漢方医学でみるがんの治療ポイント

漢方医学は、古来より病の根本を治すことを重視してきました。

がんの治療においても、西洋医学と異なるアプローチで患者の体質や症状に応じた個別の治療法を提供します。

漢方では、がんは単なる局所的な病変ではなく、体全体のバランスの乱れから生じるものと考えられています。

そのため、気血津液(水)の調整や五臓六腑の機能改善を通じて、免疫力を高め、体内の環境を整えることが重視されます。

さらに、漢方薬の使用により副作用を軽減し、生活の質を向上させることも重要なポイントです。

本稿では、漢方医学の視点から見たがん治療の具体的なポイントについて探ります。

がんに効果がある漢方薬は、患者一人ひとりの症状や体質に応じて異なる処方が必要です。

漢方医学では、がん治療において「扶正」と「袪邪」という二つの重要な概念を用います。

「扶正」は体の免疫力を高め、「袪邪」はがん細胞を排除することを目指します。

この二つのアプローチを組み合わせることで、漢方薬は個々の患者に適した治療を提供します。

がん治療における漢方の役割について、さらに詳しく探っていきましょう。

漢方的視点から見たガンの発症メカニズム

漢方的に見ると、がんは正気(体力・抵抗力)の不足に、ストレス、過労、睡眠不足、飲食の不摂生、急激な気候変化などの外部刺激が加わることで、臓腑・経絡の機能が失調し、瘀血1や痰濁などの病理産物が積滞して発症すると考えられます。

漢方では、病気の原因を外因、内因、不内外因2、病理的産物3の4つに分類します。

外因は六淫で、「風邪(ふうじゃ)、寒邪(かんじゃ)、暑邪(しょじゃ)、湿邪(しつじゃ)、燥邪(そうじゃ)、火邪(かじゃ)」を指します。

六淫は、カラダを守る衛気(えき)が弱まると外部から侵入しやすくなり、病気の原因となります。

衛気とは、外部からの刺激(邪気)からカラダを守る働きのことをいいます。

内因は七情(しちじょう)で、「喜・怒・憂・思・悲・恐・驚」の7つの感情を指します。

七情は適度であればカラダに良い影響を与えますが、過度になると直接内臓を損傷し、内臓の気の流れに異常を引き起こすことがあります。

不内外因は、飲食の不摂生、過労、睡眠不足などの生活習慣や外部環境の急激な変化が含まれます。

これらの要因が重なり、臓腑・経絡のバランスが崩れたとき、がんが発症すると考えられます。

漢方医学では、がんの発症にはこれら複合的な要因が関与していると考えられ、総合的な治療アプローチが必要とされています。

漢方的視点からがんの発症メカニズムを詳しく理解し、適切な治療法を見つけるための指針を提供します。

  1. 基礎中医学では、血瘀と瘀血を区別しています。血瘀は血液の流れが滞る状態を指し、その結果生じた病理産物(血腫、凝塊、血栓など)を瘀血と呼びます。しかし、日本漢方ではこの区別がなく、これらを総称して瘀血と呼ぶことが一般的です。 ↩︎
  2. 不内外因は、飲食の不摂生や疲労などを意味します。 ↩︎
  3. 病理的産物には、血の流れが悪くなる「瘀血(おけつ)」と、体内の水分が代謝障害によって滞った病的なもの「痰飲(たんいん)」があります。 ↩︎

漢方医学の視点から見たがん治療の基本原則

東洋医学には、「扶正袪邪」という基本原則があります。

この原則では、「扶正」は体力や抵抗力を増強することを意味し、「祛邪」は体に不都合なものを取り除くことを指します。

がん治療においては、「祛邪」は直接がん細胞を攻撃する方法であり、抗がん剤や放射線療法などがこれに該当します。

東洋医学のアプローチでは、一部の漢方薬が「祛邪」の働きを持ちますが、その得意分野は「扶正」にあります。

つまり、体力や抵抗力を増強することで、間接的にがんに対処し、治癒力を高めることが重視されます。

また、西洋医学によるがん治療が引き起こす副作用(例えば、体力低下や貧血、胃腸障害、倦怠感、浮腫など)を軽減する役割も果たします。

両者を組み合わせることで、お互いの短所を補い、長所を最大限に活かす治療法が模索されています。

がん治療に役立つ生薬の一覧とその効能

扶正と袪邪のバランスを取ることが重要ながん治療において、生薬は有効な補助手段となり得ます。

例えば、黄耆(おうき)は免疫力を高める作用があり、化学療法や放射線治療の副作用を軽減する助けとなることが知られています。

また、当帰(とうき)は血行を促進し、抗がん効果があるとされています。

さらに、茯苓(ぶくりょう)は体内の水分調整を助け、むくみを軽減すると同時に免疫系を強化する作用もあります。

これらの生薬は、西洋医学との統合によって症状の緩和や治療効果の向上に寄与することが期待されています。

祛邪(直接がん細胞を攻撃する)の効果がある生薬一覧

分類生薬
清熱解毒黄柏、地楡、山梔子、竜胆、半枝蓮、苦参、山豆根、地骨皮、白花蛇舌草、蒲公英、金銀花、牛黄、烏梅、魚腥草、黄連、黄芩
軟堅散結前胡、半夏、威霊仙、菖蒲、海藻、木瓜、瓜蔞、殭蚕、昆布、天南星、麝香、莱服子、夏枯草、牡蛎、遠志
理気活血化瘀延胡索、木香、紫草根、紅花、牡丹皮、蒲黄、香附子、全蝎、青皮、川楝子、烏薬、水蛭、桃仁、赤芍、艾葉、川芎、田七、朮、枳殻、三稜

扶正(体力や抵抗力を増強する)の効果がある生薬一覧

分類生薬
補気健脾五加皮、大棗、山薬、薏苡仁、甘草、人参、白朮、黄耆
養血滋陰阿膠、白芍、竜眼肉、熟地黄、鶏血藤、何首烏、枸杞子、当帰
養陰生津玉竹、亀板、鼈甲、山茱萸、生地黄、沙参、百合、天門冬、麦門冬
益腎助陽淫羊藿、補骨脂、桑螵蛸、続断、杜仲、黄精、梅寄生、冬虫夏草、肉蓯蓉

まとめ

漢方医学では、がん治療において以下のポイントが重要とされています。

まず、体質を整え、免疫力を高めるために補気健脾の漢方薬が用いられます。

また、養血滋陰の薬で体力を回復し、副作用を軽減する助けとなります。

さらに、養陰生津の漢方薬で体内の水分バランスを調整し、体力を保つことが重要です。

最後に、益腎助陽の薬で身体の基本的な機能を強化し、抗がん治療の効果を高めます。

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薬剤師
河邊甲介

宮崎県の川南町にある峠の里からの絶景を眺めながら、漢方と薬膳を組み合わせた腸活相談が受けられる「薬局×セレクトショップ」です。

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著者プロフィール

河邊甲介 (薬剤師)

KOSUKE KAWABE

▷有資格

  • 薬剤師
  • 中医薬膳師:本草薬膳学院(学長:辰巳洋)にて資格取得
  • 薬膳素材専門士:本草薬膳学院(学長:辰巳洋)にて資格取得
  • ペットフーディスト

▷経歴

  • 福岡大学薬学部卒
  • 総合病院薬剤部・調剤薬局にて勤務
  • 2024年1月より宮崎県川南町(峠の里)にて漢方×薬膳×腸活のお店「ほどよい堂」を開局

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薬剤師であり、漢方×薬膳×腸活の専門家として、「ほどよい堂」を運営しています。
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