手の震えを改善する漢方医学のアプローチ:体内バランスの整え方と具体的治療法

手の震えを心配して神経内科を受診する患者さんは多く、その原因として「パーキンソン病」を疑うことが多いです。

手の震えは、日常生活に影響を与えることが多く、その原因はさまざまです。

西洋医学では振戦と呼ばれ、神経系の異常が主な原因とされますが、漢方医学では体内のバランスの乱れと捉えます。

漢方医学では、震えの症状を気血の滞りや陰陽の不均衡として診断し、それに基づいて治療を行います。

震えの治療ポイントは、個々の体質や症状に応じて調整されることが重要です。

本記事では、漢方医学における震えの原因と治療法について詳しく解説し、体のバランスを整えるための具体的なアプローチを紹介します。

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振戦(しんせん)とは?筋肉の収縮と比較的規則的な運動の詳細解説

振戦とは、自分の意思に反して筋肉が収縮し、比較的規則的な運動が起こる状態を指します。

振戦には様々な種類があり、その特徴は以下の通りです。

  • 姿勢や動きによる違い:特定の姿勢や動作中に起こる場合があります。
  • 震えの大きさや速さ:震えの程度や頻度は個人差があります。

震えのタイプ完全ガイド:動作中と安静時の違いを理解しよう

震えには様々なタイプがあり、その原因や特徴も多岐にわたります。

動作中に見られる震え、安静時に見られる震えなど、症状の現れ方によって分類されます。

それぞれのタイプの震えは、異なる病態や状況に関連しており、正確な診断と適切な治療が必要です。

タイプ説明主な原因
動作時振戦動作中に関係しておこる震え-
姿勢時の振戦
(しせいじしんせん)
同じ姿勢をとり続けているときに生じる震え。重力に逆らって手を挙げているときに見られやすい。新聞を読んだり、コップを持ち上げた状態などで発生。生理的振戦、本態性振戦、甲状腺機能亢進症、アルコール依存症
運動時振戦
(うんどうじしんせん)
手を動かしている最中に生じる震え。動作の開始直後から発生し、目標物に手が届いて動作が終わると収まる。コップで水を飲むときなどに見られる。本態性振戦
企図振戦
(きとしんせん)
動作中に目標物に近づくと震えが強くなる。不規則で大きな震えが見られる。コップで水を飲む際に口に届きそうになると震えが増す。小脳の病気
安静時振戦
(あんせいじしんせん)
じっとしているときに生じる震え。力が抜けているときに発生し、動作を行うことで震えが止まる。パーキンソン病

手の震えの原因と特徴:生理的振戦からパーキンソン病まで徹底解説

手の震えにはさまざまな原因があり、それぞれ特徴が異なります。

生理的振戦や本態性振戦、パーキンソン病、甲状腺機能亢進症、アルコール依存症、薬剤性振戦などが代表的な例です。

これらの震えは、生活習慣や病態によって異なるため、正確な診断と適切な治療が重要です。

病態原因特徴
生理的振戦寒さや過度の緊張、重いものを持ち続けた時などに一時的に見られる震え。誰にでも起こる生理的な震え。甲状腺機能亢進症の震えは、生理的振戦が増強した状態と考えられます。
本態性振戦 明確な原因が特定できない震え。遺伝的要因も関与することがあります。手の震えの原因として最も多く、40歳以上の4%に見られ、高齢者でさらに頻度が増えます。動作時振戦で、コップを持った時や文字を書く時に気づかれやすい。安静時には震えが見られず、左右の手での差はあまり大きくありません。
パーキンソン病パーキンソン病に特徴的な震え。「丸薬丸め運動」と呼ばれる親指と人差し指をこすり合わせるような動きが1秒間に4-6回程度の頻度で見られます。じっと座ってテレビを見ている時や、手を下ろして歩いている時などに見られ、緊張で出現しやすくなります。左右の手で差があり、足にも震えが出ることがあります。震え以外に手足の動きが鈍くなる症状も見られます。
甲状腺機能亢進症甲状腺機能の異常。手を挙げた姿勢での細かい震え(姿勢時振戦)が見られます。甲状腺機能を薬で正常に治療することで、震えは軽減します。
アルコール依存症長期間のアルコール依存。手を挙げた姿勢での震えが見られ、手の運動により震えが強くなりやすい。特に飲酒を中断した時に震えが出やすくなります。依存症の期間が長くなると、常に震えが出る場合もあります。
薬剤性振戦喘息治療の気管支拡張剤(テオフィリン製剤、β刺激剤)や精神疾患やうつ病の治療薬。運動時や姿勢時に見られる振戦を誘発することがあります。特定の薬がパーキンソン病に見られるような震えの原因となることもあります。

震えの治療法ガイド:症状別アプローチと効果的な管理方法

震えの治療には、症状の原因に応じた多岐にわたるアプローチがあります。

精神的緊張が原因となる場合、リラクゼーションや訓練が有効です。

本態性振戦では、βブロッカーや精神安定剤が使用され、症状の軽減が見込まれますが、高齢者では注意が必要です。

パーキンソン病では、専門的な治療薬が使用されます。

治療法は個々の症状や患者のニーズに応じて選択され、生活の質を維持しながら効果的な管理が目指されます。

震えの治療は、個々の症状や生活の質を考慮しながら最適な方法を選ぶことが重要です。

病態治療法注意点
一般的な緊張による震え緊張をほぐす訓練、人前で話す際の十分な練習、漢方薬精神的緊張の緩和が重要
本態性振戦βブロッカー、精神安定剤、漢方薬高齢者では眠気やふらつきの原因となる可能性があるため、生活の質との兼ね合いを考慮
パーキンソン病パーキンソン病治療薬、漢方薬個々の症状に応じた治療が必要

震えの漢方治療:肝と腎を支える中医学的アプローチ

漢方医学では、パーキンソン病の進行を遅らせたり、震えの症状を和らげるために漢方薬が処方されることがあります。

特に関連が深いのは、五臓の「肝」と「腎」です。

肝は体の機能を調節し、情緒を安定させる「疏泄(そせつ)」の役割を担い、筋肉や関節の運動を調整し運動神経系を支配します。

腎は成長、発育、生殖を管理する機能を持ち、ホルモンや免疫機能と密接に関連しています。

加齢や過労、強い薬や治療によって腎の機能が低下しやすいため、漢方ではこれらの臓腑を支援する治療が行われます。

日常生活で腎や肝を支えるためには、食事に注意が必要です。

腎には黒豆やブロッコリー、種実類が良く、肝には香草類や柑橘系の果物が助けになります。

規則正しい生活を送り、ストレスを溜めないように心がけましょう。

正しい姿勢を保ち、深い呼吸を意識することも重要です。

腎陰虚(じんいんきょ)証を改善する漢方薬:パーキンソン病の予防と症状緩和

加齢が進むと、腎の機能低下による「腎陰虚(じんいんきょ)」証が現れることがあります。

腎の陰液(腎陰)が不足すると、体内の基本的な成分である血、津液、精が不足し、腎の機能が低下します。

特に「髄を生じ、脳に通じる」腎の機能が衰えると、パーキンソン病の発症リスクが高まる可能性があります。

この場合、漢方薬による腎陰を補う治療が推奨され、パーキンソン病の症状緩和や進行の遅延を目指します。

以下に漢方薬の情報を表にまとめました。

これらの漢方薬は、それぞれ異なる症状に対して効果的に作用します。自分の症状に最も適したものを選ぶことで、より効果的な治療が期待できます。

漢方薬名効果・特徴対象となる症状
六味丸腎陰虚のファーストチョイス。体内の陰を補い、腎機能を強化。小児の発育障害、老化の予防
杞菊地黄丸六味丸に目の疲れ、かすみ、充血を取る枸杞子と菊花を加えたもの。六味丸タイプの目の症状
知柏地黄丸六味丸にほてり、のぼせ、イライラなどの熱症状を取る知母と黄柏を加えたもの。六味丸タイプの熱症状、イライラ
八味地黄丸腎陽虚のファーストチョイス。腰から下が冷えて重だるく感じる場合、夜間の頻尿
牛車腎気丸八味地黄丸にむくみやしびれを取る牛膝と車前子を加えたもの。八味地黄丸の効果をさらに強化。むくみ、しびれ

肝陰虚証の理解と治療:筋肉の調節不全とパーキンソン病への影響

肝の機能が失調している場合、「肝陰虚(かんいんきょ)」証が考えられます。

肝の陰液(肝陰)が不足すると、慢性疾患やストレス、緊張、感情の激しい変動などが影響し、陰液が消耗します。

この状態では、「筋をつかさどる」機能が失調し、筋肉の収縮・弛緩が調節できなくなり、結果としてパーキンソン病が発症する可能性があります。

肝の陰液を補う漢方薬による治療が推奨され、パーキンソン病の症状を改善し、進行を抑えることを目指します。

以下に肝血虚と虚熱の症状を表にまとめました。

肝血虚が進行すると、体全体の陰液が不足し、相対的に陽気が上に回るため、虚熱の症候が現れます。

これにより、肝血虚の症状に加え、虚熱の症状が見られることがあります。

症状のカテゴリ詳細
肝血虚の症状目のかすみ、筋肉の痙攣、不眠、疲労感、めまいなど
虚熱の症状胸脇痛、口渇、いらいら、熱感、顔の火照り、頬の紅潮など

以下に肝血虚と虚熱の治療法を表にまとめました。

これらの漢方薬は、肝血虚および虚熱の症状に対して効果的に作用します。

正確な診断と適切な処方を受けることで、症状の改善が期待できます。

自分の症状に最も適したものを選ぶことが重要です。

漢方薬構成成分・効果
一貫煎浜防風、麦門冬、当帰、生地黄、枸杞子、川楝子を組み合わせた処方。
エキス剤
滋陰降火湯陰を滋養し、火を降ろす効果があります。
柴胡清肝湯肝の熱を清め、炎症を抑える効果があります。
温清飲血を補い、熱を冷ます効果があります。

肝陽化風(かんようかふう)証の症状と対策:肝機能失調とパーキンソン病リスク

肝の機能が失調すると、「肝陽化風(かんようかふう)」証が生じやすくなります。

この証は、肝の陰液不足により肝の機能が不安定になり、ストレスなどが原因で肝気の流れが乱れて肝陽が上昇する状態です。

長期間この状態が続くと、「筋をつかさどる」肝の機能が乱れ、内風(肝風)が生じることで、パーキンソン病が発症する可能性があります。

肝風は体内で生じる風邪であり、揺れ動くような症状を引き起こします。

この証に対しては、肝陽を鎮めて肝風を和らげる漢方薬を用いてパーキンソン病の治療に取り組みます。

以下に、肝陽化風の症状と治療法、および肝陰虚の症状が顕著な場合の併用漢方薬を表にまとめました。

これらの漢方薬は、それぞれの症状に対して効果的に作用します。

カテゴリ詳細
肝陽化風の症状- 激しいめまい
- 頭痛
- 手足のふるえやしびれ
- 筋肉のけいれん
- ろれつが回らない
- 半身不随(症状が重い場合)
- 歩行困難
- 顔面神経麻痺
肝陽化風の治療法
釣藤散(ちょうとうさん)肝陽化風の症状を和らげる効果があります。
抑肝散(よくかんさん)肝陽化風の症状を抑える効果があります。
肝陰虚の症状が顕著な場合の併用漢方薬
六味地黄丸(ろくみじおうがん)肝陰虚を改善する効果があります。
杞菊地黄丸(こきくじおうがん)肝陰虚の目の症状を改善する効果があります。

気血両虚(きけつりょうきょ)証の症状と治療法:気虚と血虚がもたらす影響

動きたがらない、しゃべりたがらない、声に力がないなどの症状が見られる場合は、「気血両虚(きけつりょうきょ)」証が考えられます。

この証は、「気虚」と「血虚」の両方が同時に生じている状態で、生命エネルギーを意味する「気」が不足し、また人体に必要な血液や栄養を意味する「血」も不足しています。

気血の不足により脳の機能が低下し、その結果としてパーキンソン病が発症することがあります。

この場合、漢方薬を使って気血を補うことがパーキンソン病の治療として考えられます。

こちらに、代表的な気血双補剤の情報を表にまとめました。

これらの漢方薬は、気血両虚の状態に適しており、それぞれ異なる特性を持っています。

漢方薬名特徴
八珍湯
(はっちんとう)
四君子湯と四物湯を合わせた補気血剤。全身の気と血を補う効果がある。
十全大補湯
(じゅうぜんたいほとう)
八珍湯に桂皮と黄耆を加えて強化した補気血剤。体力を回復し、免疫力を向上させる。
人参養栄湯
(にんじんようえいとう)
十全大補湯から川芎(せんきゅう)を除き、遠志(おんじ)、五味子(ごみし)、陳皮(ちんぴ)を加えたもの
加味帰脾湯
(かみきひとう)
心血虚の改善に特化し、身体全体の気と血を調和させる作用がある。

その他の気と血を補う漢方薬

「気血双補剤」と分類されなくても、気と血を補う生薬を含んだ漢方薬は数多くあります。

代表的なものに以下があります。

  • 芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん)
  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
  • 加味逍遥散(かみしょうようさん)
  • 女神散(にょしんさん)

痰濁上擾(たんだくじょうじょう)証と漢方治療:痰飲の排出とパーキンソン病の改善

ふらつきや立ちくらみ、幻覚が見られる場合、「痰濁上擾(たんだくじょうじょう)」証が考えられます。

この証は、体の上部に痰飲が上昇している状態を指し、痰飲とは水分代謝の異常で津液が異常な水液に変化したものです。

痰飲が気の通り道を乱し、気の流れが阻害されることで、情緒や意識、感覚の調節が困難になり、結果としてパーキンソン病が発症することがあります。

この場合、痰飲を排出し下降させる漢方薬を用いて、パーキンソン病を治療します。

振戦という症状は、中医学では「風」の影響とされます。

風は六淫(風寒暑湿燥火)の一つで、体外からの邪気であり、風邪の代表的な特徴は「動く、揺れる、上に舞い上がる」ことです。

振戦はこの風邪の属性に合致し、特に上肢や頭部に現れやすい傾向があります。振戦には幾つかの種類があり、本態性振戦やパーキンソン病の振戦などが含まれます。

内風として知られる振戦は、体内から生じる風邪であり、血虚生風や陰虚動風などのパターンが存在します。

内風による振戦は体内から生じる風邪であり、血虚生風や陰虚動風などのパターンがあります。

漢方薬では、七物降下湯、大定風珠、天麻鈎藤飲、鎮肝熄風湯、半夏白朮天麻湯などが証に応じて処方され、内風を調整する助けとなります。

この表は、それぞれの漢方薬の特徴と主な用途を示しています。

漢方薬名特徴主な用途
七物降下湯血虚生風に対する漢方薬で、血液の不足による風邪を調整します。(滋陰養血、平肝熄風)血虚による振戦、頭痛、めまいなど
大定風珠
(だいていふうしゅ)
陰虚動風に効果的な漢方薬で、陰虚が原因で生じる振戦に対して使用されます。(滋陰養血、滋陰熄風、柔肝熄風)陰虚による振戦、不眠、神経過敏など
天麻鈎藤飲陰虚陽亢化風に対処するための漢方薬で、陰虚がありながらも陽が亢進している状態に適しています。(補益肝腎、清熱活血、平肝熄風、清熱安神)陰虚陽亢による振戦、頭痛、目眩、不眠など
鎮肝熄風湯風痰上擾による振戦に使用される漢方薬で、肝臓の機能を鎮め、風邪と痰の排出を促進します。(滋陰潜陽、鎮肝熄風)風痰による振戦、頭痛、吐き気、胃部不快感など
半夏白朮天麻湯風痰上擾に伴う吐き気や頭痛などの症状に適した漢方薬で、痰の排出を助けながら体内の風邪を調整します。(健脾化飲、補脾燥湿、定風止暈、降逆止嘔、熄風化痰)風痰による振戦、吐き気、頭痛、呼吸困難など

参考文献

・国立研究開発法人 国立長寿医療研究センターHP

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薬剤師
河邊甲介

宮崎県の川南町にある峠の里からの絶景を眺めながら、漢方と薬膳を組み合わせた腸活相談が受けられる「薬局×セレクトショップ」です。

「中医薬膳師×薬膳素材専門士×ペットフーディスト」の資格を有する薬剤師が、体調不良、ダイエットやアトピーなどの悩みにも親身に対応します。

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著者プロフィール

河邊甲介 (薬剤師)

KOSUKE KAWABE

▷有資格

  • 薬剤師
  • 中医薬膳師:本草薬膳学院(学長:辰巳洋)にて資格取得
  • 薬膳素材専門士:本草薬膳学院(学長:辰巳洋)にて資格取得
  • ペットフーディスト

▷経歴

  • 福岡大学薬学部卒
  • 総合病院薬剤部・調剤薬局にて勤務
  • 2024年1月より宮崎県川南町(峠の里)にて漢方×薬膳×腸活のお店「ほどよい堂」を開局

身体とこころの安心をお届けします

薬剤師であり、漢方×薬膳×腸活の専門家として、「ほどよい堂」を運営しています。
中医学的体質診断を基に、個別に最適な健康アドバイスを提供し、無料相談も実施中。
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