漢方医学でみるアトピー性皮膚炎の治療ポイント

以下は、アトピー性皮膚炎に関する情報を表にまとめたものです。

項目詳細
疾患名アトピー性皮膚炎(Atopic Dermatitis)
主な特徴と症状- 皮膚の乾燥と掻痒感
- 湿疹(皮膚炎)
- 皮膚の肌荒れ
- 皮膚の色素沈着
発症の原因- 遺伝的要因
- 免疫系の異常反応
- 環境要因
診断と治療- 診断は主に臨床症状と歴から行われる
- 治療には保湿療法、ステロイド外用薬、免疫抑制剤などが用いられる
予後と管理- 多くの場合、成長に伴い症状が改善するが、慢性化することもある
- 管理にはトリガーの避け方と適切なスキンケアが重要

漢方の観点から考えるアトピー性皮膚炎のメカニズム

漢方の観点から考えるアトピー性皮膚炎のメカニズムは、西洋医学とは異なる視点で疾患の原因と治療を捉えます。

漢方では、アトピー性皮膚炎は体内の気や血の不調和による結果とされ、主に「肺」「脾」「腎」などの臓腑や「気」「血」などの生理的概念を基にして説明されます。

具体的には、肺の機能低下が皮膚の湿潤を失わせ、脾の機能低下が皮膚の栄養供給不足を引き起こし、腎の機能低下が水分代謝の不均衡を招くと考えられています。

また、気血の流れが滞ることで皮膚の免疫機能が低下し、外部刺激に対する過敏反応が起こるともされます。

漢方治療では、これらの臓腑や生理の調和を目指し、体質改善を図ることが治療の中心となります。

具体的な処方としては、湿熱を清める作用のある生薬や、血の滞りを改善する生薬が選ばれることが多いです。

総じて、漢方の観点から見るアトピー性皮膚炎のメカニズムは、西洋医学とは異なる独自の理論に基づいており、病因の根本的な認識と治療方針が示されています。

アトピー性皮膚炎の発症を捉える基本的な漢方の観点

アトピー性皮膚炎は外部環境、ストレス、疲労、食事、ホルモンバランスや月経など多くの要因に影響されやすく、治療が難しい疾患です。

その発症メカニズムは複雑で、漢方では「正気不足(気・血・津液・精・陰・陽のバランスの乱れ)」が最も根本的な原因とされています。

この正気不足に、外部からの六淫(気候要因)、食事の乱れ、ストレス、過労などが加わることで、アトピー性皮膚炎が発症または悪化すると考えられています。

正気不足が引き起こすアトピー性皮膚炎のメカニズム

気虚になると、気の防御作用が低下し、皮膚のバリア機能が弱まり、外部刺激に過敏に反応する傾向があります。

また、気化作用の低下により血や津液、精などの生成が不足し、さらに正気不足が生じて、皮膚の栄養不足につながることがあります。

血虚では、血の栄養・滋潤作用が低下し、皮膚が乾燥し、痒みやカサカサした皮膚の表れが見られることがあります。

津液不足により、皮膚の滋潤作用が低下し、乾燥やカサカサした状態が生じ、白い薄片がポロポロと落ちることがあります。

また、陰虚が進行すると、皮膚の乾燥に加えて、赤みや熱感などの熱症状が現れることもあります。

さらに、腎精の不足は副腎機能にも影響を与え、全身のエネルギー調整に影響を及ぼす可能性があります。

漢方医学で見た五臓とアトピー性皮膚炎の関係性

胃腸(消化機能)の低下が招く脾失健運のリスク

漢方医学では、「脾は肌肉を主る」と言い、ここでの脾は現代の消化器全般を指します。

アトピー性皮膚炎の発症部位である肌肉の健康は脾の働きに密接に関連しており、その健全さは肌肉の栄養供給に影響します。

脾は運化によって水穀の精微を供給し、気・血・津液・精などの正気生成の基礎となる重要な物質を生み出します。

したがって、「脾は後天の本、気血生化の源」と表現されることもあります。

脾の機能低下により肌肉の栄養が不足し、血虚や陰虚が生じると皮膚は乾燥や痒みを示します。

さらに、気虚による防御機能の低下は皮膚のバリア機能を弱め、外部刺激に過敏に反応しやすくなり、伝染性軟属腫や伝染性膿痂疹などの感染症にかかりやすくなります。

長期間の脾失健運により腎精も不足し、副腎機能にも影響を及ぼすことがあります。

さらに、水湿の停滞が脾失健運から生じると、ジクジクとした滲出液が見られ、化熱して湿熱となると、赤みやジクジクが悪化します。

ストレスとイライラが原因?肝気鬱結の症状と対策

漢方医学では、「肝は疏泄を主る」と言われ、肝臓は全身の気・血・水液の流れや精神情志活動、消化機能を調整し、これを肝の疏泄作用と呼びます。

特にストレスなどの精神的な刺激を受けやすい臓器が肝であり、ストレスが肝臓に影響を与えると、肝の疏泄作用が乱れることがあります。

その結果、気・血・水液の流れや消化機能が低下し、脾臓の機能も弱体化します。

この状態が続くと、皮膚の栄養不足やイライラから熱を生じ、血の熱を増すことで、かゆみ、紅斑、血痂などの皮膚症状が生じることがあります。

当薬局では、アトピー性皮膚炎の患者さんの中には、皮膚の症状自体がストレスの要因になっているケースが多く見られます。

特に小児のアトピー患者は、いじめの対象になることもあります。

漢方医学による治療経験では、肝の疏泄機能を正常にすることで、皮膚の症状の改善とともに、心身の健康も回復することがあります。

肺の弱りと肺気虚弱の関係を理解する

漢方医学では、「肺は皮毛に合す」と言われ、皮毛は皮膚・汗腺・体毛を包括し、汗の分泌調節や外部刺激からの防御を担っています。

肺の正常な機能により、皮膚は潤いがあり、外部刺激やアレルゲン、細菌、ウイルスからの防御能力が高まります。

しかし、肺気が虚弱で皮毛に衛気や津液を送る機能が低下すると、皮膚の潤いやツヤが失われ、防御作用が弱まります。

その結果、外部刺激の影響を受けやすくなり、伝染性軟属腫(水イボ)、伝染性膿痂疹(とびひ)、カポジ水痘様発疹症などの感染症にもかかりやすくなります。

腎気虚衰がもたらす健康への影響とは?

漢方医学において、「腎は精を蔵す。」と言われる腎精は、生命活動の基盤であり、エネルギーやホルモンとして理解されます。

腎精は先天の精を基にし、後天の精微から生成され、脾胃の運化によって補充されます。

腎は「先天の本」、脾胃は「後天の本」とされ、この腎精は腎陽と腎陰に分けられます。

腎陰と腎陽は陰陽の根本とされ、「精血同源」から、腎精が不足すると気・血・津液・精などの正気も不足し、皮膚のバリア機能が低下し、乾燥や痒みが生じる可能性があります。

また、腎精不足による陰虚から虚熱が生じ、紅斑や血痂などの症状も見られることがあります。

さらに、ステロイドの長期使用などが腎を傷めることも考慮されます。

瘀血の形成と健康への影響:漢方のアプローチ

長期間にわたるアトピー性皮膚炎は、血液の流れが悪くなり、漢方でいう「瘀血」が形成されることがあります。

この状態では、皮膚が黒ずんだり、肥厚したり、甲錯(こうさく)などの変化が見られます。

特に成人型アトピーでは、この現象がより顕著にみられることが多いです。

※肌膚甲錯(きふこうさく):皮膚が枯燥して潤沢を失い、角化、落屑、知覚異常などを伴うもの。

漢方で学ぶ外部環境と心身の調和

漢方医学では、人体に影響を及ぼす気候変化を「六淫」と呼び、「風・寒・暑・湿・燥・熱」の六種の邪が存在します。

これらの六淫の邪は、アトピー性皮膚炎の根本的な原因ではありませんが、他の病機の誘因や増悪因子となることがあります。

六淫と皮膚症状:漢方で理解する気候の影響

漢方医学では、「六淫」という概念があり、風、寒、暑、湿、燥、熱の六種の気候要因が人体に与える影響を指します。

これらの気候要因が皮膚症状にどのように関わるか、以下に具体的に解説します。

六淫の種類皮膚症状への影響
風(風邪)皮膚の表面を刺激し、湿疹やかゆみを引き起こす。風邪を引くことで皮膚の抵抗力が低下し、アトピー性皮膚炎の発症や悪化につながる可能性がある。
寒(寒冷)寒冷な気候は皮膚の血液循環を悪化させ、乾燥や冷えによる皮膚トラブルを引き起こす。冬季には乾燥した空気が皮膚のバリア機能を弱め、
湿疹やひび割れが起こりやすくなる。
暑(暑気)暑気が皮膚に直接作用し、湿疹や蕁麻疹の発症を促進する。暑さによる汗の増加が皮膚の湿疹を悪化させることもある。
湿(湿気)湿気の多い環境では皮膚が湿潤になりやすく、かぶれや真菌感染のリスクが高まる。湿気が原因で湿疹が悪化することがある。
燥(乾燥)燥気が皮膚の水分を奪い、乾燥やかゆみを引き起こす。乾燥した季節や空調の効いた部屋では、保湿が重要である。
熱(熱気)熱気が皮膚の炎症を促進し、湿疹や発赤を引き起こすことがある。熱中症などの熱による体調不良が皮膚にも影響を与えることがある。

アトピー性皮膚炎の漢方治療における重要な視点とは?

アトピー性皮膚炎の治療の原則は、「扶正袪邪」に基づいています。

具体的には以下のポイントが重要です。

  1. 症状の対応
    現在の痒み、赤み、乾燥、鱗屑、痂皮、湿潤などの不快な症状に応じて、皮膚の状態や段階に合わせた治療を行います。
    これは一時的な対症療法であり、根本的な治療には第2のポイントが重要です。

  2. 扶正
    気、血、津液、精及び五臓六腑の機能を充実させることで、皮膚を滋養し、本来の健康な皮膚状態を取り戻すことを主たる治療目標とします。
    これにより、アトピー性皮膚炎の症状を根本から改善します。

  3. 感染症の予防
    感染症はアトピー性皮膚炎の治療を妨げる要因となります。
    適切なスキンケアと漢方薬を使用することで、感染症のリスクを低減し、治療の効果を最大化します。

これらのアプローチを段階的にまたは併用して行うことで、アトピー性皮膚炎の管理と治療が効果的に進められます。

アトピー性皮膚炎の注意点と予防方法:生活環境の見直し方

過度の食事制限は、気血両虚などを引き起こし、かえってアトピー性皮膚炎を悪化させることが多いです。

偏食を避け、適量をバランスよく摂取することが重要です。

特に、加工食品(ケーキやプリンなど)には食品添加物や具体的な成分量が分かりにくいため、可能な限り避けるべきです。

代わりに、単一の食品からの栄養摂取を心掛けると良いでしょう。

消化器系の健康もアトピー性皮膚炎の管理に重要です。

消化器の不調がアレルギー反応を引き起こすリスクが高まるため、腸の健康を改善するための方法(腸活)を推奨します。

過度なアルコール摂取や睡眠不足、ストレスは自律神経のバランスを崩し、免疫と抵抗力を低下させるため、アトピー性皮膚炎を悪化させる要因となります。

規則正しい生活習慣を心掛けることが、アトピー性皮膚炎の管理において重要です。

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薬剤師
河邊甲介

宮崎県の川南町にある峠の里からの絶景を眺めながら、漢方と薬膳を組み合わせた腸活相談が受けられる「薬局×セレクトショップ」です。

「中医薬膳師×薬膳素材専門士×ペットフーディスト」の資格を有する薬剤師が、体調不良、ダイエットやアトピーなどの悩みにも親身に対応します。

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著者プロフィール

河邊甲介 (薬剤師)

KOSUKE KAWABE

▷有資格

  • 薬剤師
  • 中医薬膳師:本草薬膳学院(学長:辰巳洋)にて資格取得
  • 薬膳素材専門士:本草薬膳学院(学長:辰巳洋)にて資格取得
  • ペットフーディスト

▷経歴

  • 福岡大学薬学部卒
  • 総合病院薬剤部・調剤薬局にて勤務
  • 2024年1月より宮崎県川南町(峠の里)にて漢方×薬膳×腸活のお店「ほどよい堂」を開局

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薬剤師であり、漢方×薬膳×腸活の専門家として、「ほどよい堂」を運営しています。
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