倦怠感や不眠を改善します。
各体質に合わせた漢方薬と食材を活用することで、五十肩の症状を根本から改善することが可能です。
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著者プロフィール
河邊甲介 (薬剤師)
KOSUKE KAWABE
▷有資格
- 薬剤師
- 中医薬膳師:本草薬膳学院(学長:辰巳洋)にて資格取得
- 薬膳素材専門士:本草薬膳学院(学長:辰巳洋)にて資格取得
- ペットフーディスト
▷経歴
- 福岡大学薬学部卒
- 総合病院薬剤部・調剤薬局にて勤務
- 2024年1月より宮崎県川南町(峠の里)にて漢方×薬膳×腸活のお店「ほどよい堂」を開局
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